21世紀も四半世紀が過ぎ去ったというのにも関わらず、アイピースのキャップには進化が見られません。私が子供の頃から進歩していません。だからといって、現代のよく見かけるアイピースキャップが「完全体」なのかというとそうも思えないところがポイントです。
今回は、これまで「無料の付属品」という観点でしか設計されてこなかったアイピースキャップに喝を入れてみようという企画です。3Dプリンタでの造形材料費1個約60円*の高級品となりました。(*設備費や電力費、およびその他消耗品費は含んでいません)
なぜアイピースキャップに目を向けたのか?といえば、それはアイピースを付け換えるたびにモヤっとするからです。
モヤモヤのポイントは、キャップを嵌めているけど「そもそもこのキャップが汚れてるんじゃないか?」とか「キャップ自体結露してるのにそれを嵌めんのか?」とか「嵌めるのは撤収後でいいかな(でキャップを紛失)」といったことです。
私だけかもしれませんが。
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| 縦・横いずれの向きでも置けて転がらないキャップを作ってみました |
■ アイピースキャップの問題点
モヤモヤの元凶を辿ると、キャップが丸いという幾何学的問題に行き着きます。丸いせいで置き方に制約を生じ、次の問題が生じるのです。
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| 塵を呼び込む平置きのキャップ |
観察中はキャップをどこかに置いておく必要があります(ホコリっぽいポケット内は出来れば避けたい)。横に倒して置くと転がるのでキャップ底面を接地させて置くのですが、このように置くと、やがてキャップ内面に埃が溜まってキャップ自体が汚損するのです。おまけにキャップ内面が結露します。
逆に、キャップを伏せる形で置くこともできますが、必ずしもきれいではない机の塵がキャップのフチに付着する感じがあまり感心しません。この置き方を強要する「転がる形状」にモヤモヤするのです。
・アイピースが転がる。
アイピースを横に倒して置いておくことができません。転がってしまうからです。かといって立てて置くと不安定で転倒しやすく、できれば避けたい置き方です。しかも眼レンズが天頂を向いている縦置きは結露しやすくなり、しかもそこに塵が積もります。最悪です。これのせいで、アイピース交換のたびにアイピースをケースに戻す必要が生じます。
アイピース本体が略円筒形なのは鏡胴を旋削で製造するからで、これは仕方ありません。しかし、キャップまで円筒形である必然性は全くありません。樹脂製品が今ほど安価ではなかった時代ならば材料使用量削減という意味があったと思いますが、この現代において上記の罪状を考えると丸くしておくことの正義はないと私は思っています。
もっとも、アイピースキャップには真面目に改良が加えられた形跡が殆ど見られません。子供の頃に見たやつから、何一つ変わってないのがほとんどです。「キャップは丸くあらねばならない」というドグマでもあるのでしょうか。安物キャップも、四角くするとか、張り出したリブを付けるとか、転がらなくする何かを付けてもバチは当たらないと思います。
ちなみに、丸いということの他にもキャップには問題点があります。
・キャップ内の塵が視野レンズに吹き付けられる
キャップには、穴があったりスリーブに隙間ができるようになっていたりで、着脱時の空気通路が用意されています。しかし、この時の空気流でキャップ底に溜まった塵が巻き上げられ、特に底面に穴が開いてる奴は外すときのジェットで視野レンズに直接塵を吹き付ける働きがあって罪深いです。バレル周囲から導入するタイプも、導入された空気は中央に向かって加速して視野レンズに向かわせるので、ちょっとイマイチです。
オマケに、キャップのスリーブ底とアイピースのバレル端面がほぼ一致していて視野レンズに近く、この塵に対して一顧だにされていません。
要するに、塵から守るはずのキャップは、アイピース使用中に塵を降り積もらせて結露させ、次の使用時に視野レンズに吹き付ける悪事を働いているわけです。
このあたりの塵の挙動が頭に浮かぶと、どうにもモヤモヤしてしまうわけです。
■新型アイピースキャップ
そういうわけで、改めてアイピースキャップのあるべき姿を描き、3Dプリンタ(*)で造形してみました。特徴は下記4点です。
①平面のあるカマボコ形状
②バレル端面より奥まったキャップ底面
③塵埃トラップ型空気通路
④弾性変形把持
それぞれについて、工夫の観点と特長を語ってみたいと思います。
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| 底面に設けたベタ置きを避ける突起 |
これは、前段で長々と述べた「丸い」「転がる」形状をやめたということです。このキャップを付けたアイピースを横置きしても転がりません。また、置いた時の接地は面ではなく突起による点で支える構造のため、どこにおいても汚れの付着が最小限で済みます。 キャップ単体でも横置きできますから、塵が底面に積もりません。また、天空に底面が晒されないので放射冷却を防ぎ、したがってキャップ内面は結露しにくい状態を保ちます。
また、横置き時の向きを固定させることで、内部の「塵埃トラップ」に埃が行くように仕向けられています。
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| キャップの底の内部構造 (奥まった底と塵トラップ) |
それでも塵がある可能性のあるバレル端面は視野レンズから離してあります。こうすることで、キャップを外すときにどうしても生じてしまう空気ジェットの流速を下げ、舞った塵が高速になるのを防ぎます。バレルと直接触れる部分も最小限に抑えてあり、そしてなるべく塵埃が溜まらないように、横置きした時にバレルよりも外側の袋小路に塵が集まるように形状を工夫しています。アイピースの向きが逆さを向いても、塵はレンズ面に向かいません。
・(3)塵埃トラップ型空気通路
バレル端面にトラップした塵が溜まる位置に空気通路を設けているため、装着時に真っ先に排出される設計です。逆に、アイピースを抜き取る時には通気孔から吸い込みジェットを生じてしまうのですが、このジェットは一旦対抗面のくぼみに当たるようになっていて、レンズに直接は向かいません。
キャップ内部に残留した塵を巻き上げてしまうのはやむを得ないにしても、直撃は避ける設計です。
・(4)弾性変形把持
固めのプラスチックで作るとやがてヘタってスカスカになってしまうことも考えられるので、可撓性の把持部を設けています。一体成型の可動部分が撓んでアイピースを把持します。
(アイピースのバレル径はメーカーによってけっこう違いがあり、キャップを使いまわしていると別のアイピースでスカスカになってしまっていたりするものです)
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| 円筒全周ではなく突起でアイピースを把持します (把持突起がたわんで支えるように、通気通路とセットで作り込みました) |
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| 造形失敗例 |
(世の中のキャップも、少なくとも回転止めは欲しいなあ。)
※造形にはけっこう苦労しました。特に、内部のオーバーハングがすぐにモジャるので、発生しないように対策して造形してます。






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