PHD2でガイドを始めるまで

ようやく、近代的なガイドカメラを導入して、PHD2なるソフトを初めて操ってみました。ここでは、初心を忘れないうちに「何を準備してどうやればよいか」「気になってた疑問と実際」というエキスパートには無い初々しい視点で備忘録を綴ってみたいと思います。
(※有用で新しい情報はここにはありません)

PHD2のお試しで撮影してみたM1
ガイドはうまくいっているようです
正直なところ、「ASCOMって何だよ?」とか「赤道儀本体側の設定はどうなるの?」とか、モヤっとしていた部分がありましたので、それらについても初心者視点で書き記してみました。

なお、PHD2 guiding の詳細な使用方法は本家サイトに純正マニュアルがありますし、HIROPON氏による使用方法解説日本語化マニュアルが大変参考になります。
おかげで何のトラブルもなく撮影に漕ぎつけることが出来ました。

※下記は、2019.11時点、PHD2.6.6を使った際のものです。

■ 準備するもの
一般的なガイドカメラとPHD2を使ってガイドを始めよう、ということで準備したのは下記のものです。(※実際には下記以外にも様々な構成例が考えられます)

・ガイドカメラ/オートガイダー
 一般的なガイドカメラには、USBコネクタとモジュラージャックがついていて、「USBでPCと」、「モジュラージャックで赤道儀と」つなぎます。カメラについては前回の記事をご参照ください(私は ZWO ASI120MM miniをチョイスしています)。
・PC
 自動ガイドには大したパワーは要らないようです。私は3万円ほどの中古ノートPC(Core i5-4300/8G)を用意しました。どのくらいプアなPCでも動作可能か?というところも興味がありますが、未確認です。暇があったら試してみたいと思います。
(CPUが速い必要はないように思いますが、メモリは不足すると駄目なような気はします。)
・赤道儀
 オートガイド端子のついている赤道儀が必要ですね。

■ ソフトのインストール
どうやら、次のソフトをインストールしてやる必要があるようです(Windows PCの場合)。今どきは、全てネットからダウンロードするのが最新で良いと思います。

・カメラのデバイスドライバ
 PCのUSBポートに繋がったカメラを認識させるためのデバイスドライバです。
 (ZWOのカメラドライバ / QHYCCDのカメラドライバ

・ASCOMプラットフォーム
 ASCOMとは「天体関係の機器を操作するための標準規格」とのことですが、ユーザーから見ると「"ASCOMプラットフォーム"と称するドライバソフトウェア」のようです。PHD2などのソフトは、このプラットフォームを介してカメラに繋がった赤道儀を操作します。(ASCOMプラットフォームのサイト

・カメラのASCOM用ドライバ
 ASCOMプラットフォームに、カメラなどの機器を操作するためのドライバをインストールする必要があります。このドライバは、カメラメーカーから提供されています。
 (ZWO / QHYCCD)

・赤道儀のASCOM用ドライバ
 操作する赤道儀についても、ASCOM用のドライバが要るようです。
 このドライバも、赤道儀メーカーなどから提供されています。
 (架台用ASCOMドライバ各種 / Vixen用はこちら

・ガイドソフト「PHD2 guiding」
 オートガイドソフトのご本尊です。本家サイトからダウンロードしてインストールします。サイトには使用環境についての記述がないのですが、Windows XP/7/8/10 で動作するようです(未確認)。

■ PHD2 guidngの実際
 詳しい使い方やセットアップは各種の詳しいサイトをご覧になるのが良いと思います(手抜きでゴメンナサイ)。
 ここでは今更な解説ですが、ザクっとした手順だけ備忘録として残しておきたいと思います。以下の手順で、PHD2は(たぶん)正しく動いてくれました。

(1)起動&ガイド環境設定
 最初に起動すると、Wizardが立ち上がって接続しているカメラや赤道儀を設定することになります。2回目以降は設定の必要はありません。
 私の環境では、
  - カメラは「ZWO ASI Camera」
  - 赤道儀は「On-camera」(カメラの端子を使うので)
  - AUXは「Generic Hub(ASCOM)」
 を選択しました(カメラ、赤道儀、つなぎ方の組み合わせで変わってきます)。
 本来であればAUXのところは「Celestron」で行けそうなのですが、私の Advanced GT では「セレストロンの望遠鏡が繋がってない」旨のメッセージが表示されて先へ行けず、Generic Hubの選択で動作しました。
言わずと知れた PHD2の画面
(画面は機器との接続画面)

(2)ピント合わせ
 PHD2のソフトの画面で、画像のキャプチャをリアルタイムで見ることが出来ます。これを見ながらピント合わせをします。ガイド鏡のピント合わせはやや面倒ではあります。もちろん、一度合わせたらクランプを良く締めて、基本的にはいじりません。
 私は、ガイド鏡にアイピースを挿して星を導入し、これでおおまかにピントを合わせた上で、ガイドカメラに挿し替える方法でピントを合わせています。昼間の風景を使う方法も良いのですが、1km以下の近景ではけっこうピント位置が違ったりするので、注意が要ります。
 アイピースやカメラの挿し加減(挿し込み深さ)を昼間のうちに確かめておくのがミソかとは思っています。アイピースで導入した後のカメラでのピント位置が大体分かっていると、とても楽です。
 この挿し加減の確認は、アイピースの絞り環の位置と、カメラのセンサー面の位置が大体同じになるような挿し加減(位置)を目分量で見ておくことで、実際の場面でそういう挿し方を再現すれば導入した星が画面で見えないようなことにはなりません。
 ちなみに、星をガイドカメラで見ているときの露光時間は、6cm F4のガイド鏡とASI120MM miniの組み合わせでは 1sくらいがいい感じでした。ピント合わせは、明るい恒星を導入してもっと短い(0.5s以下)露光時間のほうがやり易いかもしれません。

(3)ガイド開始の手順
 基本的には、ソフトの操作としては「機器のコネクト」→「キャプチャループ」→「ガイド開始」という手順でガイドが開始できます。キャリブレーションデータが無い場合には、勝手にキャリブレーションを開始してくれます。
 極軸が著しく狂っていたりすると、キャリブレーション時にWarningを出してくれます。

※赤道儀側の設定はどう反映されるか
 赤道儀側にも「オートガイドレート」「バックラッシュ」などの設定値があります。PHD2は単純にガイドパルスを発信するだけのようなので、赤道儀は赤道儀側に設定されているレートや設定値に基づいて動作をします。PHD2自体は、これらの値もコミコミでキャリブレーションをやっているように見えました。
 赤道儀側の設定が不適切だと、PHD2がキャリブレーション時に「思ったほど動かないゾ」とか「バックラッシュが大きいんじゃ?」みたいなことを伝えてきますので、適切に設定しておくのがよさそうです。

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…と、そういうわけで、ASI120MM mini + PHD2の組み合わせは、当初思っていたいくつかの疑問を解消しながら、トラブルもなくとりあえずの動作はしてくれたのでした。
 とりあえず、大体どこを向けてもガイド星は見つかる感じで、面倒なガイド星導入作業はなくなりました。また、ガイド中の様子もモニターできるのも大変グッドで、ガイドの安心感は向上しました。

 次の課題は、カメラとの連携を必要とするディザリングの自動化だなあと思っております。果たしてそちらはどうなることやら・・?

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コメント

Lambda さんの投稿…
申し訳ありません!!!
どなたかコメントを頂いていたようなのですが、管理画面を電車の中から操作していたら、誤って削除ボタンに触れてしまったようで、拝読する前に消えてしまいました。

折角のコメントを頂いたにも関わらず、こちらの不手際で決してまい、大半申し訳ありませんでした。

決して意図的に削除したわけではありませんことを申し添えておきます。
星のGG さんの投稿…
コメントしたの私です。
実は、私のAV-X赤道儀のオートガイドが不調だったのですが、Lambdaさんのこの記事を読んで、
Celestron赤道儀用のASCOMドライバをインストールしてないのに気が付きました。
On-Cameraにしてましたね。オートガイドのテストするため、明るい内に赤道儀を設置して待機してましたが夜になって曇ってしまって撤収。明日にかけます。
Lambda さんの投稿…
コメントありがとうございます!
(二度手間で書き込んでもらってしまって、すみませんでした)

なるほど、ASCOMドライバが必要、というのは確かに気付かないと忘れてしまいそうですね。
On-Cameraであれば、ドライバがなくても私のように AUX: Genericで行けるかもしれませんが、AVXならちゃんとドライバで動いてくれそうですね。

曇りは残念ですが、ご武運を祈ります!
M87JET さんの投稿…
フィラメントが明細で、素晴らしく美しいM1だと思います。
Lambdaさんのクリエイティブかつ深い見識のある投稿を期待しております。
小生、いろいろ試行錯誤していますが、5分間くらいすると、赤緯方向へのずれが徐々に累積して、無視できなくなってしまうのです。
Lambda さんの投稿…
M87JETさん、コメントありがとうございます!
このM1をお褒めいただけるとは思ってませんでしたが、昔ゼンゼン写せなかった姿をようやく撮れるようになりました。しかし1250mmをAZ-GTiで追いかける方が荒行ですね!

さて、赤緯の問題ですが、拝見したところちょっと謎な動きですね。
赤緯の修正が一方向なのは極軸かとは思いますが、ガイドパルスが一方向にしか出てないのに無反応になってるのは謎です。
バックラッシュかとも思いましたが、少し違うように見えました。
ニュートン反射ではないので、赤緯のバランス崩しを試してみるのも手かもしれません。バランスを崩す方向によって、どちらかは歯車の具合が良好な方で当てられるという可能性もあります。
(やはりあのバネ押し付け機構で押し付けられすぎてる可能性もありそうです)
M87JET さんのコメント…
ご示唆ありがとうございます。
バネ押しつけ機構とか、バランス崩しとか、グリースの変更とか、締め付け強さ緩めるとか、星のある夜に少しづつ試して行きたいと思います。
今後もよろしくお願いいたします。
Lambda さんの投稿…
M87JETさん,こちらこそ、今後ともよろしくお願いします!
(ブログの方も、いつも大変興味深く拝見しております。)