オートガイダーを比較検討す (2019)

ZWO ASI120MM miniカメラ
(オートガイダー)
これまで10ヶ月ほど使用してきたNexGuideですが、色々思うところがあって移行することにしました。
 もともと、スタンドアローンのエコノミーなオートガイダーとして中古のセレストロンNexGuide(New)を入手して使っていた訳ですが、色々な情報に触れるにつけ、モノグサな私には更にお気楽な奴が向いてるんじゃないか、と思えてきた訳であります。

結論から申しますと、ZWOの赤いヤツ、ASI120MM miniをチョイスしました。PHD2と組み合わせてこれを使おうという算段です。エキスパートの方々には既に興味のないところかと思いますが、せっかくなので競合になりそうなオートガイダーのスペック比較をしてみたのであります。

■ NexGuideの良いとこ/悪いとこ
スタンドアローンのオートガイダーとしてのNexGuide(New)はなかなか良くできています。これをAdvanced GTマウントと組み合わせて使って、1000mmの焦点距離をガイド出来ていた訳で、大変実用的と言えます。そういう意味で、どうしてもこれを捨て去らねばならぬというほどの問題は起きていません。中古で購入した本品のコスパは十分でした(購入時2.6万円でした)。

美点としては以下のような事が挙げられます。
 ・パソコン不要のオールインワン
  (複雑な配線が不要)
 ・小さい消費電力
 ・暗闇向けなやさしい液晶
 ・簡単設定でスタートできるガイディング
 ・十分実用になるガイド精度
というわけで、まさに私のような初心者にはうってつけのオートガイダーだった訳です。

では、ネガティブな要素はどのような点にあったかと申しますと、次の4点です。
 ・センサー一体のモニタ
 (なかなか無理なヨガ的姿勢を要求されることがあります。)
 ・やや感度の足りないセンサー
 (6cm F4のガイド鏡では、ガイド星をアイピースで導入してやる必要があって面倒です。もう少し小さいガイド鏡であれば楽だと思います。)
 ・無視できない夏場のノイズ
 (不足気味の感度とSN比と相まって、夏はガイド星の選定がますます面倒でした。)
 ・ディザリング非対応
 (これまで「手動ディザリング」で対応してきた私でしたが、かかる手間がだんだん面倒になってきて、より安楽なガイダーに乗り換えたくなったというわけです。)

いずれも慣れに伴って面倒に感じることが、ガイドシステムを再考する要因となりました。

■ 次のガイドカメラの候補生たち
 そういうわけで、次のオートガイダーの候補生探しと相成ったわけです。ネット情報も探るわけですが、やはり現物を見ないとイメージがわかないというわけで、某ショップへ出向いてみたのでした。

6極6芯モジュラーを赤道儀に、
USB(typec)をPCに繋げます
いわゆるST-4互換というガイドカメラは、カメラ本体と赤道儀を直接接続できるので、PCさえあればカメラを買うだけというコスパが素晴らしいです。一方で、スタンドアローンタイプはPCが不要なお気楽や電源の心配が要らないという良さがあります。

 候補生たちは彼らです。(下記の価格は2019年11月時点のものです。)

・Touptek GCMOS 01200KMA/KMB
 ToupCamは安価なオートガイダーとは聞いていたので興味はあったのですが、残念ながらお目にかかることは出来ませんでした。
 似た型番のガイダーでセンサー違いが存在し、型番の末尾が"KMA"のものには SONY の IMX290が、"KMB"にはZWOの ASI120MM miniと同じAR130CSが用いられているようです。KMAの方は ASI290と同じセンサーだと思うと、2.2万円という価格はかなり安いと言えます。

・QHY5-IIM
 言わずと知れたQHY社のオートガイダーで、2019年現在の価格は2.1万円ほどです。QHY社のオートガイダーは実績がある、というのがウリになっているようです。

・QHY5L-IIM
 前出のものと大変似た型番ですが、"L"が違いです。センサーが違うというのがポイントで、天文雑誌などを眺めると大変実績のあるオートガイダーだということが分かります。価格は2.6万円ほど。センサーはAPTINA(*)製MT9M034です。(なぜか販売店サイトにはMTQMO34と記載がありますが、誤記と思われます)

・ZWO ASI120MM mini
 形はQHYのものと大変似ている赤いヤツです。なんと1.8万円と大変低価格になっています。店員さんのご説明ではQHYのものとはセンサーが違うとのことでした。また、ASIAIRを使うことになった場合に、相性がよさそうだというのもポイントの一つです。

・MGENオートガイダー
 こちらはPCなしで使えるスタンドアロンガイダーということで、価格は約7万円とやや高価です。使い勝手は NexGuideに大変似ているのですが、ディザリングにも対応していますし、モニターはカメラではなくコントローラについている合理的な設計で使い易そうです。搭載されるCCDセンサーICX279AL-Eの感度も申し分ないとのことで、ガイド星がみつからないことはまず無いとのことでした。

*APITNA社は現在、OnSemiconductor社に経営統合されています。

■ センサーを比較する
ASI120MM に用いられている
AR130CS センサー
こうなってくると、価格、使い勝手、実績といったところが選択のポイントになるわけですが、もう一つ、「使われているセンサー」にも注目してみたいところです。
 そこで、比較表を作成してみました。
 それぞれ皆違うセンサーが使われているのですが、チップサイズ/画素サイズもそれぞれ違っていて、画角や感度にも差がありそうです。感度については量子効率も大事なのですが、結局はノイズとの兼ね合いでSN比が重要な話ですので、カタログスペックだけではなかなか見極めがつきません(NexGuideのセンサーは量子効率が高く画素面積も大きい筈ですが、ノイズが悪さをしていました)。
 表から「どれがいい」ということを示すのは容易ではないのですが、実績のあるQHY5L-IIMとASI120MMが非常に似たスペックだということが良く分かります。ちなみに、量子効率自体はASI120MMに使われているAR130CSの方が優れているというカタログスペックとなっています。
オートガイダー/ガイドカメラのセンサー比較 (2019)
■ 結論
 冒頭で申しましたように、結局ZWOのASI120MM miniをチョイスしました。理由は、下記のとおりです。
 (1) 安い。
 (2) 実績あるQHY5L-IIMより量子効率が高い、ほぼ同スペックのセンサを採用
 (3) 将来的にASIAIRを使おうと思った時に相性がよさそう

 本来であれば、できれば人柱なんかになるのは避けたい私としては、実績あるQHY5L-IIMをチョイスするのが手堅いやり方なんだと思います。
 ですが、ASI120MM miniもそれなりに定評/実績あるメーカーの物でもありますし、ネット情報が必ずしも多くない機種を使ってみるのも楽しいものです(このカメラの情報は皆無ではありませんが)。
 また、価格や性能・機能を考えると、いきなりこの手のガイドカメラでも良かったなあ、とも思ったのでありました(PCへの処々インストールなどが要る面倒さはありますが、そこはまた別途紹介して参りたいと思います)。

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コメント

タカsi さんのコメント…
こんばんは!
ガイドカメラの比較記事、興味深く拝見しました^^
人柱的に?QHY5L-IIMとASI120MM miniを同時に使用していますが、チップサイズが同じなので、設定が楽なのがいいです。
カメラの感度に関しては、QHYの方が良いように思いますが、設定を追い込んでいくと、両者とも同じような結果になるのかもしれません。
ASIのコストパフォーマンスは高いので、レンズ(ガイド鏡)を少し良いものを組み合わせたいところです。KowaのレンズとZWOのレンズを比較すると、圧倒的にKowaの抜けがよく、星像も文句なしでした。
ASIAIRとの相性はばっちりですよね♪
Lambda さんの投稿…
タカsiさん、いつもコメントありがとうございます。
(今さら感のある記事ながら・・・)

QHY5L-IIMとASI 120MM mini、すでに双方試しておられましたか。
QHYのカメラは「感度的にも定評ある」、とはショップで伺っておりました。
素子のカタログ上の量子効率だけでは必ずしも優劣が決まるわけでもないようですから、やはり現物を比べてみる必要があるというところですね。

ガイド鏡も、レンズは大切ですね。ガイド星のピント合わせの出来不出来も含めて、シャープな像を結ぶレンズであれば、暗いガイド星も見つかりやすいと思います。

ASIAIR…、だいぶ惹かれてます!