さすがに1年もニュートン反射を使い続けると、鏡のヨゴレが気になるところです。どうしても主鏡には埃が積もってしまいますし、外気に曝されていると油分も付着してきてしまうようです。反射望遠鏡には主鏡の清掃をはじめとしたメンテナンスが必要です。
このところ20cm反射望遠鏡でシリウスの伴星などを観察していましたが、焦点内外像に見えるホコリの回折像が気になるようになってきたり、ロンキー像で見えた固定ツメによる僅かな圧迫などが気になってしまい、今年の火星シーズンに向けて主鏡まわりの洗浄と調整をしなければと思っていたところでした。
更にロンキー像の観察から、手持ちのSE200Nの見え味を一段階UPしてパーフェクト化する方法も思いついてしまったのですが、こちらは気が向いたら手を入れてみたいと思います。
ここでは、SE200N鏡筒の主鏡洗浄の様子を紹介してみたいと思います。
※主鏡の洗浄方法はこの方法が本当にベストかどうかは分かりません。あくまでも下記は個人的な体験記です。自分で洗うことを推奨するものではなく、また実施した結果を保証するものでもありません。
※※洗剤やアルコールがメッキに及ぼす影響を沖田博文氏が実験で調べた結果に基づき、記事を修正しました。まだ実験は継続中ですので続報や結論が待たれるところではありますが、主鏡洗浄の条件においてはアルコールそのものは無害であることが分かりました。
実験結果では、純水や洗剤はそれぞれ影響があるものの、24時間以内の浸漬では影響は僅少(純水ですと10分浸漬で反射率0.01%以下程度の影響)とみられます。(2020.2.18)
■ 主鏡洗浄の全体の流れ
大変大雑把ではありますが、私が小学生の頃に編み出した方法にアレンジを加えたものは次のようなものです。
・主鏡を鏡筒からセルごと外す。
・セルごと洗浄。
・乾燥。
・鏡筒にもどして光軸調整。
主鏡は手で持つところもなく、これを濡らして運ぶのは心もとないですから、私はセルごと洗うようにしています。SE200N の場合はシースルー構造ですので、セルごと洗っても問題はなさそうです。
ちなみにシースルーでない150SLもこの方法でセルごと洗浄してきましたが、35年を経た今もなお健在です(再メッキしたこともありません)。
ちなみに、私は次のようなものを準備して洗浄に取り掛かっています。
・ブロア : 最初にホコリを飛ばすのに使ってます。
・中性洗剤 : なるべく中性のものを選ぶのが無難です(※)。
・精製水 : 最後の仕上げです。洗瓶も同時に用意しておくと便利です。
私は、アルミメッキにはアルコールは使いません。アルコールは、エタノール/メタノールのいずれもアルミとの相性が悪く、条件によっては著しく腐食させる場合があるからです(少し使ったからと言ってすぐに致命傷になるわけではありませんが)。
■ セルを外す
鏡筒を架台から外し、横に置きます。主鏡がセルごと落下して破損すると悲しいので、必ず床で作業するようにしています。
SE200Nの場合は、鏡筒側面についている6つのビスを外してセルごと主鏡を外すようになっています。
ここで私は、外す前に鏡筒との位置関係を記録しておくようにしています。意外とこういう部分のネジは精度が悪かったりで、同じ位置関係でないとうまくはまってくれなかったりすることもあります。また、同じ位置に戻すと、光軸もほぼ元通りになります。
また、セルを外す前に必ず鏡筒バンドを緩めておくことが肝要です。安い鏡筒は薄肉ですので、セルが外れた途端に鏡筒バンドの締付け力で変形してしまい、セルが嵌らなくなることがあるからです。(※2022.5.2追記)
■ 洗浄工程の実際
セルごと洗面所に移動しますが、水をかける前にブロアで大きなホコリを飛ばしておきます(エアダスターがあればその方がいいです)。鏡のアルミメッキは柔らかいので、なるべく傷つく可能性を減らしておくのが吉です。
ブロアではあまり汚れが落ちる感じがしないので、水をかけることになります。最初はあまり強くない水流で流し、続いてシャワーで徐々に水流を強くしながら表面の大きめの物体を洗い流します。(私はぬるま湯でやってます)
続いて、洗剤を投下(※)します。鏡の表面の油分を溶かし、油分で固定されているチリを剥がすためです。洗剤は手指でのばしますが、この段階では鏡に指が触れないようにしています。なるべく、表面を傷つける原因になるようなチリは水流で洗い流します。
洗剤をつけて1~2分経ったら少し強めの水流で洗い流し、徐々にお湯の温度を上げます。せっけんでは溶けない成分も、温度が上がると流動し易くなるからです。汚れの状況次第で、洗剤を再びつけて洗い流すことをします。
※今回は泡せっけんを使いましたが、メッキへのダメージを考えると中性洗剤を用いるのが理想的です。アルミは相手が酸性でもアルカリ性でも腐食してしまう性質があるからです。短時間では影響が出ることはありませんが、せっけんで漬け置きなどはしない方が無難です。
鏡が温まってきたところで再び洗剤を鏡面につけ、いよいよ手指でこすっていきます。こすると言っても、私は「撫でる」くらいにしています。せっけんで優しく鏡面をなでながら洗剤をのばしていきます。
十分に洗えたと思ったところで、指で撫でつつお湯で鏡面を流してすすぎます。十分に洗剤を洗い流したところで水切りをすると、残留している汚れのところの水膜がはじかれてよく分かるようになりますから、もう一度洗剤と手指洗いで汚れを落とします。
このすすぎにお湯を使うのは、乾燥が早くなるからです。流しながら徐々に温度を上げて、私は最終的には40℃くらいで流しています。
よく洗えていると、水が切れたときに水の薄膜が一様に張った状態になります。この状態になったら、洗瓶で精製水(蒸留水)を鏡面にかけて水道水に含まれる不純物を洗い流します。精製水をかけて1分程度待った後に流し去る、ということを2回くらい繰り返すということを私はやっています。
水道水の不純物は、乾いた時に白い跡を残す原因になったりしますし、塩素は腐食作用が強い元素ですので、なるべく取り除いておくのが無難です。
※純水も、それ自体が鏡面をアタックする要素があるようです。このため、長時間の漬けおきは避ける必要があります。SiO2コーティングなしの反射鏡でも24時間浸漬で1%程度の反射率低下ですが、表面の不動態被膜が破られてしまうと腐食が大きく進展するようです。
■ 乾燥と組付け
精製水で流した後は、鏡を縦にして水をよく切ります。お湯で鏡が温まっていると、薄い水膜しかない鏡面は比較的短時間で乾いてくれます。しばらく陰干しにしておけば良いと思いますし、あるいはドライヤーで乾かしても良いと思います。
問題は一緒に水洗いしている主鏡セルで、隙間やネジ穴などに水が入り込んでいますので、これらをティッシュペーパーで吸い取っておきます。特に主鏡の固定ツメや、鏡筒との取り付けネジの穴などは確実に対処するように気を付けています(錆が出たりすると悲しいので)。
また、鏡筒との取り付けネジはスチールでしたので、防錆油を多少塗っておきました。
乾かしがてら、今回は主鏡の固定ツメのテンションも調整しました。SE200Nの出荷時の固定はやや強固すぎるようでしたので、ネジを一旦緩めて、ツメ(ゴム)が主鏡に触れるくらいのテンションに設定しなおしました。
このようにして暫く乾かしたら、鏡筒に組み付けて光軸調整をして、主鏡の洗浄は完了です。また鋭い像を結んでくれることに期待したいと思います。
主鏡にだいぶホコリが… |
更にロンキー像の観察から、手持ちのSE200Nの見え味を一段階UPしてパーフェクト化する方法も思いついてしまったのですが、こちらは気が向いたら手を入れてみたいと思います。
ここでは、SE200N鏡筒の主鏡洗浄の様子を紹介してみたいと思います。
※主鏡の洗浄方法はこの方法が本当にベストかどうかは分かりません。あくまでも下記は個人的な体験記です。自分で洗うことを推奨するものではなく、また実施した結果を保証するものでもありません。
※※洗剤やアルコールがメッキに及ぼす影響を沖田博文氏が実験で調べた結果に基づき、記事を修正しました。まだ実験は継続中ですので続報や結論が待たれるところではありますが、主鏡洗浄の条件においてはアルコールそのものは無害であることが分かりました。
実験結果では、純水や洗剤はそれぞれ影響があるものの、24時間以内の浸漬では影響は僅少(純水ですと10分浸漬で反射率0.01%以下程度の影響)とみられます。(2020.2.18)
■ 主鏡洗浄の全体の流れ
大変大雑把ではありますが、私が小学生の頃に編み出した方法にアレンジを加えたものは次のようなものです。
・主鏡を鏡筒からセルごと外す。
・セルごと洗浄。
・乾燥。
・鏡筒にもどして光軸調整。
主鏡は手で持つところもなく、これを濡らして運ぶのは心もとないですから、私はセルごと洗うようにしています。SE200N の場合はシースルー構造ですので、セルごと洗っても問題はなさそうです。
ちなみにシースルーでない150SLもこの方法でセルごと洗浄してきましたが、35年を経た今もなお健在です(再メッキしたこともありません)。
ちなみに、私は次のようなものを準備して洗浄に取り掛かっています。
・ブロア : 最初にホコリを飛ばすのに使ってます。
・中性洗剤 : なるべく中性のものを選ぶのが無難です(※)。
・精製水 : 最後の仕上げです。洗瓶も同時に用意しておくと便利です。
■ セルを外す
取り付け位置をマークしておきます (組立&光軸調整が楽です) |
SE200Nの場合は、鏡筒側面についている6つのビスを外してセルごと主鏡を外すようになっています。
ここで私は、外す前に鏡筒との位置関係を記録しておくようにしています。意外とこういう部分のネジは精度が悪かったりで、同じ位置関係でないとうまくはまってくれなかったりすることもあります。また、同じ位置に戻すと、光軸もほぼ元通りになります。
また、セルを外す前に必ず鏡筒バンドを緩めておくことが肝要です。安い鏡筒は薄肉ですので、セルが外れた途端に鏡筒バンドの締付け力で変形してしまい、セルが嵌らなくなることがあるからです。(※2022.5.2追記)
■ 洗浄工程の実際
セルごと洗面所に移動しますが、水をかける前にブロアで大きなホコリを飛ばしておきます(エアダスターがあればその方がいいです)。鏡のアルミメッキは柔らかいので、なるべく傷つく可能性を減らしておくのが吉です。
ブロアではあまり汚れが落ちる感じがしないので、水をかけることになります。最初はあまり強くない水流で流し、続いてシャワーで徐々に水流を強くしながら表面の大きめの物体を洗い流します。(私はぬるま湯でやってます)
洗浄中の主鏡 (泡せっけんをつけたところ) |
洗剤をつけて1~2分経ったら少し強めの水流で洗い流し、徐々にお湯の温度を上げます。せっけんでは溶けない成分も、温度が上がると流動し易くなるからです。汚れの状況次第で、洗剤を再びつけて洗い流すことをします。
※今回は泡せっけんを使いましたが、メッキへのダメージを考えると中性洗剤を用いるのが理想的です。アルミは相手が酸性でもアルカリ性でも腐食してしまう性質があるからです。短時間では影響が出ることはありませんが、せっけんで漬け置きなどはしない方が無難です。
鏡が温まってきたところで再び洗剤を鏡面につけ、いよいよ手指でこすっていきます。こすると言っても、私は「撫でる」くらいにしています。せっけんで優しく鏡面をなでながら洗剤をのばしていきます。
十分に洗えたと思ったところで、指で撫でつつお湯で鏡面を流してすすぎます。十分に洗剤を洗い流したところで水切りをすると、残留している汚れのところの水膜がはじかれてよく分かるようになりますから、もう一度洗剤と手指洗いで汚れを落とします。
最後に精製水をかけて 塩素や不純物を取り除きます |
よく洗えていると、水が切れたときに水の薄膜が一様に張った状態になります。この状態になったら、洗瓶で精製水(蒸留水)を鏡面にかけて水道水に含まれる不純物を洗い流します。精製水をかけて1分程度待った後に流し去る、ということを2回くらい繰り返すということを私はやっています。
水道水の不純物は、乾いた時に白い跡を残す原因になったりしますし、塩素は腐食作用が強い元素ですので、なるべく取り除いておくのが無難です。
※純水も、それ自体が鏡面をアタックする要素があるようです。このため、長時間の漬けおきは避ける必要があります。SiO2コーティングなしの反射鏡でも24時間浸漬で1%程度の反射率低下ですが、表面の不動態被膜が破られてしまうと腐食が大きく進展するようです。
■ 乾燥と組付け
洗浄・水切り後 水の膜が一様に張っています |
問題は一緒に水洗いしている主鏡セルで、隙間やネジ穴などに水が入り込んでいますので、これらをティッシュペーパーで吸い取っておきます。特に主鏡の固定ツメや、鏡筒との取り付けネジの穴などは確実に対処するように気を付けています(錆が出たりすると悲しいので)。
また、鏡筒との取り付けネジはスチールでしたので、防錆油を多少塗っておきました。
(参考)SE200Nの主鏡固定ツメ ゴム製のL字型部材を 金属プレートで押さえる構造です |
このようにして暫く乾かしたら、鏡筒に組み付けて光軸調整をして、主鏡の洗浄は完了です。また鋭い像を結んでくれることに期待したいと思います。
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