天文系中華メーカーのあれこれ

QHYだのZWOだのと謎のアルファベットが並ぶ天文界隈ですが、私が長らくこの世界から遠ざかっていた間に業界の勢力図はすっかり変わっていて、中華メーカーの台頭にびっくりです。実は私、つい半年前までSkyWatcher 社すらも知らなくて、当初はかつての雑誌が望遠鏡を売るようになったのかと誤解してました。

■ 中国の天文機材メーカー

今さら改めて言うことでもありませんが、今の天文業界では中国のメーカーの躍進著しく、多くの場面で最新鋭の高級機材は中国製になっている感すらなきにしも非ず、です。私の世代ですと、中国に対するイメージはすこぶる悪く、信頼できないものという印象すらありました。
 しかし冒頭のQHYZWOといったメーカーはもはや天体用CMOSカメラの大御所とも言える存在になっていて、日本や欧米にはこれに比肩する会社もないような状況です。

 ここでは、そうした会社の機材の良し悪し…はさておき、それが一体どこにあるどんな会社なのかAliExpressで見かけるたびにちょくちょく調べてはいたので、まとめて紹介してみたいと思います。
中国の天文関係メーカーの地理的分布


SkyWatcher 社 (総代理店, 製造元)

高コスパで合理的な品質を確保している機器が好感の持てるスカイウォッチャー社です。
 こちらは台湾の会社ですから、厳密には中国の会社ではありません。しかし、現在のビジネスは設計も製造も中国のみでやっていて台湾には既に実態がないようにも見えます(真偽不明)。
 この会社は、どうやら長らくセレストロンの下請けとしてやってきたのが、今は逆に親会社になっているようです。
 面白いのが社名「Synta(信達)」です。どうやらセレストロンはブランド名として漢字を当てたのが「星特朗」で、グーグルに発音させてみると「しんたーらん」なようで、社名はこのあたりから来てるのかなあと想像されます。また、中国では読み方が似ている漢字として「星(しん)」の字を当て、 SkyWatcherブランドの中国名を "星達(しんだー)" としているようです。
 中国での拠点は上海の近くの浙江省杭州で、どちらかというと南方の会社ですね。(州は日本で言うところの市くらいの大きさの街ぽいです)

(※初期の記事に誤りがあり、修正を入れています。もともと Skywatcher社は Synta(信達, Xingda, シンダー)社だったようですが、中国でのブランドは星達(Xingda, シンダー)となったようです。現在は、製造元が江蘇省の「南通シュミットセン(南通斯密特森)」で,販売はセレストロンやミードなども含めた総代理店(杭州天文科技)の子会社の「領東(杭州)科技」というところが星達ブランドを展開している模様です。)

QHY社とZWO

どちらもCMOSカメラの雄ですね。
 ZWO社は調べてみると中国の上海にほど近い「蘇州」という町の会社で、昔の呉の国があったあたりです。ZWOというアルファベットは、ZhenWang Optics なる会社名から来ていて、漢字では「振旺光電」なる会社名を名乗っているようです。
 QHY社は中国北方の雄で「光速視覚」なる会社名で、北京にあるようです。北京は、その昔「まず隗より始めよ」という古事のようなことがあって楽毅を得た燕の国が大いに幅を利かせたあたりです。QHYというアルファベットの由来ははっきりしませんが、会社の沿革を辿ってみると、どうやら中国の科学技術の最先端がある清華大学周辺の清華園(QingHuaYuan)にルーツありと言っているので、そのあたりに関係があるんじゃないかと想像されます。

■ その他中華メーカー

SvBONY
河南省鄭州の会社で、伊賽爾(イッセル?)なる貿易会社のようで、ラジオとかトランシーバーみたいな電子機器がメインぽくも見えます。中国内の製造メーカーのものにブランドを与え、販路を提供するというビジネススタイルのようです。
 今の鄭州というと、地図で見るとその昔の三国志の時代の曹操の初期の頃の地盤で、中国の中でもいわゆる「中原」に位置するところかと思います。

OPTOLONG
干渉フィルターで有名なOPTOLONG社は、雲南省の会社なようです。漢字名は「宇隆」になっていて、"LONG"はどうやら"隆"の字のアルファベット表記から来ているようです。
さて雲南省というと、かなり南方の内陸で、三国志では諸葛孔明と孟獲とで「七擒七放」が繰り広げられたあたりです。

SkyRover
この会社は裕衆光学なる会社名で、OPTOLONGと同様に雲南省の会社です。
日本ではソロモンとか賞月観星だとかのブランドで売られているものを製造している会社と見られ、かなり高性能系の屈折鏡筒などを取り扱っていて興味が湧きます。70mm/F5のペッツバールアストログラフとか150mm/120mmのED双眼鏡など、かなり本格的なのが多くてちょっと注目してます。
 面白いのがブランド名で、「天虎光学」を名乗っているのですが、英語ブランドがビクセンの向こうを張って(?)か「Tigress」となっています。「Vixen」は"女ギツネ"という意味ですが、「Tigress」は"あばずれ女"で、AliExpressの機械翻訳では「スカイローバーあばずれ女」などと表示されたりしていました。

KSON
かなり南方の広州の近くの佛山というところにある、開信光電という会社だったようです。アイピースメーカーとして海外OEM先に展開しているのかと思いきや、かなり独特な天体望遠鏡を作っているようで、微笑ましいです。

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こんな具合で、中国の中でもかなり広くに分布して、様々な業態で天文関係のメーカーが存在しているようです。まだまだ完全に信用するというところには達していない中国製品ですが、各社のサイトを眺めてみると、やはりメジャーどころからはグローバル品質な雰囲気が伝わってきたり、ローカルなところは微笑ましい限りだったりと、なかなか面白いです。

コメント

山口のじぃ さんの投稿…
大変興味深い記事、楽しく読ませて頂きました!
頭上の何たらブログではとんとお目にかかれない研究記事です!
はははっはははははっは!!
日中国交回復が私の学生時代初年のことでした!その頃先輩から
中国とゆぅ国は100年スパンで見ないと誤解するよ!と教えられた
のを今更ながらに思い出します!近視眼で面白おかしく報道する
日本メディアにはウンザリの今日この頃!(笑)
最後に書かれているメジャーとローカルの分析・表現にLambdaさん
の慧眼を見る思いで、ガス!
Lambda さんの投稿…
いつもコメントありがとうございます!
中国というと、人民服着て自転車で大勢が通勤してる国というイメージがありましたが、いや本当にご指摘のように「100年スパンで見ないと見誤る」んだなあ、と思います。

私はテレビ報道を見なくなって20年は経つ情弱なのでマスコミの声は私には届きませんが、いまは米国と貿易摩擦だとかで揉めていると伝え聞いております。
貿易戦争というのも、紀元前には中国の書籍にその要諦が記されているのですから、因果なものです。

個人的な感想では、中国というのはその揉めてる相手の米国と「激似」の国民性だなー、とか密かに思ってます。アバウトで大らかで合理的で新しい物と大きい物が好き、というわけで、米国と中国とからは何か新しい面白いものが出てくるんじゃないかと思って観察中です。

駄文にお付き合いいただきまして、感謝です!
タカsi さんの投稿…
こんばんは。
私の機材も気がつけば赤缶とかシンタ製の架台が増殖しつつあります。
日本のメーカーの特徴やアドバンテージを活かした製品が沢山出てくることを願うばかりです。
ビクセンやタカハシにもっと国際的なマーケットセンスがあると良いのですが。
Lambda さんの投稿…
こんばんは、タカsiさん、コメントありがとうございます!
私も、日本のメーカーには堅実で丁寧な作りといったところなどにアドバンテージがあるはずだと思ってます。
そしておっしゃる通り、国際的なセンス…これが欲しいですね。海外掲示板を見ると、タカハシの方がビクセンより入手しやすかったりするみたいではあります。
個人的には、本当は、最初にεが登場したときとか、最初にスカイセンサーが登場したときや、シュミット/ライトシュミットカメラが製品化された時のような野心的な何かがまた日本から出てきたら楽しいだろうなー、とか、思っております。