エエ加減なフラット補正を多少マジメに考える

天体写真の撮影では、フラット補正というのが常識になってるようです。で、その「フラット画像」らしきものを撮って補正にチャレンジしたのは、先週末に M81&82 を撮影した時でありました。この時の方法は、"鏡筒の先端にコンビニ袋をかぶせて街灯で照らされた画像を撮る"という、真面目に取り組んでおられる方々から張り倒されそうな暴挙でした。もちろん補正後の画像には背景の濃淡が生じてNGだったわけです。あたりまえですね。
ここはひとつ、平成が終わる前には考察を加えておきたいものです。

■ なぜそんな凶行に及んだか
 それは、「鏡筒の先端に何かを取り付けても、それは完全にピンボケしていて焦点面には何も像を結ばないはず」という浅はかな考えでありました。だって、斜鏡の影だって回折像にはなるけど、形としては影なんか映らないじゃないですか。だから、鏡筒の先端のどこから光が入ったって結局焦点面全体を照らすはずだよね、それが斜鏡とか接眼等でケラレる様子が見れりゃいいんだよね、という能天気な見通しだったわけです。

■ 撮影した時の条件で取るべき?
 もう一つ考えていたのは、バックノイズと同様にフラット画像も撮影時の条件に近づけて撮るべきなんじゃないか、ということです。世の中的には「フラット画像は、あくまでも光学系のケラレの状態を撮るものだから、一度取れば普遍的に使える」ということにになっています。
 しかし、自分が撮った周辺減光の画像を見る限り左右も対称じゃないし、写野を回転させたら状況は軽く変わってしまいそうです。考えてみれば、反射望遠鏡では斜鏡がカバーする写野範囲というものは光軸の調整のされ方にもカメラの取付けの向きにも依存しているわけで、フラット画像は毎回撮り直すしかないような気がするわけです。
 また、厳密には温度によるピント位置のズレの影響もケラレ方の違いとしてリング状に現れたりしそうなわけですし、接眼部のたわみによる変化も影響しそうではあります。特にFの小さい光学系ではその日の、できればその写野を狙っている光学系の状態でフラット画像を撮っておくのは大切なことのように思われます。

■ 結局、書道用半紙
考えた挙句の書道用半紙
で、毎回(手軽に)撮る、ということで思いついたのが、コンビニ袋作戦だったわけです。ですが、このコンビニ袋法は全くダメでした。後述しますが、明確にダメな理由があるのです。
 そこで改良したお手軽フラットフレーム撮影法は、拡散板として鏡筒の先に書道用半紙をセロハンテープで貼り付ける、というこれまたやはり舐めきった方法ですが、コンビニ袋の欠点を補ったつもりの方法です。我が家のような光害地では、光害カットフィルターを使ってもなお20秒ほどの露光でフラット画像は撮れました。
 ちなみにこの方法の効能は、コンビニ袋よりは遥かにマシだということが確認できました。薄曇が通過中の特に良くもない光害地のM42で恐縮ながら、初心者の私が扱っている範囲ではまずまずのフラット補正が出来ているようです。コンビニ袋を被せて撮ったM81で見えていた左右のアンバランスは消せています。
(※こうして見てみると斜鏡の位置が結構ズレてるな…これ)
書道半紙のフラット補正の効果

■ 拡散板に許されること/ダメなこと
フラット画像の撮影に用いる拡散板からの光と像
袋はダメで半紙ならOKというのがいかなる訳かと申しますと、それは「大規模な光ムラ」の有無です。
 拡散板の表面の細かなムラとか、あるいは字が書いてあるとか、そういうのは殆ど影響しないと思われますが、右が明るいとか、中央が明るいとか、そういう全体的な傾向があるのが大変まずいのです。
 コンビニ袋は表面が大きな起伏になっているので、光害地では街灯のある方向から照らされて片側だけが明るいとか、そういうことが起こってしまいます。これに対して、書道用半紙は表面がフラットなので、この問題は起きにくいという訳です。
 ここで、もう少し真面目にフラット画像について考えてみたのが、図のような光路図です。基本的に、拡散板の一点からの光は、像面全体を照らします。ですから、どこか一点が明るかったり暗かったりしても、それは全体が明るくなったり暗くなったりする影響しかありません。ムラには単純には直結しないのです。
 そして、一点から出た光の光路中にケラレの原因になるような邪魔モノがあったりすると、それは像面では図の右側のように明るい部分と影の部分にハッキリと別れます。こうした拡散板上の無数の点からの明暗像の足し算がフラット画像として見える訳です。
 ですから、たとえ拡散版の一点が黒くなっていたりしても、その影響は他の点からの光で補われるので大きな影響としては現れにくくなっています。しかし、大きな明暗の傾向があると、それは足し算の結果としてフラット画像の誤ったムラとして現れてしまうというわけです。

■ 課題は遠征への対応
AliExpressで買っちまった拡散版
書道用半紙はまずまずの性能ではありますが、これが成立するのは光溢れる光害地であることが前提です。遠征した時には、何かを光らせて撮ってやる必要があります。
近くで何かを光らせるのは御法度だった大きな光ムラの原因になりますから、この対策は大変そうではあります。毎回フラットフレームを撮る、というのは、案外大変だなあということに今ごろになって気づいたのでした。
 ひとまず、AliExpressでφ240用の拡散プレート(3000円強)は購入してみたものの、これを照らす方法が平成の間に完成できるかどうかは謎です。ま、できなくても新しい時代の幕開けと共に恩赦によって許されることをゆるーく期待したいと思います。
(間接照明的に拡散版の表面を照らしてやればかなり良さそうではあるのですが、ゆるく簡単にやる方法を考えてみたいと思います。本当は、照明付きのパネルも安かったので心が揺れたのですが、いろいろ考えてやめちゃいました。)

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