口径と気流の話

大口径は気流の影響を受けやすい」と言われていますが、その意味が誤解されているフシがあるなあと思って、少し真面目に考えてみました。
筒内気流の対策をした時に惑星自体もよく見えたのですが、実はホンモノのジェット気流もクッキリとよく見えていました。木星とはごくごくわずかにピント位置が違うようで、ピントを木星表面からかすかにずらすと、ゴーッと流れている大気の様子が見えたのです(音は聞こえませんけどね)。それで、上空の気流の影響についても興味が湧いてきたのでした。(※ちなみに、ピントを大きくずらすと筒内気流の様子が見えます。)

 で、冒頭の「大口径は気流の…」という説明は、昔はあまり見かけなかったのですが、最近はよく語られているようです。
 ありがちな説明では、「大口径では広い範囲の光の束を集めてくるので、多くの乱れを取り込んで大きく光が乱される」的な説明が添えられていてあたかも小口径の方がよく見えそうな説明にもなっていて納得してしまいそうなのですが、ちょっと誤解あるよなあと思います。
気流による像の乱れの口径による見え方の違い
(元画像データ出典: TelescopeOptics.net )

■ 小口径の方がよく見えたりすることはない
 図の出典は TelescopeOptics.net なるサイトによる検討(5.1.3節)で、気流の乱れを流体力学によってシミュレートして口径による見え方の違いを図にしたものです。非常に良く検討されていて、概ね賛同できる内容なのですが、図の描き方が光学の専門家向けなのか、ちょっと我々素人には誤解を招くかもしれないものになっていました。
 示した図の左側は、出典元にあるオリジナルの像です。確かにこの図を見ると、口径が大きい方がぼやけ方がひどくなっていて、小口径では気流で乱されてもきれいなディフラクションリングが見えています。
 しかし、よくよく読んでみると、図は「ディフラクションリングの大きさを統一して」描いたものだと書かれています。どういうことかというと、これは大口径ほど拡大された絵になっているということです。口径に反比例してディフラクションリングは小さくなりますからね。
 そこで、実際の大きさの比率になるように加工したのが図の右側です。この図が実際の分解能の良し悪しを表していると思ってよいと思います。
 確かに気流によって回折限界付近の像は乱されているわけですが、像そのものは口径が上がるごとにシャープになっていきます。つまり、気流の影響で「大口径ほど見えにくくなる」ということにはならないし、「小口径の方がよく見える」ことにもならないわけです。
 現実は、「大口径の本来の分解能は気流によって得にくくなる」というのが冒頭の命題の正しい理解だと考えられます。

 そういうわけで、解像度の高い惑星写真を撮ろうとすると、気流がどうだろうが口径は命になってくるということです。もちろん、速いシャッタースピードで切れるという意味でも、口径の意味はとても重いということでもありますね。

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