昼間のAZ-GTi、ノースターアライメント(日食に向けて)

部分日食を気軽に観望するために、昼間のAZ-GTiセッティングを考えてみました。
昼間は星を使ったアライメントなんてできませんから、基本的にノースターアライメントでやるしかありません。
 今回は、「衛星式方位指示盤」を用いてノースターアライメントをちょっとだけ精度良く行う方法について述べてみたいと思います。このアライメントをやっておくと「そこそこの自動追尾」ができますので、何度も太陽をファインダーで導入しなおす鬱陶しさは減らせるものと思います。

 なお、SynScan Pro では「太陽をアライメント星として使う」ことは出来ないようになっています。おそらく危険性が高すぎるためだと思います。

※記事末に太陽を昔ながらの「サングラス」で観察した体験記を書いていますが、失明に至る大変な危険がありますので絶対に真似しないでください。太陽観察は投影板などを使って行うべきものです。また、太陽用でないファインダーを覗く行為も厳禁です。
金色の鏡筒で部分日食の予行演習をしました
(自動追尾しながら眺めるだけなのですが)

■ ノースターアライメントのおさらい
 この「ノースターアライメント」は最も簡便なアライメント法で、星が全く見えない状況下でも自動追尾だけほどほどにやってくれるようになるモードです。自動導入はほぼ期待できませんので、そこのところは理解しておく必要があります。

 手順を簡単に言うと、「鏡筒を北向き水平にセットして」「電源を入れ」「SynScanアプリで適当な天体を選択して"ポイント&トラック"を押す」という3つの動作でアライメントが完了します。
 さらに「設定」で「エンコーダ」をOnにしておくと、フリーストップ動作(*)で適当に天体に向けても、追尾だけはうまくやってくれるという、大変お気楽なアライメントです。

 このノースターアライメントの精度には、「架台の水平出し」と共に、「鏡筒の北向き」や「鏡筒の水平」の精度が効きます。設置時に架台の水平出を丁寧にとっておくと、精度は高まります。

(*ノーマルのAZ-GTi では動きが渋く、フリーストップで動かす気が起きないかもしれませんが)

■ 鏡筒を正確に水平・北に向ける(衛星式方位指示盤)
 まずは鏡筒が水平になるように、水平器などを使って向きを合わせておきます。そして次に、北に向けるわけです。
水平器で鏡筒の水平を見ます

 「北に向ける」と一口に言っても、意外と簡単ではありません。

 スマホの方位センサはイマイチなことが多く、精度を語れる気はしません。方位磁針も似たり寄ったりで、あの小さい針で正確に合わせるのは運任せになってしまいます。さらに、地磁気が示す北方は必ずしも天の北極を示していませんので、場所に応じた磁気偏角の補正が必要で、やってられません。
 そこで、極軸合わせの記事で紹介した衛星写真のデジタルデータを活用したアナログ式の「方位指示盤」を使うことにしました。

 方位指示盤といっても難しいことは何もなく、Google map で自宅の衛星写真をコピペして、建物の基準線と北方の指示線を引き、プリンタで印刷しただけの紙切れです。

 この方位指示盤(紙きれ)を観測場所の建物や地面などの基準になるものに合うように地面に置き、鏡筒の向きを紙きれに描かれた北方指示線に合うように向けるわけです。

 この状態で架台のクランプを締め、電源を投入し、SynScanアプリで適当な星を選択して「ポイント&トラック」をやれば自動追尾がONになり、観測スタンバイOKです。

 こんな紙切れとはいえ、A4用紙なら25cm以上の長さをとれるわけですから、数センチしかない方位磁針とでは精度が桁違いです。また、衛星写真データを活用していますから、磁気偏角や周囲の鉄製品の存在も関係なく正しい北を教えてくれるというわけです。
方位指示盤(紙きれ)を使って北方に鏡筒の向きを合わせます
(ここでは、アリガタプレートのカドの線と合わせています)

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!!注意!!
下記はただの体験記であって、安全な方法を書いたものではありません。
昔は安全とされた望遠鏡用のサングラスも、実際には大変危険です
安全な太陽観察には高度な知識と細心の注意が必要であり、間違えると失明に至ります。
大変危険ですので絶対に真似してはいけません。

■ 太陽の方へ向ける
 太陽を観測する場合には、「SynScan pro」の「アドバンスト設定」で太陽観測モードをONにすると、太陽の自動導入が可能になります。(ただし、ノースターアライメントの精度では一発導入にならず、大体の方向に向くだけです。)
 太陽の導入を、私は「レッドドットファインダー」と、太陽観察用の専用黒メガネを介して行っています。スマホで微動を行いながら導入します。

■ 太陽を眺める※太陽観察は投影法で行うべきです
 その昔、太陽観察と言えば望遠鏡に付属してくる「サングラス」でした。ガラスの色のせいで緑色に見える太陽は、昭和を感じるノスタルジーでもあります。
 望遠鏡を使って太陽を見てみたいという願いは、はるか昔のガリレオから脈々と続くものですが、そのガリレオも太陽観察が祟って失明しています。普通の望遠鏡で太陽を覗く行為は基本的にやってはいけない危険行為です。

 望遠鏡用の「サングラス」が何故危険かといえば、それは熱で割れるからです。私もその昔、割ったことが2回あります(滝汗。
 このサングラスを割らずに使用するには一定の条件があり、少しでも間違えると割れて即失明となることがあるので、危険なのです。
 口径を5cm程度以下に絞るのは当然ですが、それでも割れてしまうので要注意です。

 熱でサングラス(フィルター)が割れてしまう主な原因は、望遠鏡の主焦点の位置とフィルターの位置が近づきすぎることです。焦点の位置では太陽光が一点に集められるため、温度がそこだけ極端に上昇してしまい、局所的に膨張して割れてしまうというわけです。

 古来より「太陽には負の接眼鏡がよい」とされていた理由はここにあります。ハイゲンス系の負の接眼鏡は焦点位置が視野レンズより眼側にありますから、フィルター
負の接眼鏡とサングラス
の取り付け位置と焦点位置を離しやすいというわけです。

 日食のように太陽像全体を見る時に用いる焦点距離が長めのアイピースとしては負の接眼鏡が特に望ましいです。正の接眼鏡では、視野を稼ぐためにバレル端近くに視野環が設置されているものがあり、これだと焦点とフィルター位置が近づきすぎて危険なのです。
 かつて私がサングラスを割った時に用いた接眼鏡を今になって調べてみると、確かに絞り環がフィルター位置に接近しています。

 同様の理由で、複数人で望遠鏡を覗く際には、さらに細心の注意が要ります。それは、人によってピントの合う位置が異なり、不用意にピントリングを回すと焦点がフィルター位置にあってしまい、とても危険だからです。
 必ずドローチューブを最も縮めた状態にして、ドローチューブを繰り出しながら合焦操作をしないと危険です。逆に繰り出した状態から縮めていくと、どこかで焦点がフィルターに合ってしまう場合があるのです。
正の接眼鏡は視野環の位置に要注意
(左上:MIZAR K25、右上:谷Or25、下:Vixen K20)

 私は、手持ちの筒が15cmニュートン反射という太陽観測のタブーの塊みたいな機材でしたので、無理矢理サングラスでの観察を強行しますが、これは方法としては誤りです。正しくは、太陽投影板や専用の対物側フィルターを使うか、専用の望遠鏡を使って観察すべき対象だということを、改めて念押ししておきます。
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そういうわけで、太陽の観察には危険が伴いますので十分な注意が必要ではありますが、部分日食の6/21 が「晴れ」になることを祈るばかりです。
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(※当ブログより;実は今年もプレゼント企画を用意しつつあったのですが、ちょっとこちらのチョンボと時間の無さで足踏みしています。お披露目できるよう精進しています。)

コメント

ケニ屋 さんのコメント…
南西向きの自宅ベランダでいつも見ていて、赤道儀の方位合わせに悩まされていますが、方位指示板のアイデアは、こんな解決法があったのか!と目からうろこが落ちる(古い W)思いでした。サングラスの話も面白かったです。高校生の頃は高級アイピースはバルサム貼りなのではがれる恐れがると教えられていましたが、確かにピント位置というのは大切ですね。因みに高校備品の望遠鏡での黒点観測には、五藤ケルナー40mmを使っていました。
なおベランダの赤道儀は、ある理由でもうじき撤去の予定です。
Lambda さんの投稿…
ケニ屋さん、コメントありがとうございます!

方位指示盤は、その昔にゼンリンの地図を使った苦肉の策だったのですが、グーグル先生とAZ-GTiの組み合わせにはお気楽感がよくマッチしたかなと思います。

アイピースの話は、太陽投影板を使うような時にはピント位置の状況によって貼り合わせの有無は大事になりますね。
ケルナーは視野レンズが一枚なので、その点ではよかったのではないかと思います。