エコノミー機材⑤ レッドドットファインダーと自動導入赤道儀のアライメント

 文明の利器・自動導入「GOTO」機能は、私のセレストロン Advanced-GT 赤道儀の目玉機能です。きっと、赤道儀名の「GT」もGOTOから来てるんだろう、とか勝手に思ってます。
 さて、大変便利なこの機能なのですが、難敵は初期の「アライメント」作業です。私も当初舐めてかかっていたのですが、意外と大変というか、うまくいかない場合もあって時間を無駄にしてしまうことがしばしばでした。セレストロンには「StarSense」なる自動アライメント装置もあるのですが、価格があまりにもブルジョワすぎて手が出ません。

■ 最初の星の方向にちゃんと向いてくれない
 さて、とにかく、アライメントの最初の一発目でちゃんと星の方向を向いてくれないのが、この赤道儀のチャームポイントというか泣きどころです(これは他の赤道儀でも見られることがある現象のようですが)。どんなに極軸を合わせても、最初の星はファインダーの視界にも入ってこない仕様で、目測で10~15°くらいずれてくれます。
 この「基準星が導入できない」現象が起こる原因については後述しますが、ザクっと言ってこの赤道儀の「現在地設定」がよろしくないようです。出処が同じ Synta社(Skywatcher)のSynScanにも似たようなやつがあるかもしれません。

■ キモは「コントローラが言ってる星」をちゃんと入れること
An alignment star in NexStar+
モスアラって言われてもね…
最初の星にちゃんと向いてくれないのだとすると、ちゃんとコントローラが言っている星を手動(電動だけど)で導入してやる必要があります。ところが問題は、「コントローラが言ってる星」が一体どれなのかが結構迷うことがあるのです。
 Advanced-GT の NexStar はアライメントの最初の二つの星は西空にある星を導入させる必要があって、候補が意外と多くありません。それが1等星のない秋の星座だったりすると難儀するというわけです。天文少年だった私ですから、リゲルとかアンタレスと言ってくれればどれだか分かると思って自信満々だったのですが、2等星以下は…厳しい!"ミラク"とか"アルマク"とか言われても、それがどれなんだか、サッパリなのであります。
 中にはミラなんて変光星まで基準星になっているのですが、この星、極大期は2等星でも年の半分は肉眼では見えない暗い星です。「名前を聞いたことある」と思って迂闊に選択してしまうと、そこには星が無いという地雷になってます。ミラの極小期は10等星なんですぜ、旦那。また、「マーズ」なんてのもありますが、これは火星ではなく Marj のことなので間違えてはいけません。
 そんなわけで、アライメントがうまくいかない原因の一つは、たくさんあって特徴のない2等星以下の基準星と間違えて別のを視野に入れてアライメントをやっちゃうから、なのでした。
言われた星をちゃんと入れるって、思ったほど簡単じゃあないんですね。

■ 意外に難しい2等星以下の導入
 2等星以下の導入は、星の位置が良く分ってないので難しいという面はあります。しかしこれは、この高度情報化社会においてはスマホにアプリを入れて概ね解決できます。
 問題は、ファインダーに入れてる星が果たして目的の星なのかどうか?これが、けっこうあやふやになったりするのなのです。一等星でも、カストルのつもりでポルックスを入れてたり、ということが起こり得るわけです。特に、星が天頂付近を向いている時などは、目の向きとファインダーの筒の向きとがズレやすく、間違いも発生しがちです。
 ファインダーに入っている星をみても、さして広くもない倒立像の視野に浮かぶ特徴のない恒星が本当に目的のソレなのか、イマイチ自信が持てなかったりします。写真の「モスアラ(Mothallah)」はさんかく座の3等星なんですが、これが倒立像のファインダーの中でどれなのかを言い当てるのは、私の弱い頭脳では困難です。
更に、最初の方向を間違えてくれるAGT赤道儀では、当初ファインダー内にすら基準星が入っていないので、けっこう間違えるわけです。

■ レッドドットファインダーは強力なツール
Red-dot sight finder
レッドドットファインダー
そういうわけで、またまたAliExpressから買ってみたエコノミー機器は、「レッドドットファインダー(1575円)」でした。
レッドドットファインダーは、倍率1倍で裸眼の視界の中にLEDの赤いドットが星空に重なって浮かぶタイプのファインダーです。
 裸眼と同じ視野ですから、星座の中での星の位置が良く分かるというわけで、自動導入のアライメントにはうってつけなのです。暗い天体の導入は、自動導入すればよいのですから。
買ったファインダーはオモチャの望遠鏡につけるようなプラスチッキーなシロモノですが、XYの調整ノブと、赤い発光体の光量調整ツマミが付いていて、十分実用的です。(高級機は、反射板が大きくなっていて、ドットが見える範囲が広いようです)
 難点は、赤い光を反射させるための板の星の光の透過率がイマイチなところですが、自動導入のアライメントで使う星くらいはちゃんと見えます。
(ちなみにこのファインダー、天体用途だとなぜかお高いのですが、エアガン用に同等品が売られている気がします。"レッドドットサイト"でググると出てきますね。ファインダーシューとの取り付け規格には注意が要ります。)

■コントローラの言語設定は英語で
 上記の方法を使えば、基準星の導入はググッとやり易く短時間にできるようになります。しかし次の問題は、どれを基準星として導入するかというところです。
 スマホで入れやすそうな星の名前を調べてそれを選ぶわけですが、問題はその名前の星がコントローラになかなか出てこないということです。上下キーをかなりの回数叩くのですが、星の名前がランダムな感じで、いつ出てくるかがわかりにくいのです。
 この原因は、出てくる順番がアルファベットでソートされているからです。さすがに2等星の名前のスペルまで頭に入っている人はなかなかいないと思います。しかも日本語だと、CとK、BとV、LとR、FとPhなどの読みが混ざってしまっているので、大変ややこしくなっています。
 そこで、私はコントローラーは言語設定を英語版にして使っています。メニューの表現なども日本語がヌルい感じがしているので、英語の方がスッキリするように思います。ちなみに中国語設定もできますが、間違えると戻すのが困難に陥るので注意が要ります。

■ 大切なのは観測地の経度情報
 基準星をしっかり間違わずに導入する、というのがアライメントの基本ではあります。
しかし、最初からちゃんと向いてくれれば微調整だけで済んで楽だよね、と考えるのは人情です。
 最初にちゃんと向いてくれない原因をもう少し掘り下げてみると、私のAGT赤道儀では「現在地設定」の方法にありそうだ、と書きました。あろうことか、このAdvanced-GTの現在地設定が「タイムゾーン」設定で代用されているのです。このため、コントローラはそのタイムゾーンを代表する経度を仮定して最初の星を導入してしまうのです。赤道儀では、極軸を合わせるので現在地の緯度情報は不要ですが、経度情報は大切です。
 私のAGTでは、日本のタイムゾーン(Zone9)を設定したときには、関東圏とは違う場所に経度が仮定されていたようで、アライメント星が最初に視野に入ってこないのはこのためでした。自動導入機のアライメントでうまくいかない場合には、赤経方向に赤道儀を動かして基準星を探してみるというのはアリかもしれません。

※当初の記事では「設定時刻をずらしてしまう」という方法でアライメント星の初期導入の問題をクリアできるとしていましたが、マニュアルの「初期セットアップ」の項目をよく読んでいたら,電源を入れたときのセットアップで観測地経度の設定値を変えられるということが分かりました。(これに伴って、本文を修正しました)
 Advanced GT赤道儀の電源を入れて、最初のタイムゾーンなどを設定するところで「Back(Undo)」キーを押すと、観測地経度/緯度の設定画面に移行できます。

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