一体どういう日のシーイングが良いのか、ここでは仮説を立てて今後ウォッチしていく指針としたいと思います。
ちなみに私自身は光学も気象も門外漢で学んだこともありませんが、伝熱や流体についてはかつて入門して長らくメシの種にもしてきたジャンルではあります。タフな米国人女性師範の来日中に授かった西洋式秘術は、和式のxyz座標系によるシミュレータプログラマ養成講座とは違って、流れや渦の本質を捉える数式の組み立てでした。この修行のおかげで流れの様子が視界に重なって見えてくるようになったのでした。
そんなわけで、上空や地表ちかくの流れや温度分布の様子を想像してみるのは、個人的には楽しかったりします。とはいえ、もちろん上空の流れの様子は複雑でもあり、私にも全てが見えているわけではありません。
■ 像の乱れ=風の速さ
シーイングの良し悪しを気流情報から予測しよう(cleardaksky.com)、という殊勝な方は北米方面にはおられたようです。残念ながら予測データは北米内だけで予測モデルの詳細は公開されていないのですが、"シーイングが良い"ときの上空の状況を Windy.com で観察してみると、色々見えてくるところはあります。
図はパロマー天文台の上空13500mの気流です。カリフォルニア州は日本と同じく上空がジェット気流の通り道になっていて、必ずしも穏やかではありません。
そして図を見ていただくと分かるのですが、上空の風速が早いかどうかという話とシーイングは必ずしも対応していない結果となっています。
■ 像を乱すのは主には温度
像を乱すのは、風速ではなく密度の濃淡です。密度が屈折率に影響するからです。空気の密度を変えるものは、温度、湿度、圧力があってそれぞれ影響はあるのですが、このうち影響が大きいのは温度です。
湿度は、たとえ湿度100%であっても重量比で空気の0.1~0.2%程度しか入っておらず、湿度10%の変化は空気の密度に対して0.005~0.01%の影響しかありません。
圧力の影響は、10m/sの速度の増減(の濃淡)があっても約0.3℃の温度変化と同じ程度の密度差しか生じさせません。ですので、大嵐でもない限りは像に最も影響しているのは温度の濃淡と考えて良いかと思います。
■ 問題は温度の濃淡
温度差が像を悪くする ー というのは、コップの水を想像すれば分かりやすいです。コップに水を入れて懸命に掻き回し、横から眺めて見るとよく分かるのですが、いくら掻き回しても向こう側はよく見えます。チリや気泡が入らない限り、水が動いているのも見えなません。そう、流れの速さなど見えることはないのです。
一方で、水ではなくお湯を入れ、ここに氷を落としてみると、ユラユラしたものが見えます。これが密度差による像の乱れの正体です。これをゆっくり搔きまわすと、ユラユラは激しくなり、素早く回すとむしろユラユラは消えてゆきます。よく混ざりきってしまえばそこに密度の濃淡は無くなりますが、よく混ざらないで動くと濃淡が全面に生じるのです。
■ 温度の層が混じるところが鬼門
そういうわけで、悪シーイングの元凶は上空で温度が違う層が激しく混じり合うところ、ということになります。一方で、全体的に速いところは温度がよく混じり合うので像への影響は小さくなります。
また、地表と大気との温度差も鬼門です。ここは、夏の陽炎を見ればわかるように、むしろ風が吹いていないと濃淡が激しくなります。このため、地表ではある程度風が吹いている方がシーイングとしては良いと思われ、無風はむしろ凶とでる可能性があります。地表より空中が暖かいなどということはなく、暖められた空気はメラメラと立ち上るのみだからです。
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次回は、結局どういうときがシーイングが良いのかを、パロマー天文台上空の空気を高度ごとに眺めながら、まとめてみたいと思います。
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※アイピース対決が、ひどい悪天候のため進みません。単レンズ"The Kepler"を鏡胴に組み込んで完成させましたが、レンズの見た目がオーラを放ちすぎててすごいです。良く見えるかどうかとはイコールじゃありませんが、パッと見の透明感が強烈で、SR-4が曇って見えます(外観の話です)。
ちなみに私自身は光学も気象も門外漢で学んだこともありませんが、伝熱や流体についてはかつて入門して長らくメシの種にもしてきたジャンルではあります。タフな米国人女性師範の来日中に授かった西洋式秘術は、和式のxyz座標系によるシミュレータプログラマ養成講座とは違って、流れや渦の本質を捉える数式の組み立てでした。この修行のおかげで流れの様子が視界に重なって見えてくるようになったのでした。
そんなわけで、上空や地表ちかくの流れや温度分布の様子を想像してみるのは、個人的には楽しかったりします。とはいえ、もちろん上空の流れの様子は複雑でもあり、私にも全てが見えているわけではありません。
■ 像の乱れ=風の速さ
シーイングの良し悪しを気流情報から予測しよう(cleardaksky.com)、という殊勝な方は北米方面にはおられたようです。残念ながら予測データは北米内だけで予測モデルの詳細は公開されていないのですが、"シーイングが良い"ときの上空の状況を Windy.com で観察してみると、色々見えてくるところはあります。
図はパロマー天文台の上空13500mの気流です。カリフォルニア州は日本と同じく上空がジェット気流の通り道になっていて、必ずしも穏やかではありません。
そして図を見ていただくと分かるのですが、上空の風速が早いかどうかという話とシーイングは必ずしも対応していない結果となっています。
パロマー山のシーイングと上空の気流 (シーイング良いときと悪いときの対比) |
■ 像を乱すのは主には温度
像を乱すのは、風速ではなく密度の濃淡です。密度が屈折率に影響するからです。空気の密度を変えるものは、温度、湿度、圧力があってそれぞれ影響はあるのですが、このうち影響が大きいのは温度です。
湿度は、たとえ湿度100%であっても重量比で空気の0.1~0.2%程度しか入っておらず、湿度10%の変化は空気の密度に対して0.005~0.01%の影響しかありません。
圧力の影響は、10m/sの速度の増減(の濃淡)があっても約0.3℃の温度変化と同じ程度の密度差しか生じさせません。ですので、大嵐でもない限りは像に最も影響しているのは温度の濃淡と考えて良いかと思います。
■ 問題は温度の濃淡
温度差が像を悪くする ー というのは、コップの水を想像すれば分かりやすいです。コップに水を入れて懸命に掻き回し、横から眺めて見るとよく分かるのですが、いくら掻き回しても向こう側はよく見えます。チリや気泡が入らない限り、水が動いているのも見えなません。そう、流れの速さなど見えることはないのです。
一方で、水ではなくお湯を入れ、ここに氷を落としてみると、ユラユラしたものが見えます。これが密度差による像の乱れの正体です。これをゆっくり搔きまわすと、ユラユラは激しくなり、素早く回すとむしろユラユラは消えてゆきます。よく混ざりきってしまえばそこに密度の濃淡は無くなりますが、よく混ざらないで動くと濃淡が全面に生じるのです。
■ 温度の層が混じるところが鬼門
そういうわけで、悪シーイングの元凶は上空で温度が違う層が激しく混じり合うところ、ということになります。一方で、全体的に速いところは温度がよく混じり合うので像への影響は小さくなります。
また、地表と大気との温度差も鬼門です。ここは、夏の陽炎を見ればわかるように、むしろ風が吹いていないと濃淡が激しくなります。このため、地表ではある程度風が吹いている方がシーイングとしては良いと思われ、無風はむしろ凶とでる可能性があります。地表より空中が暖かいなどということはなく、暖められた空気はメラメラと立ち上るのみだからです。
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次回は、結局どういうときがシーイングが良いのかを、パロマー天文台上空の空気を高度ごとに眺めながら、まとめてみたいと思います。
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※アイピース対決が、ひどい悪天候のため進みません。単レンズ"The Kepler"を鏡胴に組み込んで完成させましたが、レンズの見た目がオーラを放ちすぎててすごいです。良く見えるかどうかとはイコールじゃありませんが、パッと見の透明感が強烈で、SR-4が曇って見えます(外観の話です)。
The Keplerのレンズの透明感がすごいです |
人工星も準備万端です (口径20cmの分解能より充分小さい像を得る距離が取れることが分かりました) |
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