キワモノ高倍率アイピース② - 3枚5群 謎のPLOSSL

今回は、皆さまもお目にかかったことのないアイピースなのではないかと思います。
「3群5枚」仕様との情報ありとして望遠馬鹿様より貸与いただいた中華自称プレスル、Datyson PL-6.3mmです。
Datyson(達泰森) は中国深圳の貿易商社のようで、基本的に激安系の光学製品取り扱いがあるところです。今回のPLは、当ブログの趣旨から言って、試してみる動機十分の逸材です。

このアイピース、昼間に単体で覗いてみると視野環がハッキリしない粗悪品のような不安を誘う見え方です(実際に視野環は入っていない)。

ここに天体を導入してみる…と、これまた笑ってしまう良像が現れたわけでありました(後述)。

Datyson PLOSSL 6.3mm
左は新品購入品(分解用)、右は貸与いただいた旧品


■ 3群5枚構成のPL-6.3
 プレスルの3群5枚仕様というと、ミードの 旧版SUPER PLOSSL4000シリーズやセレストロンのUltimaがマスヤマタイプでありましたので、最も公称焦点距離が近いミードの旧PL6.4mm(マスヤマ)のコピーがこのDatyson PL6.3なのか?などと考えておりました。

凸になっている視野レンズ
(写真は現行Datyson PL6.3)
貸与品のPL6.3をよく見てみると、視野レンズに大きく凸になったレンズがはまっていて、こんなプレスルは見たことがありません(私が知らないだけ?)。マスヤマとも違うように思えます。

 このDatyson PL-6.3mm、現在は貸与いただいたのと色違いの黒い筐体のものを新品で購入可能です。約1,200円ほどでしたので、購入&分解してみました。
 手元に届いた購入品PL6.3の程度は悪く、いきなり内部に埃の侵入が多数見られましたので、躊躇なく分解することが出来ました。この製品は既に良品は入手困難なのかもしれません。

 購入がDatysonオフィシャルショップではなかったせいでパチモンなのかもしれませんが、こんな激安品のニセモノをわざわざ作って売る業者がいるのかどうかは疑問です。ちなみに、現在オフィシャルショップにあるPL6mmはこれとは違うもののようです。
 ただ、オフィシャルショップにある「猪年記念版(謎)のPL8mm」は、写真を見る限りこのPL6.3mmと同じ凸視野レンズがある構成になっています。また、同様の3群5枚構成と思われるシリーズは、ほかに 4/10/12.5mmがあるようですが、オフィシャルショップからは消えています。

 届いた購入品を貸与品と比較すると、鏡胴デザインこそ若干違いますが、視野の見え方や凸になっている視野レンズなど、内容は全く同じものであるようです。

Datyson PL6.3mm現行品の構造 (左が視野側)
視野側左端にある大きいレンズは深いメニスカスになっています。

 分解してみると、写真のように確かに3群5枚でした。視野側に大きい曲率の分厚めのメニスカスレンズが入っていて、その後ろ側にプレスルライクなレンズがある構成になっています。そのプレスルも視野側・眼側のそれぞれが僅かに凹面になっている凝った設計です。
 メニスカスレンズの作用は不明ですが、単純なスマイスレンズではなさそうです。像面の湾曲や歪曲収差を気にしている何かのようにも思われます。
 書籍をめくってみても、こんなのは見たことがありません。
 このアイピースの元ネタが何者なのかは分かりませんが、どこにでもあるプレスルではないことは間違いなく、中華製品が時折何にでも「PLOSSL」と銘打ってしまう癖があるのはどうかなと思います。

■ そして見え味
 冒頭で申し上げましたように良く見えます。
 但し、このレンズの泣き所は、視野中心に強く表れるゴーストです。視野レンズについているメニスカスからのゴースト像がジャスピンになってしまうようです。残念なことに中心像が使えません。中心像を少し外せば問題なく見えるのですが、高倍率でごく僅かとはいえ短焦点ニュートン反射では像の崩れがあるので、やはり中心像を使いたいところです。ここさえ改善されたら凄い性能なのに…と思います。
 しかしながら、アイピースとしては中心を外したところでも高いコントラストで惑星が良く見えるレンズです。少なくとも TMB Planetary II 6mmよりも解像度が上で、SMC Pentax O-6とはいい勝負という見え方でした。
 必ずしも、レンズ枚数が少ないだけが正義ではないことを示してくれています。
2枚玉SRシリーズと比較すると、ほかのオルソ同様に非常に高い整像性や収差の少なさを感じます。中心を外してもビシッとしている像が、ボヤけた視野境界と対照的です。
 なお、同時にお貸しいただいた William Opticsのバーローをアイピースにねじ込んで使用して 4mm相当の焦点距離でも使用しましたが、こちらの星像も十分素晴らしいと言えました。

 この見え味を考えると、本当にゴーストの存在だけが惜しいところです。
 情報によれば、このアイピースは精密測定機械用レンズからの転用設計らしいとのことですが、そうした測定機器分野と天文分野では気にすべき点が異なるということでゴーストが許容されてしまっているのかもしれません。


■ ゴーストを考える(考察)
 光軸をよく合わせた光学系でSRや上記を特殊PLを覗き比べていると、中心像の周りに現れるゴーストの様子がとても興味深いことに安物アイピースばかりを覗き比べて初めて気付きました。おそらく、コーティングがしっかりしている高級レンズばかり覗いていてはゴーストのことはよく分からなかったと思います。
 このゴーストの出方にはアイピースによって随分と違いがあるのですが、気付いたのは、ゴーストにもジャスピン位置があるということです。あたりまえですが。同焦点でないSRを取り替えていると、途中でゴーストがボケていく様子が見えるわけです。

 セレストロンのSR-4は、ノンコートのレンズのために視野全体がゴーストによって白っぽくなって「フレア」になっているのですが、ゴーストは焦点位置からズレズレになっているおかげでゴーストの影響が薄められています。これは、6mmという焦点距離に対してレンズ間距離が約1mmと非常に小さくなっていることや、平凸レンズが向かい合っているラムスデン式が寄与しているものと思われます。
 これに比べると、ほかのSRではゴーストが比較的惑星像の周りにやや集中して現れていた傾向がありました。ただし、SRではそこまで像質を下げるほどの影響にはなっていませんでした。
 Datyson PL6.3の弱点はここで、ゴーストがジャスピンになっていて、大変目立ちます。ただし、中心を外すとゴーストが消えてくれるようになっています。これらのゴーストは視野側メニスカスからの反射光ではないかと想像されます。

■ 五藤MH-6mmで見えたゴースト 
五藤光学 MH-6mm
さて、ゴーストで思い出したのは、決してキワモノではない五藤光学のMH-6mmです。大変な期待を込めてテストしたものの低評価になってしまっており、これがずっと気になっていて、今回も再テストしてみました。

 口径を5.2cm/F19.2にまで絞ることで入射高の範囲を限定して無遮蔽・無収差とみなせる状態の主鏡でのテストも行ったのですが、このMH-6ではカシニの空隙の確認が困難でした(ほかのSR、PLでは確認できる)。つまりこのMH-6が見えないのは、小さいF値からくる収差のせいではなかったと言ってよいかと思います。
 口径20cmでは低コントラストながらカシニの隙間が確認できるのですが、更に注意深く観察すると、コントラストを著しく下げてカシニの隙間を埋めて解像度を下げている主原因がゴーストであるように見えたのでした。どうやら、手元にあるHM-6の場合、視野側メニスカスからの反射ゴーストがいかなる収差よりも像質を悪くしているように見えるのです。

ハイゲンス系ではゴーストも焦点位置の近くで結像する
(ラムスデンでは視野レンズがゴースト光線から見て凹面ではないのでこうはならない)
よーく考えると、負の接眼鏡であるハイゲンス式の場合、眼側レンズの直前で像は焦点を結び、眼レンズの平面にはほぼ平行な光束がやってくるわけですが、ここで反射した光は再び焦点位置で収束してメニスカスレンズに向かうわけです。その光がどうなるのかと言えば、メニスカスレンズの凹面で反射して再び眼側に収束されてやってくるわけです。ハイゲンス系はゴーストが弱点なのかもしれません。
 レンズ間隔と視野レンズの曲率によっては、ゴースト像がジャスピンに近くなってきてしまうのは頷けます。レンズ間隔、レンズの厚さ、メニスカスの強さによって、6mmという焦点距離が特に悪さをする関係になっている可能性はあるなと思ったわけでした。

 接眼レンズの収差はスポットダイヤグラムだの収差曲線だので計算されているのは見かけますが、ゴーストについてはほぼお目にかかりません。そんなモン、光学設計屋さんにとっては興味の対象外なのかもしれません。
 しかし、レイアウトによってはゴーストの設計が鬼門となって肝心の見える/見えないの性能を左右することもあるという例ではないかと思います。
 現代の高級レンズでは、コーティングによってゴーストは全く見えないレベルになっていますが、ひょっとしたら、計算されていない僅かなゴーストが像を結び、高級アイピースの見え味を左右していたりする可能性も…ないとは言えないなと思ったのでした。

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コメント

  1. こんばんは。
    謎PLの実視レビューありがとうございます。

    20cmF5反射で木星を見たとき、
    ●ペンタSMCオルソ6㎜+バロー→260倍
    ●謎PL6.3㎜+バロー→248倍

    の、比較で 謎PL方が 輪郭部分がくっきり見えました。
    中の模様の見え方は同じくらい。

    フレアは最初見たときは無かったような気がします。
    何度か使っているうちに出てきた気がします。
    が、記憶違いかもしれません。

    TMBモノセントリックだったか、3枚合わせの惑星用
    アイピースは「ゴーストが出るが、それをはずして見ればいい」
    という記述を読んだ気がします。

    ↓その記事ではないのですが参考に。
    http://www2.odn.ne.jp/~ccr61210/www2.odn.ne.jp/monocentric.html

    でも無ければ無いほうがいいに決まっていますよね・・・
    謎PLもコーティングがもっと良ければ。残念。

    MHは、24.5の金属性の昔のやつも、中華31.7の最近のやつ
    (プラ)も、12.5mmなら高性能バローと組み合わせてやれば
    高倍率でオルソより良像を結びました。(わずかに火星面の暗部が
    濃く見えた)※他のあらゆる組み合わせ、たとえばペンタSMC
    オルソ6㎜+3枚玉バローにも勝ちました。不思議です。その日の
    シーイングにもよるのでしょうが。

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    1. 望遠馬鹿さん,本件「謎のPL」の情報提供とご貸与、ありがとうございました!

      ご指摘の通り、像のシャープ感は卓抜したものがありました。
      惑星像の輪郭という観点での見比べはしていませんでしたが、収差補正は良く行き届いているのは確かで、20cm鏡の限界には達していたと思います。(今回は人工星での確認はしておりませんが、SRもXP/XOも限界のエアリーディスク径が得られていましたので、このPLもそこには到達していると思います)

      ゴーストの件は、実に惜しいです。
      全面の突出したメニスカスで裏返し(?)になって返ってきているような印象でした。
      コーティングもそうですが、「ゴースト像からピントが大きくズレる設計」が、天体用には大切なのではないかと思いました。
      ※そういう意味では、このシリーズの4mmか猪年(笑)8mmはさらにイケてる可能性はあります。

      MHは、メニスカスの曲率のとり方によってゴーストの合焦位置は変わるのだろうと思います。
      そういう意味で、おそらく6mmという焦点距離が鬼門になるメニスカスになっているのではないかと想像しています。
      MH-12.5mmが好結果という情報は他からも寄せられており、そうなのだろうと思います。

      ※今回の話題提供、重ねて御礼申し上げます。

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  2. 謎のPLOSSL 、これは捨ておけませんね!
    ゴーストの考察も興味深く拝見しました。ひょっとしたら、レンズ間のスペーサ―を外すか厚いものに少し厚いものに交換すれば、球面収差の補正を最適値からズラしてしまうことになるけど、ゴーストを散らすという意味では機能するかもしれません。
    ゴーストを思いっきりピンボケにすれば事実上なくすこともできそうです。

    おっしゃるとおり、4mmや8mmが偶然、ゴーストが目立たない仕様になっているかもしれないことは十分想定できますね。4mmが欲しくなったので、調べてみたらヤフーショップでありました。
    https://store.shopping.yahoo.co.jp/stk-shop/77004561.html?sc_i=shp_pc_search_itemlist_shsrg_title
    810円、送料無料、中国からの発送で所要20日程度。瞬間的に発注しました(笑)

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    1. すいません。自分の発注によって上のURLの分は在庫切れになってしまったようです。在庫の最後の1個だったんでしょうか・・・

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    2. やっぱ興味湧きますよね。
      仰る通り、スペーサーなどでゴーストを焦点位置からずらせれば、いろいろ改善できる可能性がある世界だと思います。

      そういうわけで、私も4mmは注文してしまいました(笑
      (猪年記念とはだいぶ迷いましたが…。)
      こちらの Yahooの方が値段が安いですね! これはやられた! (誤差ですけど)

      同じく、偶然のゴーストのジャスピン外れ狙いです。

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    3. シベット2019/10/14 16:45

      謎のPLOSSLの4mm、届きました!

      15cmF8反射につけて地上の電柱を見た限りでは、結像も鋭くコントラストが非常にいいです。SRみたいな周辺部の倍率色収差もありませんので、良像範囲も広そうです(ただ、ゴーストはよくわかりませんでした)。
      アイポイントが短く、覗きにくいのは仕方がないですが、この価格から言うと素晴らしいパフォーマンスではないでしょうか?
      安価な望遠鏡の付属アイピースとしては絶対にこれを採用すべきでしょう!

      上のURLの在庫も回復しているようですし、人に勧められるアイピースという印象を持ちました。

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    4. おお!情報ありがとうございます!

      私がアリババで注文した奴はまだどこかを彷徨っているようで、未着です(苦笑

      そのご様子ですと、エコノミーアイピースの綱取り候補かもしれないですね。確かにゴーストを除けば、あの6mmもかなりの良像に違いありませんでした。

      目論見通りゴーストが消えていることを祈ってます!

      削除
    5. シベット2019/10/16 22:23

      謎のPLOSSLの4mmを30cmF5につけて375倍で土星を見てみました。

      懸案のゴーストですが、気にならなかったですね。想定通りピンボケになって薄いフレアとなっているような気もしましたが、良く分かりませんでした。そして、気になる像質ですが・・・・・素晴らしいの一言!

      輪が開いている土星のカッシニ全周は当然として、輪にかかった本体の影のエッジが鋭く切れています。また薄黄色の本体には灰色の縞模様が見え、彩度も高いですね。この辺はコントラストの高さが効いていると思います。はっきり言って、最高クラスの見え味ではないでしょうか。1000円以下のアイピースがこんなによく見えるなんで驚きです。

      唯一の欠点は、言っても仕方ないアイポイントの短さですが、付属のゴム見口が邪魔して視野全体を見渡せない状態だったので、取り外して裏返しにしたら何とか普通に使えるようになりました・・・・これは10mmと良質のバローを組み合わせてアイポイントをかせぐ、って手もありそうですね。すでに10mmも発注していますが(笑)

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    6. やったーー!
      目論見通りのゴースト消えですね。

      私もヤフー経由でも注文しちゃいました。Ali は荷物ロストの可能性もありますので、、。

      そしてこれはもう、大横綱の期待大ですね。6mmも中心を外したところでよく見えてましたから。

      こうなると、猪年記念もキープしとくべきように思えてもきます。

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  3. ぼくもさっき4mmと12.5mmを注文しました。
    12.5mmは、バローを使うときにちょうど都合のいい焦点距離なので。
    それとMHでなくても <12.5mmマジック> が起こる期待をこめて。

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    1. 12.5mmにもチャレンジですね!

      4mmの弱点とも言えるアイポイントも、バーローとの組み合わせでクリアできそうで、楽しみです。

      こうして何人もの方に追試頂いて確認していけるのは、ネットの凄さだなあと実感します。

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  4. !※※緊急告知です。
    このシリーズのPLですが、当たり外れが大きいようです。
    【注文には覚悟(?)が要ります。】

    私もPL4を AliExpress と Yahooでそれぞれ入手したのですが、Yahooからのものが不良品というか「まがい物」でした。

    シベットさんが注文された後、入荷したものには「まがい物」が混じっていたのだと思います。

    レンズのゴミが激しいのと、覗いた時の視野の様子がおかしいので分解したところ、なんと「3群3枚」の「スマイス入りF」という究極のチープ構成でした。それも眼レンズが段付きになっていて2枚に見えるという怪しさ満点のものです。

    ちなみに、AliExpressから届いた4mmは良品で、素晴らしい像を見せてくれました。

    私が6mmを買った時の「埃混入不良」やネットでの情報を合わせると、今のところ良品4、不良品3です。猪年記念版も注文中ですので、良否を見てみたいと思います。

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  5. 始めまして。
    ここを見てYahooでPLOSSLの4mmを注文し、先程届きました。

    視野角が25度くらいしかなくて、月を見ても塩ビパイプを覗いている感じです。
    Datysonの記載はありませんが、まがい物でしょうか?
    「良品」の視野角はどれ位でしょう?




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    1. nardis1953さん、コメントありがとうございます。

      ご指摘の件、私が入手した不良のものと全く同じ症状です。

      良品も視野環がいまいちボケてはいるのですが、35〜40度の見かけ視界はありました。

      このようなもともと廉価なものにすらまがい物が存在するというのが驚きでもあり、大変残念なことでもあります。

      ちなみに猪年紀念版の光学系は良品でした。

      現在の情報を総合すると、このシリーズの良不良の割合は、5勝4敗で、とても悪い成績と言わざるを得ません。

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