賞月観星 XWA 20mm 100° を試す

賞月観星のアイピースが価格改定で大変魅力的なお値段となり、つい XWA 20mm を購入してしまいました。今回は、そのレポートです。

XWA 20mm のサイズ感です
2019.12の賞月観星のアイピース価格改定で、82°のUWAシリーズが8,800~9,500円という準エコノミー価格となり、100°のXWAシリーズも21,600~23,600円と大変リーズナブルになっています。70°のSWAシリーズに至っては 4,200円~とエコノミー価格に達しています。ちなみに、今回の注文では「メールで直接注文の場合には10% OFF」ということで、改定価格から更にお値引きしていただけました。

賞月観星の対応は毎回非常に丁寧で、梱包や保証書にも心がこもった感じがするのは大変好感が持てるところです。

ちなみに賞月観星のアイピースは、以前にUWA16mmを購入してテストしたことがありますが、Nagler とはイコールでないものの、大変素晴らしい視界を確保できるアイピースでした。

今回は100°のXWA20mmということで、世間での評判もすこぶるよろしいようですので、大変興味深く思っておりました。

■ XWA 20mm (100°)のスペックとサイズ
同じ20mmでもこれだけサイズが違います
XWAシリーズは100°(3.5mmは110°)の見掛け視界を確保する広視界アイピースシリーズです。賞月観星によれば、「世界トップ級テレビューEthosの見え味を再現すること。」を開発目標にしたということで、姿形もイーソスに似ています。
 その中で最長の焦点距離となるXWA20mmは実視野能2000ということで、1.25インチアイピースでは絶対に得られない実視界の広さを提供してくれます。
 レンズは6群9枚FMCのフラットナー入りで、アイレリーフは15mmとなっています。


 やってきたアイピースのサイズは特筆モノ(?)で、巨大です。世の中には更に巨大なアイピースもあるとはいえ、このXWAも十分大きく、ビール500mL缶とほぼ同じサイズです。
 写真に、いずれも焦点距離20mmのアイピースを示していますが、大きさは随分違います。右端のケルナー20mmは見掛け視界40°。真ん中のWIDESCAN20mmが84°というわけで、広い視界を得るためにアイピースのサイズが加速度的に大きくなっていることが分かります。

 重量に至っては705gということで、ビール缶よりも重くなっています。この重量は、2インチアイピースのSWA26mmの284gやF30mm80°の490gを上回る重量で、通常のアイピースよりかなり重い部類だとは思います。
 ちなみに、これより重たいアイピースとしては、マスヤマ100mmの1.7kgは別格としても、Explore Scientific のES100-25mmの1134g、ES82-30mmの998gなどがあります。(ESシリーズは重く、XWAと似たスペックのES100-20mmでも964gあります)
 また、このXWAが目標としているEthosは、21mmで1020gとのことですから、このXWAもこのクラスでは軽量だと言えなくもありません。

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※下記のテストは、20cm F5ニュートンを使い、SkyWatcherコマコレクタあり/無しで覗いて確認したものです。特に広視界アイピースでは視野周辺での主鏡の収差も目立って見えますので、使用する鏡筒との相性は多分にあると思われます。
※※なお、Ethosは手元になく、したがってそれとの比較記事ではありません。
■ 短評 賞月観星 XWA 20mm
 [f=20mm, FOV=100°, 実視野能2000, 2"]
像:中心A+, 50%視野A, 80%視野A, 100%視野A-
像面湾曲:A-,  迷光: A, 重量705g
総合:★★★

 重量などのためにハンドリングがイマイチな点を除くと、大変素晴らしい星像を結ぶ第一級のアイピースだと断言できます。
 問題のハンドリングは、重量が嵩むという点のほかに、SE200N とSkyWatcherコマコレクターの組み合わせでは普通には合焦しないという二つの点です。後者については、コマコレクターのアイピースを挿しこむ2インチスリーブを外し、そこの48mmネジに直接XWA20mmをねじ込むということをすれば回避できます(※但し、ネジ部の強度から言ってリスクがある方法ですので、お勧めはできません)。

 肝心の星像は、コマコレクター無しの状態ですと中心から半分くらいの視野の範囲ではかなりの良像を結びます。この範囲は Nagler 13mmの視野周辺と同等の範囲を見ていますから、倍率が若干低いとはいえ相当に優秀な星像だと言えます。
 視野の半分より外側の範囲では、主鏡のコマ収差と像面湾曲の影響が見えてきますが、それでも破綻はしません。アイピース本体の収差はほぼ取り切れているのではないかと思います。アイピース本体の像面はほぼフラットな印象ですが、そのために主鏡の像面湾曲を見ているイメージです。この点は、Naglerが短焦点反射向けの「眼側に向かって僅かに凸」の像面ではないかとも感じられるような特性であるのに対して、XWAはアイピース本体がフラットとなるところをめざしたように感じられます。

XWA20mmを取り付けた鏡筒で空を臨む
コマコレクターを頑張って取り付けると、100°の見掛け視界全体にわたって像面が素晴らしくフラットとなり、全面にピントを結びます。素晴らしい視界となりました。Nagler 13mmの1°強の視野周辺での像が、100° 20mmの2°の周辺視野でも近い状態で再現しているイメージです。(詳しく観察すると僅かに収差が見えますが、これが主鏡によるものなのか、アイピースによるものなのかは区別できませんでした)
 Ethosとの比較は出来ておりませんが、このレベルの周辺像であれば、本質的に素晴らしい星像が得られていると言って良いと思います。

 1000mmの鏡筒で2°の視野として二重星団やM35/36/37/38などの多くの散開星団を眺めましたが、微光星がシャープで、大変素晴らしい眺めでした。XWA 20mmは、アイピースとして相当に高いレベルにあると言えると思います。特に、コマ収差の少ない屈折望遠鏡やFの少し大きめの望遠鏡であれば、気になる収差など無くなってしまうのではないかと想像されたのであります。
 UWAもなかなか素晴らしいアイピースでありましたが、XWAは更に進歩していることが確認できました。

 なお、見え方だけを言えば★4つでいいと思ったのですが、いかんせん重量とコマコレのハンドリングの問題もあり、ここを減点対象としました。

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 こうなってくると、Ethosの像面湾曲がNaglerのように短焦点反射を意識した格好になっているのかどうか、は、興味の湧くところです。

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コメント

ともぞう さんの投稿…
ラムダさん、今年1年お世話になりました。ありがとうございました。
来年も、よろしくお願いいたします。
Lambda さんの投稿…
ともぞうさん、コメントありがとうございます!

返信が遅くなり、年を越してしまいました。

改めまして、新年あけましておめでとうございます。
こちらこそ、今年もよろしくお願いいたします。

※私も出撃機会のない中で、しかも怠惰な出不精生活を送っておりますが、今年は少しくらいは遠征してみたいと思っております。
A さんの投稿…
賞月観星UWA20mmはバレルに48mmネジが切ってあり、この部分に48mmクローズアップレンズを付けると25mm位の焦点距離になります。
当方はマルミのNO4を使っていますが製造中止になっていますので中古を探すかケンコーのNO3を使うしかありません48mmはアクロマートが無くシングルレンズしかありませんが中心像も周辺像もほとんど崩れません。
30mm以上の広視界アイピースだとケラレが出ますので、このクラスのアイピースでクローズアップレンズレデューサーも良い感じです。
Lambda さんの投稿…
Aさん、コメントありがとうございます!

クローズアップレンズのフラットナーとしての作用はなかなか素晴らしいですね。
私も、撮影用のフラットナーとして Kenko AC No.4 を使用したことがあります。

ご指摘のように、AC は49mmになっていて 48mm径が無いのが苦しいところです。

マルミのシングルクローズアップには48mmがあるのですね。
XWAシリーズにはフラットナーが内蔵されていてアイピース側の像面湾曲はかなり補正されていますが、対物側の補正がもう一息あると良いようにも感じていましたので、クローズアップレンズはよい方法かもしれません。

レデューサとしての作用も付加されて、大変広大な視界を確保できそうです。