安物鏡筒の標準クレイフォード式フォーカサーはなかなか剛性も高くてお気に入りなのですが、「ピント合わせをしてもクランプするとズレてしまう」クランプネジがどうにもいただけませんでした。
今回はこのクランプネジの対策です。
ピント合わせのあとにしっかりクランプしてもズレないでいて欲しいなあ、と思うわけです。(高級な接眼部ではそういう現象は起きないのかもしれませんが)
世の中にあるクランピングスクリューではやや懸念が残りましたので、ネジを特注したのでありました。今回は、ネジの注文先と合わせて紹介したいと思います。
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(※現在、世の中では疫病が流行し、彗星すらも撃墜されるような世相となっております。当ブログではささやかな抵抗として、ローテクを駆使したマスク再生法を開発しましたので、記事の末尾で紹介したいと思います。)
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■ ピントズレの原因と課題
ネジを締めつけるときにピントがズレるのは、ネジの回転がネジ先端の接触部の円周を介して伝わってドローチューブを動かしてしまうからです。ネジの先端というのは拡大して見ると円形ですから、どうしても有限の半径を持っていて、回転に伴って接触している相手を接触点の接線方向に動かしてしまうのです。
クランプネジについては、機械加工で対象物を加工するための「クランピングスクリュー」というものも世の中にはあるのですが、先端が金属球だったり、ネジに球体が固定されていたりするのが難点です。
先端が金属球の場合、懸念はドローチューブ側を凹ませてしまうことです。クレイフォード式の場合、このクランプ位置がフォーカサーの軸とも接触したりするため、ヘコミを作るのはちょっと気が引けます。
また、ヘコミを作ってしまうと、微妙なピント調整後もクランプで結局ヘコミにならうように動かしてしまうことにもなり、いただけない気がするのです。
先端がネジに固定されていると、接触部がいくら球面でも、押圧による変形のために有限の接触半径を持ちますから、従来のねじと変わらないことになってしまいます。特に球体がプラスチックの場合は変形量が大きいため、全く無視できないのです。
そういうわけで、市販のクランピングスクリューでは、「先端がプラスチックで」「フリーに回転する」というものが見つけられず、特注することになったのでした。
■ 解決をもたらすクランプネジ
特注したのは、「中心孔付きネジ」でした。この中心孔に自作のプラスチックピンを挿入し、ネジは回転してもピンは回転しないようにすればよい、というわけです。
SE200NについてくるクレイフォードフォーカサーのクランプネジはM5ですから、これの中心にφ3.05の孔をあけ、中心にφ3弱のピンが入るようにしました。ピンは十分に細くしておく必要があります。
回転力の伝達を殺すためにはこれでは不十分で、φ3.0の鋼球を2個落とし込んでからプラピンを入れているのがミソです。1個だけでは、鋼球がネジともプラピンとも点接触にはならず回転を伝えてしまうのですが、2個の球同士はどうやっても中心点でしか接触できないので、回転力が伝わるのを防げるというわけです。
■ 工作と試作結果
注意:下記はあくまでも体験談で、結果を保証するものではありません。
ネジは、次のような仕様で製作しました。(微動フォーカサーとの干渉を避ける都合で長めの寸法です)
・材質SUS303 or 304 or 316
・M5 並目ネジ、ネジ部長さ20。
・ストレート部長さ13。
・中心孔φ3.05±0.02、深さ15。(孔端部はテーパー可)
・ツマミ部 φ11.5、アヤメローレット、長さ8。
製作は、大変丁寧に応対してくれて望遠鏡用品製作のご経験もある田村工機様にお願いしました。見積もりの段階から親切に対応してくれた上に、大変満足のいく仕上がりです。
(上記のネジは、送料・税込みで1本約五千円ほどでした。エコノミーとは言えないかもしれませんが、ワンオフのものとしては悪くない価格と思います。)
プラスチックピンは、φ3の丸棒から削り出しました(自作)。ネジを締め込んでいくとピンが変形して太るため、それなりに細く作っておく必要があります(現物合わせ)。
私は、電動ドリルの先端に丸棒を咥えさせ、これを小さいルーターで削って形状を作り込みました。先端は、球面ぽく作りましたが、現実には締め込むと平らに変形してしまいます。
結果として、動画のようなクランプネジが仕上がりました。ご覧のように、指に強く押し付けてネジを回してもプラスチックピンは全く回転しないわけです。
※このクランプネジは、個人的な事情により空にカメラを向けられる時間が著しく制限されてしまい、未だ十分に試せてはおりません(軽く試した感じでは良好です)。
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■ オマケ:マスクの再生法
※下記の方法は、「不快感無くマスクを再利用する」という観点で試みた方法です。マスクの本来の機能が保たれているかどうかは、極めて高い解像度の顕微鏡などで観察する必要があり、十分な確認は出来ておりません。
疫病が流行り、彗星(ATLAS彗星, C/2019 Y4)すらも撃墜(?)されてしまうこの世相にあっても、私自身は2020.1の段階で対応準備を完了しており、物資の不足とは全く無縁の生活を送っております。
世間では勘違いされているようですが、肺炎とは、食欲や排便が増進される病気ではありません。ですから食料や紙の消費量が増える理由はなく、短・中期的には単純に在庫の所在地の問題にすぎません。大勢が欲しがるタイミングの前に入手しておけばいいだけの話です。
しかし、マスクだけは実需要が著しく増える話ですから、マスクの不足はしばらく続く見通しで、対策が必要です。
人類史に永らく大愚人として刻まれるwhoとかいうどこの馬の骨だかわからない誰かによれば、「マスクには効果が無い」と力説されております。しかしながら、同じ人物が同じ会見の中で述べたセリフによれば「医療機関でのマスク不足が深刻」と効果の大きさをゲロっており、マスクは蔑ろにできないようです。大愚人の話は、背景があからさまなので考える手間が省けます。
ウィルスが飛散する形態や、感染後に増殖するのに要する時間、抗体を獲得するまでの時間、そして感染時点で濃厚に浴びた若い医師や夜の店御用達の御仁らの結果などを総合的に考えると、感染時点でもらってくるウィルスの個数を抑制することには相当の意味がありそうにも思えます。
そういうわけで、持てる知恵とローテクとを動員して不織布マスクの再生法を開発したわけであります。使用したマスクは、自分の口から出る汚れが付着しますから、洗わないとばっちいです。
再生(というか洗浄)手順は簡単です。
・水と手洗い用のせっけんでマスクを洗う。
(私は主鏡用の泡せっけん)
・水でよくすすぐ。
(軽く絞る→すすぐ、を繰り返す)
・軽く絞る。
・湿らせたハンカチで挟んでアイロンをかける。
(アイロンで最後まで乾かしてはいけない)
・干す。
この方法のミソは、アイロンによってケバ立ちを抑えつつ、水分によって常圧では100℃が保たれ、マスクを溶かしたり劣化させる心配が無いということです。
私はこの方法で、使い捨てマスクを少なくとも4回は再生して使えています(※再生可能回数は機種によって異なると思います)。
こうしてマスクを再生して使うということは、マスクの生産能力が何倍にも増えるのと等価ですから、弊ブログ読者の1%が実践したとして、人類の生存に1ppb程度のインパクトは与えられるのではないか、という試算であります。
今回のコロナ騒動で人類が滅亡することはありませんし、個々人が死亡する心配はあまりないように思いますが、戦争や原爆投下程度のインパクトはあり、社会的衝撃はWW2以来の甚大さと思われます。
宇宙のサイズ感からすると取るに足らない出来事とはいえ、なるべく多くの方が影響を免れることを強く願うとともに、やっぱり大彗星に出現してほしいということもついでに祈っておきたいと思う次第です。
新しいクランプネジ (見た目には分かりません) |
ピント合わせのあとにしっかりクランプしてもズレないでいて欲しいなあ、と思うわけです。(高級な接眼部ではそういう現象は起きないのかもしれませんが)
世の中にあるクランピングスクリューではやや懸念が残りましたので、ネジを特注したのでありました。今回は、ネジの注文先と合わせて紹介したいと思います。
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(※現在、世の中では疫病が流行し、彗星すらも撃墜されるような世相となっております。当ブログではささやかな抵抗として、ローテクを駆使したマスク再生法を開発しましたので、記事の末尾で紹介したいと思います。)
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■ ピントズレの原因と課題
ネジを締めつけるときにピントがズレるのは、ネジの回転がネジ先端の接触部の円周を介して伝わってドローチューブを動かしてしまうからです。ネジの先端というのは拡大して見ると円形ですから、どうしても有限の半径を持っていて、回転に伴って接触している相手を接触点の接線方向に動かしてしまうのです。
クランプネジについては、機械加工で対象物を加工するための「クランピングスクリュー」というものも世の中にはあるのですが、先端が金属球だったり、ネジに球体が固定されていたりするのが難点です。
先端が金属球の場合、懸念はドローチューブ側を凹ませてしまうことです。クレイフォード式の場合、このクランプ位置がフォーカサーの軸とも接触したりするため、ヘコミを作るのはちょっと気が引けます。
また、ヘコミを作ってしまうと、微妙なピント調整後もクランプで結局ヘコミにならうように動かしてしまうことにもなり、いただけない気がするのです。
先端がネジに固定されていると、接触部がいくら球面でも、押圧による変形のために有限の接触半径を持ちますから、従来のねじと変わらないことになってしまいます。特に球体がプラスチックの場合は変形量が大きいため、全く無視できないのです。
そういうわけで、市販のクランピングスクリューでは、「先端がプラスチックで」「フリーに回転する」というものが見つけられず、特注することになったのでした。
回転力を伝えないクランプネジ (左からプラスチックピン、鋼球、中心孔付きネジ) |
■ 解決をもたらすクランプネジ
特注したのは、「中心孔付きネジ」でした。この中心孔に自作のプラスチックピンを挿入し、ネジは回転してもピンは回転しないようにすればよい、というわけです。
SE200NについてくるクレイフォードフォーカサーのクランプネジはM5ですから、これの中心にφ3.05の孔をあけ、中心にφ3弱のピンが入るようにしました。ピンは十分に細くしておく必要があります。
回転力の伝達を殺すためにはこれでは不十分で、φ3.0の鋼球を2個落とし込んでからプラピンを入れているのがミソです。1個だけでは、鋼球がネジともプラピンとも点接触にはならず回転を伝えてしまうのですが、2個の球同士はどうやっても中心点でしか接触できないので、回転力が伝わるのを防げるというわけです。
■ 工作と試作結果
注意:下記はあくまでも体験談で、結果を保証するものではありません。
中心孔付きM5ボルト |
・材質SUS303 or 304 or 316
・M5 並目ネジ、ネジ部長さ20。
・ストレート部長さ13。
・中心孔φ3.05±0.02、深さ15。(孔端部はテーパー可)
・ツマミ部 φ11.5、アヤメローレット、長さ8。
製作は、大変丁寧に応対してくれて望遠鏡用品製作のご経験もある田村工機様にお願いしました。見積もりの段階から親切に対応してくれた上に、大変満足のいく仕上がりです。
(上記のネジは、送料・税込みで1本約五千円ほどでした。エコノミーとは言えないかもしれませんが、ワンオフのものとしては悪くない価格と思います。)
プラスチックピン (先端は球面風です) |
私は、電動ドリルの先端に丸棒を咥えさせ、これを小さいルーターで削って形状を作り込みました。先端は、球面ぽく作りましたが、現実には締め込むと平らに変形してしまいます。
結果として、動画のようなクランプネジが仕上がりました。ご覧のように、指に強く押し付けてネジを回してもプラスチックピンは全く回転しないわけです。
※このクランプネジは、個人的な事情により空にカメラを向けられる時間が著しく制限されてしまい、未だ十分に試せてはおりません(軽く試した感じでは良好です)。
製作した特注クランプネジ (再生されない場合はこちら) (先端のプラピンが回転しないことにご注目ください) |
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■ オマケ:マスクの再生法
※下記の方法は、「不快感無くマスクを再利用する」という観点で試みた方法です。マスクの本来の機能が保たれているかどうかは、極めて高い解像度の顕微鏡などで観察する必要があり、十分な確認は出来ておりません。
疫病が流行り、彗星(ATLAS彗星, C/2019 Y4)すらも撃墜(?)されてしまうこの世相にあっても、私自身は2020.1の段階で対応準備を完了しており、物資の不足とは全く無縁の生活を送っております。
世間では勘違いされているようですが、肺炎とは、食欲や排便が増進される病気ではありません。ですから食料や紙の消費量が増える理由はなく、短・中期的には単純に在庫の所在地の問題にすぎません。大勢が欲しがるタイミングの前に入手しておけばいいだけの話です。
しかし、マスクだけは実需要が著しく増える話ですから、マスクの不足はしばらく続く見通しで、対策が必要です。
人類史に永らく大愚人として刻まれるwhoとかいうどこの馬の骨だかわからない誰かによれば、「マスクには効果が無い」と力説されております。しかしながら、同じ人物が同じ会見の中で述べたセリフによれば「医療機関でのマスク不足が深刻」と効果の大きさをゲロっており、マスクは蔑ろにできないようです。大愚人の話は、背景があからさまなので考える手間が省けます。
ウィルスが飛散する形態や、感染後に増殖するのに要する時間、抗体を獲得するまでの時間、そして感染時点で濃厚に浴びた若い医師や夜の店御用達の御仁らの結果などを総合的に考えると、感染時点でもらってくるウィルスの個数を抑制することには相当の意味がありそうにも思えます。
そういうわけで、持てる知恵とローテクとを動員して不織布マスクの再生法を開発したわけであります。使用したマスクは、自分の口から出る汚れが付着しますから、洗わないとばっちいです。
再生(というか洗浄)手順は簡単です。
・水と手洗い用のせっけんでマスクを洗う。
(私は主鏡用の泡せっけん)
・水でよくすすぐ。
(軽く絞る→すすぐ、を繰り返す)
・軽く絞る。
・湿らせたハンカチで挟んでアイロンをかける。
(アイロンで最後まで乾かしてはいけない)
・干す。
この方法のミソは、アイロンによってケバ立ちを抑えつつ、水分によって常圧では100℃が保たれ、マスクを溶かしたり劣化させる心配が無いということです。
私はこの方法で、使い捨てマスクを少なくとも4回は再生して使えています(※再生可能回数は機種によって異なると思います)。
こうしてマスクを再生して使うということは、マスクの生産能力が何倍にも増えるのと等価ですから、弊ブログ読者の1%が実践したとして、人類の生存に1ppb程度のインパクトは与えられるのではないか、という試算であります。
今回のコロナ騒動で人類が滅亡することはありませんし、個々人が死亡する心配はあまりないように思いますが、戦争や原爆投下程度のインパクトはあり、社会的衝撃はWW2以来の甚大さと思われます。
宇宙のサイズ感からすると取るに足らない出来事とはいえ、なるべく多くの方が影響を免れることを強く願うとともに、やっぱり大彗星に出現してほしいということもついでに祈っておきたいと思う次第です。
コメント
以上、星と関係ない話でスミマセン。
私も、2月以降はマスクを入手出来ていません(というか、混雑する店にはあまり行ってません)。
不織布は、洗うとケバ立ってきて着け心地が低下しますし、洗わないと汚いということで、試行錯誤しました。
アルコール消毒液もB2Bでは潤沢に流通しているものの、巷では品薄になっているようですね。
焼酎はいいアイデアだと思います。特に、「味わいの少ない」安物ペットボトル入り焼酎が良さそうにも思います。個人的にはAlc. 40 vol%くらいの安物ウォッカも不純物が少なくてよさそうだな、とは思っております。重量パーセントでは半分くらいはエタノールじゃないかと思います。
90%超の「スピリタス」も良いのですが、そこまでこだわらなくてもいいと思います(既に品薄だったりして)。