AliExpressはいけませんね。お買い得感に誘われるがままに、ついつい無駄遣いをしてしまいます。その金でちゃんとしたの買えよ、と、自分に言い聞かせているのですが、ついつい手が伸びてしまうのでした。
で、今回は、3200円ほどでゲットした「TMB Planetary II 3.2mm」アイピースのクローンというか、ニセモノです。
このTMBプラネタリーIIは日本でもよく見かける製品で、高倍率・ハイアイ・広視界の惑星用アイピースということでその性能はずっと気になっていました。
クローンとはいっても、なかなかハイパフォーマンスであるとの情報もあり、期待は膨らみます。
■ TMB PlanetaryII
TMB社は、Thomas M.Back氏が立ち上げたアイピースメーカーで、Super Monocentric をはじめとして極めて優秀な、しかもオリジナリティのあるアイピースを世に送り出したことで有名になりました。
Planetary IIは、その中でもスマイスレンズとの組み合わせによってハイアイを実現した2.5mmの短焦点からラインナップがある惑星用アイピースで、覗きやすく解像度も高いことが売りになっています。スーパーモノセントリックが視野や覗きやすさを犠牲にして中心像を追及したのに対して、こちらはハイアイや広視界といった覗きやすさも併せて追及したという位置づけになっています。
このアイピースは、私が参考にしている文献でも大変高い評価が与えられている銘品です。
しかしながら、Thomas Back氏は2007年に50歳の若さで急逝してしまいます。Thomas Back氏亡きあとのTMBブランドはあまりしっかりとした管理がなされた様子がなく(少なくとも消費者からは見えず)、このためかクローン品が多く登場したようです。
特にこの Planetary IIアイピースはクローン品が多いようで、実に様々な所でみかけることができます。これらがきちんとライセンスされたものなのか、製造が管理されているものなのかは不明です。
そして現在新品で手に入れられる TMB Planetary II アイピースは、基本的に全てクローンだと思われます。
ちなみに、掲示板情報によれば偽物/本物の見極めは次のようになっています(リンク先の掲示板にそれぞれの外観写真があります)。
ニセモノ:
・レンズのマークのTMB OPTICAL ロゴが刻印されている。
・焦点距離の表示が大文字の "MM" 。
・内側の仕上げが外側と同じ、光沢梨地の黒。
・スリーブの抜け落ち溝がテーパー。
ホンモノ:
・"TMB(R) Optical Planetary II"と大きい刻印。
・小文字表記の焦点距離 "mm"。
・内側の仕上げは艶消し黒、外側は光沢黒。
・スリーブの抜け落ちが矩形溝。
2019年現在、日本でみかけるTMBとかTMB設計だとかはほぼ全てがニセモノであるように思えますね。(ホンモノはこちらの写真ご参照,良く見えます)
■ クローンTMBの実力やいかに
私が入手したTMBは写真の通り紛れもない偽物ですが、見た目は大変格好良く性能を期待させる外観です。質感も十分で、非常に高級感があってパチモンにはとても見えない風格があります。ひょっとしたら、私が所有しているアイピースの中で一番カッコいいかも。。
このアイピースを入手した正月の頃、西に傾いて小さくなった火星でファーストライトです。いざ、火星を視野に導入してみると…、
な、なんと、見えたのは怪しく蠢く火星の環でした。たしかに火星本体は3.2mmなりの倍率の大きさで見えているのですが、模様がどうとかいう以前に、ギャラクシーな形の輪っかがあるんです。
そんなはずはない!西低空のシンチレーションの仕業か?と、思って PENTAXのオルソに付け替えてみると、これまた驚いたことにスッキリとした小さい火星に表面の模様が見える。素晴らしい。
そして再び TMBに付け替えると、虚しい環がぼんやりと見えるだけだったのでした。
完全に全く酷いパチモンだな、こりゃ。というのがファーストインプレッションです。
どうにもこうにも、迷光が激しすぎるのが原因であるようなのですが、ここまで酷いのに出くわしたことはありません。
激安262円のスペシャルラムスデンにはるかに劣る見え味です(いやまあ、SR4はペンタと同じくらいよく見えるんですが)。あれなんかプラスチックの光沢黒むき出しなんだけど。。
筒の内側の艶消しをやると良いという海外掲示板情報もあって試してみましたが、効果はありませんでした。
迷光の様子から察するに、構成レンズ群の内側(?)で発生しているようにも見えます。リング状に見えるということは、レンズ界面での反射やレンズ側面(コバ)などでの迷光が考えられるからです。
■1群5枚(!!)のレンズ構成
訂正:再分解の結果、スマイス+2群3枚の構成だったことが分かりました。
レンズの貼り合わせ不良化と思って油を挿そうと思って再分解して発覚しました。
ここまでダメダメだと開き直るしかありません。せめてその身を散らして人柱レポートの露にくらいはなってもらおうということで、分解です。
このTMB Planetary II 3.2mm は、スマイスレンズ(バーロー)の後ろにレンズ群が構成された短焦点アイピースで、気になるのはこの後ろのレンズ群です。
幸い、このアイピースは比較的容易に分解してレンズを取り出すことができました。取り出してみると、なんといくつものレンズが重なっている1群のレンズ構成になっていて、数えてみるとなんとも5枚(!)も入っていたのです。(誤りです)
それぞれがかなりの曲率を持ったレンズになっていて、それがピッタリ密着した1群5枚(!!)(誤りです)。実際にはスマイスレンズとの組み合わせで2群の構成ではありますが、かなりのオリジナル構成です。そういえば、箱にはなぜか Plosslと書いてありましたが、プレスルなどとは全く異なるレンズ構成です。
レンズの一部にはコバ塗りが施してあり、迷光に全く気を使ってないわけではないようです。(全てが塗られているわけでもないのは謎です)
※ここは完全にLambdaの勘違いで、中間に入って貼り付いていた物体はレンズではなくスペーサーでした。油を挿そうと思って剥がしてみたら筒でした。。。油を挿すべきところはなく、このアイピースは廃棄かもorz... (2019.06.29記)
■ 結論はまだ早いか!?
このレンズ構成を見て私は思ったのでした。「コイツの組み付けには相当な慎重さが要るな」と。
1群5枚のレンズはバルサムで張り合わされてるわけでもないバラのレンズで、つまりここに僅かな隙間があったりするとそこで空気との界面が生じてしまうからです。
Thomas Back氏は、このアイピースを設計する時に、「ガラスと空気の界面を最小限にする」ことが頭にあったと思います。こうした界面での光の反射はコントラストを低下させるからです。
惑星用アイピースとしてコントラストを求めた結果辿りついた「一群」構成だったのでしょう。
...そう考えると、中国で生産されたこのパチモンアイピースは、レンズ設計や鏡筒金型は機械が設計通りに加工するにしても、組み立てが怪しくなっていた可能性はけっこうあります。固定リングの締め具合や芯ズレで、僅かに隙間が空いていた可能性が否定できないわけです。
そしてレンズ間に隙間が生じていたとすると、火星の環も説明がきます。
そういう訳で、このアイピースはまたの機会を与えようと思うのであります。…夏くらいかな。。。
で、今回は、3200円ほどでゲットした「TMB Planetary II 3.2mm」アイピースのクローンというか、ニセモノです。
このTMBプラネタリーIIは日本でもよく見かける製品で、高倍率・ハイアイ・広視界の惑星用アイピースということでその性能はずっと気になっていました。
クローンとはいっても、なかなかハイパフォーマンスであるとの情報もあり、期待は膨らみます。
■ TMB PlanetaryII
TMB社は、Thomas M.Back氏が立ち上げたアイピースメーカーで、Super Monocentric をはじめとして極めて優秀な、しかもオリジナリティのあるアイピースを世に送り出したことで有名になりました。
Planetary IIは、その中でもスマイスレンズとの組み合わせによってハイアイを実現した2.5mmの短焦点からラインナップがある惑星用アイピースで、覗きやすく解像度も高いことが売りになっています。スーパーモノセントリックが視野や覗きやすさを犠牲にして中心像を追及したのに対して、こちらはハイアイや広視界といった覗きやすさも併せて追及したという位置づけになっています。
このアイピースは、私が参考にしている文献でも大変高い評価が与えられている銘品です。
しかしながら、Thomas Back氏は2007年に50歳の若さで急逝してしまいます。Thomas Back氏亡きあとのTMBブランドはあまりしっかりとした管理がなされた様子がなく(少なくとも消費者からは見えず)、このためかクローン品が多く登場したようです。
特にこの Planetary IIアイピースはクローン品が多いようで、実に様々な所でみかけることができます。これらがきちんとライセンスされたものなのか、製造が管理されているものなのかは不明です。
そして現在新品で手に入れられる TMB Planetary II アイピースは、基本的に全てクローンだと思われます。
偽物TMB PlanetaryII 3.2MM |
ニセモノ:
・レンズのマークのTMB OPTICAL ロゴが刻印されている。
・焦点距離の表示が大文字の "MM" 。
・内側の仕上げが外側と同じ、光沢梨地の黒。
・スリーブの抜け落ち溝がテーパー。
ホンモノ:
・"TMB(R) Optical Planetary II"と大きい刻印。
・小文字表記の焦点距離 "mm"。
・内側の仕上げは艶消し黒、外側は光沢黒。
・スリーブの抜け落ちが矩形溝。
2019年現在、日本でみかけるTMBとかTMB設計だとかはほぼ全てがニセモノであるように思えますね。(ホンモノはこちらの写真ご参照,良く見えます)
■ クローンTMBの実力やいかに
私が入手したTMBは写真の通り紛れもない偽物ですが、見た目は大変格好良く性能を期待させる外観です。質感も十分で、非常に高級感があってパチモンにはとても見えない風格があります。ひょっとしたら、私が所有しているアイピースの中で一番カッコいいかも。。
このアイピースを入手した正月の頃、西に傾いて小さくなった火星でファーストライトです。いざ、火星を視野に導入してみると…、
な、なんと、見えたのは怪しく蠢く火星の環でした。たしかに火星本体は3.2mmなりの倍率の大きさで見えているのですが、模様がどうとかいう以前に、ギャラクシーな形の輪っかがあるんです。
そんなはずはない!西低空のシンチレーションの仕業か?と、思って PENTAXのオルソに付け替えてみると、これまた驚いたことにスッキリとした小さい火星に表面の模様が見える。素晴らしい。
そして再び TMBに付け替えると、虚しい環がぼんやりと見えるだけだったのでした。
完全に全く酷いパチモンだな、こりゃ。というのがファーストインプレッションです。
どうにもこうにも、迷光が激しすぎるのが原因であるようなのですが、ここまで酷いのに出くわしたことはありません。
激安262円のスペシャルラムスデンにはるかに劣る見え味です(いやまあ、SR4はペンタと同じくらいよく見えるんですが)。あれなんかプラスチックの光沢黒むき出しなんだけど。。
筒の内側の艶消しをやると良いという海外掲示板情報もあって試してみましたが、効果はありませんでした。
迷光の様子から察するに、構成レンズ群の内側(?)で発生しているようにも見えます。リング状に見えるということは、レンズ界面での反射やレンズ側面(コバ)などでの迷光が考えられるからです。
■
訂正:再分解の結果、スマイス+2群3枚の構成だったことが分かりました。
レンズの貼り合わせ不良化と思って油を挿そうと思って再分解して発覚しました。
ここまでダメダメだと開き直るしかありません。せめてその身を散らして人柱レポートの露にくらいはなってもらおうということで、分解です。
TMB Planetary II のアイ側1群5枚レンズ |
幸い、このアイピースは比較的容易に分解してレンズを取り出すことができました。取り出してみると、なんといくつものレンズが重なっている1群のレンズ構成になっていて、数えてみるとなんとも5枚(!)も入っていたのです。(誤りです)
それぞれがかなりの曲率を持ったレンズになっていて、それがピッタリ密着した1群5枚(!!)(誤りです)。実際にはスマイスレンズとの組み合わせで2群の構成ではありますが、かなりのオリジナル構成です。そういえば、箱にはなぜか Plosslと書いてありましたが、プレスルなどとは全く異なるレンズ構成です。
レンズの一部にはコバ塗りが施してあり、迷光に全く気を使ってないわけではないようです。(全てが塗られているわけでもないのは謎です)
※ここは完全にLambdaの勘違いで、中間に入って貼り付いていた物体はレンズではなくスペーサーでした。油を挿そうと思って剥がしてみたら筒でした。。。油を挿すべきところはなく、このアイピースは廃棄かもorz... (2019.06.29記)
■ 結論はまだ早いか!?
このレンズ構成を見て私は思ったのでした。「コイツの組み付けには相当な慎重さが要るな」と。
1群5枚のレンズはバルサムで張り合わされてるわけでもないバラのレンズで、つまりここに僅かな隙間があったりするとそこで空気との界面が生じてしまうからです。
Thomas Back氏は、このアイピースを設計する時に、「ガラスと空気の界面を最小限にする」ことが頭にあったと思います。こうした界面での光の反射はコントラストを低下させるからです。
惑星用アイピースとしてコントラストを求めた結果辿りついた「一群」構成だったのでしょう。
...そう考えると、中国で生産されたこのパチモンアイピースは、レンズ設計や鏡筒金型は機械が設計通りに加工するにしても、組み立てが怪しくなっていた可能性はけっこうあります。固定リングの締め具合や芯ズレで、僅かに隙間が空いていた可能性が否定できないわけです。
そしてレンズ間に隙間が生じていたとすると、火星の環も説明がきます。
そういう訳で、このアイピースはまたの機会を与えようと思うのであります。…夏くらいかな。。。
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