AZ-GTiは、水平軸の小改良で抜群のフリーダム感を得て一時の満足感に浸っておりました。が、しかし、水平がスムースになるともう一方の垂直軸の動きについても「もっとスムースに!」という気分になってくるのが人情というものです。結局、再び分解してしまいました。
このAZ-GTi、もともと水平軸がかなり(フリーストップで動かそうとするとハーフピラーとの接続ネジが緩むほど)動きが渋かったので、相対的に垂直軸にはさほど問題があるようには認識していませんでした。
しかし、水平軸が完全にスルスルに動くようになった今、クランプフリーでの垂直軸の微妙な動き出しの引っ掛かりなどが気になるようになってしまいました。たぶん、これが解決できると300倍強での粗動(手動)での追尾の容易さに磨きがかかるだろうと思うわけです。
結論を先に言ってしまいますと、垂直軸は水平軸以上に意味不明度の高い設計になっていて、たまたま悪影響が見えにくくなっていただけでした。今回の開腹手術では状況を確認して注油するだけに留め、再び閉じたのでありました(水平軸と同様の対策はたぶん有効ですが、垂直軸にはリスクも若干あるため)。
※当記事も、分解や改造を推奨するものではありません。あくまでも、分解記とその感想としてご覧ください。特に垂直軸の分解は内部を破損させてしまうリスクが大きめです。
■ 垂直軸の分解
クランプ機構の様子などから、垂直軸は水平軸よりシンプルで合理的なのだろうと踏んでいましたが、誤りでした。Skywatcher社のメカ音痴ぶりはかなりレベルが高いと考えざるを得ません。ある意味これで動いているのは凄いという解釈もできます。
図は、赤緯軸の構造模式図です。左側に鏡筒が載るアリミゾがある形で図を描いてます。
垂直軸に用いられているベアリングはスラストベアリング1個だけです。そしてクランプとウォームホイールの間に挟まれたこの唯一のベアリングは、いかなる場面でも作用しないタダの肥やしになっています。
粗動時にはクランプが緩んでいますからベアリングが支える荷重はほぼゼロで、つまりローラーベアリングなどなくても摩擦は発生しません。
クランプを締めてギヤによる微動を行うときには、クランプとギヤは一体になっていますから、間に挟まっているベアリングが作動することはありません。
ここにコストをかけたベアリングを使用する意味は皆無です。
では、どこで鏡筒の荷重を支えているかというと、それは筐体の穴と垂直軸との摺動です。ここで垂直荷重を支えています(だから本当はここにラジアルベアリングを入れるべき)。
そして、プラリングと筐体の間や、ゴムリングとギヤや筐体の間の摺動面で、搭載した鏡筒のモーメント荷重を支えています。
これらの摺動面は、動きの渋さを作り出す主要部分と言えますが、水平軸ほどの荷重を摺動面が受け持つわけではないので問題がさほど大きくは感じられなかったものと考えられます。
■ 対症療法
問題は大きくないのですが、本格的に改良しようと思うと難敵です。摺動面がいくつもあり、軸を回してみると動きの渋さが出る要因が一か所ではなさそうな感触だから、です。患部が多岐にわたってしまっているのです。
そういうわけで、差し当たっては注油という対症療法で済ませることにしました。注油ポイントは2か所ありますが、一つは垂直軸と筐体の隙間で、もう一つは水平軸のときと同様に「ゴムリング」です。
後者のゴムリングは、たぶん硬めのプラリングに換えた方が良いのですが、垂直軸の患部が多い構造に絶望して、注油だけで済ませることにしました。ここへの注油は水平軸とは違って手加減が要るので、要注意です。垂直軸はバランスの崩れで作用するモーメントが大きくなりがちだからです。私は、薄く「グリースメイト」を塗ることに留めました(もっと塗ってもよかったかも)。
■ 結果
結果的には、粗動のスムースさは若干改善しましたが、やはり引っ掛かりはわずかに残っているようです。とはいえ、普通の使用ではほぼ不満のないレベルのフリーダム感のように思われます。
令和式三脚架台、水平軸の剛性対策と併せて指先だけで鏡筒をスルスル動かして止められるこの状態で、フリーダムな観望を楽しんでみたいと思います。
このAZ-GTi、もともと水平軸がかなり(フリーストップで動かそうとするとハーフピラーとの接続ネジが緩むほど)動きが渋かったので、相対的に垂直軸にはさほど問題があるようには認識していませんでした。
しかし、水平軸が完全にスルスルに動くようになった今、クランプフリーでの垂直軸の微妙な動き出しの引っ掛かりなどが気になるようになってしまいました。たぶん、これが解決できると300倍強での粗動(手動)での追尾の容易さに磨きがかかるだろうと思うわけです。
結論を先に言ってしまいますと、垂直軸は水平軸以上に意味不明度の高い設計になっていて、たまたま悪影響が見えにくくなっていただけでした。今回の開腹手術では状況を確認して注油するだけに留め、再び閉じたのでありました(水平軸と同様の対策はたぶん有効ですが、垂直軸にはリスクも若干あるため)。
分解中の AZ-GTiの垂直軸 |
アリミゾ台座の取り外し |
※当記事も、分解や改造を推奨するものではありません。あくまでも、分解記とその感想としてご覧ください。特に垂直軸の分解は内部を破損させてしまうリスクが大きめです。
■ 垂直軸の分解
クランプ機構の様子などから、垂直軸は水平軸よりシンプルで合理的なのだろうと踏んでいましたが、誤りでした。Skywatcher社のメカ音痴ぶりはかなりレベルが高いと考えざるを得ません。ある意味これで動いているのは凄いという解釈もできます。
AZ-GTi 経緯台の断面模式図 |
垂直軸に用いられているベアリングはスラストベアリング1個だけです。そしてクランプとウォームホイールの間に挟まれたこの唯一のベアリングは、いかなる場面でも作用しないタダの肥やしになっています。
粗動時にはクランプが緩んでいますからベアリングが支える荷重はほぼゼロで、つまりローラーベアリングなどなくても摩擦は発生しません。
クランプを締めてギヤによる微動を行うときには、クランプとギヤは一体になっていますから、間に挟まっているベアリングが作動することはありません。
ここにコストをかけたベアリングを使用する意味は皆無です。
では、どこで鏡筒の荷重を支えているかというと、それは筐体の穴と垂直軸との摺動です。ここで垂直荷重を支えています(だから本当はここにラジアルベアリングを入れるべき)。
そして、プラリングと筐体の間や、ゴムリングとギヤや筐体の間の摺動面で、搭載した鏡筒のモーメント荷重を支えています。
これらの摺動面は、動きの渋さを作り出す主要部分と言えますが、水平軸ほどの荷重を摺動面が受け持つわけではないので問題がさほど大きくは感じられなかったものと考えられます。
■ 対症療法
問題は大きくないのですが、本格的に改良しようと思うと難敵です。摺動面がいくつもあり、軸を回してみると動きの渋さが出る要因が一か所ではなさそうな感触だから、です。患部が多岐にわたってしまっているのです。
そういうわけで、差し当たっては注油という対症療法で済ませることにしました。注油ポイントは2か所ありますが、一つは垂直軸と筐体の隙間で、もう一つは水平軸のときと同様に「ゴムリング」です。
後者のゴムリングは、たぶん硬めのプラリングに換えた方が良いのですが、垂直軸の患部が多い構造に絶望して、注油だけで済ませることにしました。ここへの注油は水平軸とは違って手加減が要るので、要注意です。垂直軸はバランスの崩れで作用するモーメントが大きくなりがちだからです。私は、薄く「グリースメイト」を塗ることに留めました(もっと塗ってもよかったかも)。
■ 結果
フリーダム感を獲得した AZ-GTi
指先だけでスルスル動かせます
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令和式三脚架台、水平軸の剛性対策と併せて指先だけで鏡筒をスルスル動かして止められるこの状態で、フリーダムな観望を楽しんでみたいと思います。
コメント
以前、kenkoスカイウイングの赤道儀を使ってポータブル赤道儀を作ろうとしたときに、クランプ構造の不備を発見したのですが
http://uwakinabokura.livedoor.blog/archives/1825396.html
それに似た雰囲気を感じます。
ところで、タイトルの「ぜよ」は土佐弁ですか?
今回も興味深く読まさせてもらいました。
そうですか、Skywatcher社はメカ音痴ですか。(笑
メカでそうなら、アプリなんか訳の分からないコードが一杯組み込まれてたりして、、。
メカの肝心な部分がゴムやプラ製って聞くと熱が少し冷めますね。
私もこの架台の「デコボコ感」にはちょっとビックリです。
ベアリングを完全にスペーサ扱いです(苦笑)。
向こうでは安いのでしょうけど、それにしても。
Kenkoの記事、拝見しました。
こうした廉価版製品は、往々にしてこうした部分があり得ない状態になっていたりしますね。
この赤道儀の、極軸のバランス状態など一つを見ても、意外とちゃんと分かっている人というのが多くないということが分かります。
現時点で、中華製品に対して日本は、コンピュータ制御やアプリの分野ではもはや勝てる気がしていません。多くの優秀人材が群がる人気の学問分野では、ひっくり返すのはだいぶ難しいと思います。
その一方で、こうしたメカ分野は永久に追いつかれることがない分野かもしれず、それは欧州の各種高級ブランド(望遠鏡だけでなくて)と同じ世界を日本が切り拓ける可能性のある、数少ないジャンルかもしれない、と、このAZ-GTiを分解して思ったのでした。
#「ぜよ」は土佐弁ですが、私には縁もゆかりも無かったりの、ノリでございます。
Skywatcher社のメカ音痴、実はAdvanced GT赤道儀でも感じておりました。
あの赤道儀、目盛環の止めネジを締めると、なぜか軸全体にクランプがかかってしまう謎設計でした。
その一方で、アプリの出来の方はけっこうよく出来てるんじゃないか(?)なんて思います。彼らの特長は、短いサイクルでどんどん改良してくるところで、ソフトの分野にピッタリなように思います。
メカジャンルは、製造については彼ら(中国)はかなりのレベルに到達したと思いますが、基本設計の部分ではまだまだだなあ、と思います。
ホント、ベアリングがたくさん使ってあるのに、肝心なところがゴムとかプラっていうのが、ちょっと痛いですね。。
なるほど、メカ分野では「下町ロケット」的な技術がまだまだ世界的に広がっていないんですね。でも、中国あたりでは必要性を認識してそれがコスト的に成り立つのであればすごい勢いで技術革新しそうですが・・・・
赤道儀は高速回転するわけではないので、軸や軸受の工作精度が高ければベアリング自体いらない、っていう話を聞いたことがあります。ガタや遊びがあるのをベアリング入れて締め付けて解決、っていう素人手法なのだそうです。まあ、今回のはそれさえできてない構造だったわけですが・・・・
土佐弁ネイティブの身としてはこういう特徴的な語尾が市民権を得ているようでうれしいです(笑)。坂本龍馬師匠の功績(直近では福山雅治とか小栗旬とか)でしょうか?
転がり軸受の要不要は、意外と奥が深そうなので一概には言いにくいですが、望遠鏡の場合、軸受の有る無しよりは力を受ける箇所の考え方や、穴や軸の加工精度の重要度が大きいのは確かだと思います。
実際には、動きの円滑さやガタのなさだけでなく、強度や耐久性を考えると、転がり軸受がリーズナブルな選択肢になるのだろうと想像します。
今回のコレは、そういう話のだいぶ手前ではありますが、、、。何かの見よう見まねなのでしょうね。
#土佐ご出身でしたか。坂本龍馬の影響か、難題に立ち向かえる感じの響きがありますね。