火星接近で確かめた新入り高倍率アイピース達

いくつか評価が遅れていた高倍率アイピースを、接近しつつある火星をはじめとしてこの夏に良く見えた惑星たちの姿で確かめてみました。過去に行った銀巻き鏡筒筒内気流対策に加えて連休中に施した主鏡のツメ撤去も効いたのか、昨年よりも良い惑星像を得ているように思えます。

 今回テストしたのは、TMB SuperMono 5mm、Celestron X-Cel 5mm、Vixen Or-5、ブランド不明のプロ仕様(笑)のSR-4mmの4本です。
 リファレンスとして、XO5、CZJ4、TOE3.3、Celestron SR-4 との同夜の覗き比べを実施しておりますが、以前に比較した他のアイピース全てと同時比較しているわけではありません。

近づきつつある2020年の火星で見比べてみました
2020.9.21. 20cm F5 Newtonian, 5x Barlow, SV305 camera
 

■ ブランド不明「プロ仕様」SR-4mm
中心像:S、周辺像:C、視野:約30°、フレア:B+、ゴースト:A
 これ以上ないというくらいのチープな外観と「プロ仕様」というこれまたチープな文言に惹かれて買ってしまいました(¥660)。但し到着したのはプロ仕様版とは意匠の異なる一般仕様でした。クレームを言っても仕方なさそうでしたので、やってきたバージョンで見比べです。
 まず覗いてみると、焦点距離が表記とは異なり、6mm程度であるようです。レンズの径、レンズ表面の色、レンズの位置などを見ると、どうやら Celestron SR-4 と同一の光学系のように思われます。
 見え方も、Celestron SR-4 との違いは分かりませんでした。このアイピースは、"Celestron SR-4のドイツサイズ(24.5mm)版"のようです。スペック表記では完全コーティングと書かれていましたが、ノンコートのように見えます。ラムスデン選びでは、見た目や表記上のスペックに惑わされてはいけないようです。
 このアイピースの価格や流通性から来る入手難度は高くありませんが、見た目から来る購入のハードルは低くはないのが難点です。
購入したのはこちらの「プロ仕様」だったはずですが・・・

※評価はラムスデン基準の評価です。ラムスデン接眼鏡の比較は、ラムスデン大全をご覧ください。

■ TMB SuperMono 5mm
惑星表面: S、切れ味: S-
 評判通りの大変優れた1群3枚の「スーパー・モノセントリック」アイピースで像質が明るく、惑星表面の模様が大変よく見えます。切れ味については、TOEやHR、Radianには僅かに及んでいないように感じますが、これらよりも倍率が低い分だけシャープ感も十分以上です。アイレリーフが短く、アッベオルソやラムスデンよりもさらに覗きづらいのが難点です。
 表面模様の見え方に関しては、XO5と並ぶと思いました。強いて言えばXOはコントラストが高く、この SuperMono はカッチリした感じ、という違いがあるように感じられました。また、評判通り像質が明るいのも特長です。
 間違いなく第一級の惑星用アイピースと言ってよいと思います。また、このシャープネスはシリウス伴星トライアルにも参戦させてみたいと思わせるものがあります。

■ Celestron X-Cel 5mm
惑星表面: S-、切れ味: A+
 現行の "X-Cel LX" の旧版で、EDレンズが使われた6枚玉アイピースで、見掛け視界は55°です。新しいX-Cel LXシリーズとも互換性のある同焦点設計になっていました。
 像質は現行のX-Cel LX2.3mmと大変似ていて、惑星表面の模様は良く見えました。個人的には、模様自体はTOEやCZJよりもコントラスト良く見えているのではないか、と感じられましたが、シャープネスは若干劣るように思われました。X-Cel LXとの比較では、焦点距離が違うこともあって、EDガラス使用の効果は私には分かりませんでした。
 アイポイントが長く覗きやすい設計ですが、アイカップが固定式な分だけ、新型のX-Cel LXの方が使い勝手が良いように思われます。

■ Vixen Or.5mm
惑星表面: A++、切れ味: A++
 大変クラシカルな24.5mmサイズアイピースです。この時代のVixenのOr.は4mmを除いてプルーセルタイプのオルソであるようです(※6mmにもアッベのものがあったようです)。
 このたしかに特級のアイピースと比べると及ばない点があるのですが、凄く劣るかというとそんなことは全くなく、けっこう良く見える部類です。SMCでないPENTAXのオルソといい勝負くらいかもしれません。ほとんどのケースでは、これで用が足りるのではないかと思います。
 流通量が多いのか、オークションでも程度の良いものがかなり安価で出回っているようです。

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今年の夏は、私自身の持てる時間が大変少なかったのですが、美しい惑星の姿を拝むことが出来ました。アイピースによる微妙な違いを眺めてみるというのもさることながら、やはり天体そのものが見せてくれる姿は美しい、と、ナマの姿をアイピース越しに眺めながら思ったのでした。
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この夏、木星も楽しませてくれました
2020.8.6, 20cm F5, 5x Barlow, SV305


土星の環はいつ見ても美しいです
2020.8.6, 20cm F5, 5x Barlow, SV305

コメント

匿名 さんのコメント…
こんにちは。
9月に火星を見たとき、戴いたセレストロンSR4(実質6mm)が
一番よく見えました。

15センチF5アクロを10センチに絞って、コントラストブースターと
ムーン&スカイグローフィルタをつけ、SRにはSVBONEYの2倍バローを
装着、250倍が綺麗に見えました。2.4倍バローの300倍、2.8倍バローの
350倍でも結像はしました。が、「あるはずの無い模様が見えてしまう」のを
恐れて250倍で鑑賞しました。

それでも赤いコロナのようなものが背後に現れ、微妙でした。やはり火星は
色収差の無い反射か、アポで見るのがいいかもです。

プロ仕様のSR,これ僕の持ってるやつと同じかも(31.7サイズですが)
よくみえますよ。

Lambda さんの投稿…
望遠馬鹿さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
このSRは本当によく見えると思います。特に、惑星表面の模様は良く見えますね。
実は私も、いくつかのSRで火星を眺めていました。
このセレストロンSR、EIKOW SR5や 3B SR4も実に良く見えますね。相変わらず打ち負かされてる高級アイピースもあります。

ただ、最接近当日の10/6には、SuperMono とセレストロン火星フィルタの組み合わせが最強で、星に興味が全くない家人をして「表面のモジャモジャした模様がはっきり見える」と言わしめました。

望遠馬鹿さんのように絞りやフィルター&バーローなど、良い組み合わせを探して鑑賞するのも楽しいですね!
望遠野郎 さんのコメント…
望遠馬鹿改め望遠野郎 です。

(すいませんこのあいだ改名したんでした。)

自分も長らく「惑星=スーパーモノセントリック最強」伝説、信じていました。
でもそのあといろんなアイピースの存在を知って、そうでもないかな・・・
に変わってきましたが、やっぱり最強でしたか!(状況や対象にもよるでしょうが)

そして、セレストロン火星フィルタ 買おうか迷っていましたが、ネットでの
否定的な評価を見てやめましたが、これもよかったんですね。

逆に、あわてて買ったアイダスのディユアルナローバンドフィルタNB1が
自分のアクロの色収差特性に合わず自爆・・・・
しばらくおとなしく息をひそめて生きていきます。
Lambda さんの投稿…
望遠野郎さん,ご返信ありがとうございます。

さて、スーパーモノセントリックですが、私は「最強」の名に間違いはなかったな、と思っております。惑星の模様を見るのに最強だと思っていたXOと並ぶか、ヘタすると超える印象です。。

仰るように、対象や条件(鏡筒も含めて)はあると思います。

火星フィルタは、コントラストUPには間違いなく効きました。
特に、家人のように全く訓練されてない人間にも火星表面の微細な模様が見えたというのは驚きでした。

デュアルバンドフィルターと屈折望遠鏡の組み合わせは、対物の設計との相性があって、なかなか難しさがあるようですね。
Miss Mises さんの投稿…
TMB SuperMono 5mmは5万円以上の相場なんですね。ちょっと手が出ません。w
Lambda さんの投稿…
Miss Misesさん、そうですね。
SuperMonoは、ちょっとエコノミーとは言えない価格帯ですね。
火星が迫っていて、つい手を出してしまいました。