(English article relating "special Ramsden" SR is here)
※ラムスデンアイピースについては「ラムスデン接眼鏡大全」に詳報があります。
実売300円切りの極貧価格ながら驚愕のシャープネスとヌケの良さを見せてくれたエコノミーアイピースの東の正横綱スペシャル・ラムスデンアイピースですが、標準ラムスデンを更にコストダウンした仕様だとの情報に疑念を抱いていました。
同じ焦点距離の両凸レンズを組み合わせただけでは、収差の補正がほぼ全く期待できない短焦点の単レンズのようになってしまって良像は期待できないと想像されたからです。その割には、入手したSR4mmの中心像は色収差も気にならず、相当にシャープな像を結んでいたのです。このことは、ネット上でもいくつか同様の報告がみられます。
そういうわけで、分解です。いろいろな用途とリスペクトとから、この超高性能SR4アイピースは5本ほど追加注文してあったのでした(5本買っても1300円未満でしたw)。
■ ラムスデン式アイピース
ラムスデン式接眼鏡は平凸レンズを向かい合わせたもので、片方のレンズの焦点距離の位置にもう一方のレンズを置くと、ちょうど中心像の色収差が打ち消され、球面収差やコマの除去にも有効な設計だとされています(参考)。しかしその一方で、レンズの位置に焦点があるのでレンズ表面のゴミが良く見えてしまうという問題が欠点の一つとなっていて、この問題の回避のために、2枚のレンズの距離を焦点距離からすこしずらして使用するのが一般的だったようです。要するに、収差補正を犠牲にして実用性を重視した形にするのが通例だったようで、初心者向け望遠鏡では、理に適った選択とも言えます。
(※但し、私も素のラムスデン接眼鏡を拝んだことはありません。たいていSRが付いてくるのが通例になっていました)
■ これは高級なラムスデンだわ
写真は分解したSR4です。写真左が視野レンズ、右がアイレンズです。ネジやスペーサーはプラスチックですが、レンズは質感がガラス製のように見えます(真偽不明)。
まず驚いたのが、視野レンズとアイレンズには異なるレンズが用いられているという点です。SRが Symmetrical Ramsden だという説もあったのですが、そうではなかったようです。また、決して Standard とは言えない構成にもなっています。
そして、視野レンズの方は元祖ラムスデンの平凸レンズに近く、視野側がほぼ真っ平らですが、わずかに曲率がついた非対称の両凸レンズになっています。
アイレンズの方は、全体の曲率が視野レンズよりも小さく、薄いレンズになっています(写真では厚いように写っていますが、置いた時の角度のせいです)。そしてやはり、アイ側にも若干の曲率がついて、視野側にはすこしきつめの曲率がついた非対称両凸レンズになっていました。
つまり、SR4に用いられている2枚のレンズは別物で、しかも裏表があるものが用いられ、元祖ラムスデンよりも高級な設計になっていたのでした。スペシャルラムスデンは、決して価格がスペシャルなわけではない、性能がスペシャルなラムスデンだったのです!
ラムスデンが中心像の収差除去に重点が置かれたアイピースだったとすると、このSRと反射望遠鏡との組み合わせは、中心像においては無双かもしれんと思えてきたのでした。
なぜこんな粗悪望遠鏡のオマケみたいなアイピースに高級な設計が奢られたのかは謎ですが、限られたコスト制約の中で最大限の成果を得る工夫の産物だったのかもしれません。SRはさまざまなところで用いられているようですが、その開発者の名前が冠されておらず「Special」となってしまっているのは何とも惜しいとも言えます(と思ったらSuzukiとかSatoとかだったりするのかもしれませんが)。
私個人としては、中心像でならペンタオルソと勝負できるほどの設計の出来の良さにはアッベに対するのと同じくらいの賛辞を贈りたいと思います。
この高性能アイピースが300円を切るほどの超絶低価格で提供されているのは、おそらくは量産効果のおかげだとは思いますが、ここはありがたくそのシャープな星像を楽しんでおきたいところです。
追記:こちらの掲示板に、すでに別のSRを分解していた方がおられたようです。最初の写真を撮られた方は視野レンズの裏表を、後の写真の方はアイレンズの表裏を誤っているのではないかと思います(自信なくなってきた…。もう一本新品を丁寧に分解してみるかな)。ですが、ご両名の分解したSRは私のものとは違うメーカーのものにも拘わらずレンズ構成は私が見たものとだいたい同一です(裏表は置いといて)。やはり、SRの設計には共通の何かがあるように思われます。
ちなみに、掲示板でもSRのSが何か、ということも議論になっていますが、Symmetrical ではないことでは一致してます。Surprising Ramsden ではないか、という珍説も登場しています。
同じ焦点距離の両凸レンズを組み合わせただけでは、収差の補正がほぼ全く期待できない短焦点の単レンズのようになってしまって良像は期待できないと想像されたからです。その割には、入手したSR4mmの中心像は色収差も気にならず、相当にシャープな像を結んでいたのです。このことは、ネット上でもいくつか同様の報告がみられます。
そういうわけで、分解です。いろいろな用途とリスペクトとから、この超高性能SR4アイピースは5本ほど追加注文してあったのでした(5本買っても1300円未満でしたw)。
■ ラムスデン式アイピース
ラムスデン式接眼鏡は平凸レンズを向かい合わせたもので、片方のレンズの焦点距離の位置にもう一方のレンズを置くと、ちょうど中心像の色収差が打ち消され、球面収差やコマの除去にも有効な設計だとされています(参考)。しかしその一方で、レンズの位置に焦点があるのでレンズ表面のゴミが良く見えてしまうという問題が欠点の一つとなっていて、この問題の回避のために、2枚のレンズの距離を焦点距離からすこしずらして使用するのが一般的だったようです。要するに、収差補正を犠牲にして実用性を重視した形にするのが通例だったようで、初心者向け望遠鏡では、理に適った選択とも言えます。
(※但し、私も素のラムスデン接眼鏡を拝んだことはありません。たいていSRが付いてくるのが通例になっていました)
分解したスペシャルラムスデン(SR4)アイピースのレンズ |
■ これは高級なラムスデンだわ
写真は分解したSR4です。写真左が視野レンズ、右がアイレンズです。ネジやスペーサーはプラスチックですが、レンズは質感がガラス製のように見えます(真偽不明)。
まず驚いたのが、視野レンズとアイレンズには異なるレンズが用いられているという点です。SRが Symmetrical Ramsden だという説もあったのですが、そうではなかったようです。また、決して Standard とは言えない構成にもなっています。
そして、視野レンズの方は元祖ラムスデンの平凸レンズに近く、視野側がほぼ真っ平らですが、わずかに曲率がついた非対称の両凸レンズになっています。
アイレンズの方は、全体の曲率が視野レンズよりも小さく、薄いレンズになっています(写真では厚いように写っていますが、置いた時の角度のせいです)。そしてやはり、アイ側にも若干の曲率がついて、視野側にはすこしきつめの曲率がついた非対称両凸レンズになっていました。
つまり、SR4に用いられている2枚のレンズは別物で、しかも裏表があるものが用いられ、元祖ラムスデンよりも高級な設計になっていたのでした。スペシャルラムスデンは、決して価格がスペシャルなわけではない、性能がスペシャルなラムスデンだったのです!
ラムスデンが中心像の収差除去に重点が置かれたアイピースだったとすると、このSRと反射望遠鏡との組み合わせは、中心像においては無双かもしれんと思えてきたのでした。
なぜこんな粗悪望遠鏡のオマケみたいなアイピースに高級な設計が奢られたのかは謎ですが、限られたコスト制約の中で最大限の成果を得る工夫の産物だったのかもしれません。SRはさまざまなところで用いられているようですが、その開発者の名前が冠されておらず「Special」となってしまっているのは何とも惜しいとも言えます(と思ったらSuzukiとかSatoとかだったりするのかもしれませんが)。
私個人としては、中心像でならペンタオルソと勝負できるほどの設計の出来の良さにはアッベに対するのと同じくらいの賛辞を贈りたいと思います。
この高性能アイピースが300円を切るほどの超絶低価格で提供されているのは、おそらくは量産効果のおかげだとは思いますが、ここはありがたくそのシャープな星像を楽しんでおきたいところです。
追記:こちらの掲示板に、すでに別のSRを分解していた方がおられたようです。最初の写真を撮られた方は視野レンズの裏表を、後の写真の方はアイレンズの表裏を誤っているのではないかと思います(自信なくなってきた…。もう一本新品を丁寧に分解してみるかな)。ですが、ご両名の分解したSRは私のものとは違うメーカーのものにも拘わらずレンズ構成は私が見たものとだいたい同一です(裏表は置いといて)。やはり、SRの設計には共通の何かがあるように思われます。
ちなみに、掲示板でもSRのSが何か、ということも議論になっていますが、Symmetrical ではないことでは一致してます。Surprising Ramsden ではないか、という珍説も登場しています。
※このアイピースについては関連記事があります。
・ラムスデン・アイピース詳報(ラムスデン接眼鏡大全)
・機材紹介(極貧アイピース スペシャルラムスデン SR4mm)
・木星写真での比較記事(見分けつく? ペンタオルソ vs ラムスデン)
コメント
平凸でなく、平の面がわずかに凸になっているレンズを使っている
という話をどこかで読んだ気がします。
でもNRはそれほど高性能ではないようです。(スリービーチのSR
と比べて。スリービーチのSRはビックリするほど見えるらしいです。)
NR、、、そう思って密かに入手を画策しているのですが、なかなか手に入れられていません。
そしてスリービーチSRですか!?なかなかお目にかかれないですね。
ぜひ見かけたらゲットしておきたい逸品です。
ブランドンという惑星高倍率用アイピースの単レンズ版という
解釈もできるのではと思います。
スリービーチのSRですが、昔の天ガの広告、足立光学(庶民的名人鏡)
で、ユーザーの土星スケッチにアイピース=SR5mmと
あり、おそらくスリービーチのもの(OEM)だと思われます。
ORも手に入ったはずですが、あえて究極の見え味を求めての選択では
なかったか?と思いました。(当時の値段はORが倍以上)
画像は
http://img-cdn.jg.jugem.jp/445/3813014/20190714_2182177.jpg
※アイレリーフの短さですが、僕は惑星を視野の中心に捕らえたあと、
1センチくらい顔を後退させ、その像だけを見るようにしています。
老眼だからか、そのほうがよく見える気がします。
(その間、上下・水平ハンドルを操作しつつ・・・慣れです。)
足立光学の広告に載せられた土星のスケッチも、まさに私がSRと20cm反射で眺めたイメージそのままです!
SRが意外と良く見える、というのも、観測者は経験的に知っていたのかもしれませんね。
最初は完全に安モノと馬鹿にしていましたが、まったく侮れないというか、良く見えます。
3BのSR・・・要チェックですね。
※アイレリーフの件、「1センチくらい顔を後退させ、その像だけを見る」方法、私も同感です。原理不明ながら、確かに良く見える気がします。