エコノミー機材④ - 極貧アイピース スペシャルラムスデン SR4mm

(English article relating "special Ramsden" SR is here)
※ラムスデン接眼鏡については「ラムスデン接眼鏡大全」に詳報があります。
 ■ セレストロン SR4
Celestron SR (special Ramsden) 4mm eyepiece
SR 4mm
未知の世界への探究心は我々の心をくすぐるものです。そういう訳で、中国アリババのAliExpressは、ハッブル宇宙望遠鏡で空の深淵を覗くような楽しさがあって、非常に興味深いものであります。

さて、今回手に入れたのは、今時そんなのアリか!?と思えるスペシャルラムスデンで、しかも魅惑の4mm。いわゆる、高倍率を謳い文句にする「買ってはいけない望遠鏡」に付いてくるやつです。
但し、一応ブランドはセレストロンになっています。

驚異の低価格
購入価格はAliExpressでなんと驚異の300円切り、262円(!!!)でした。前回のSvBONYの低価格を軽く超えてくる逸材です。SvBONYがソツなく性能を出してくる雲竜型の横綱だとすると、SR4は高倍率の中心像だけに特化した不知火型の攻めの横綱と言える激安アイピース番付(?)の位置付けです。
(余談ですが、AliExpressでは200円を切る究極のハイゲンスも発見されているのですが、いささか品質に疑問を抱かせる外観に食指が動いておりません)
※価格はその日の為替によって上下します。



スペシャル・ラムスデン
SRは本来、平凸レンズの組み合わせであるラムスデンを、両凸レンズの組み合わせにしてコストダウンしたものであるとの情報があります。こうすると、組み立てでレンズの向きを揃える必要がないので安く済むようです。望遠鏡用としては最下級に位置付けられるラムスデンを、更にコストダウンするという念の入れようです。(※分解記事を追加しました。SRは決してコストダウン設計ではなく、高級なラムスデンだったようです)
視野は狭く、周辺像は酷く、アイレリーフも短いラムスデンですが、実は歪曲などはケルナーなどより少なく、設計によっては中心像の色収差をそれなりに排除できることになっているようです。

■ 期待はヌケの良さ
さて、何故こんな前時代の安物をわざわざ買ったのかと言いますと、惑星面の観察に大事なのは「ヌケの良さ」だという言い伝えがあるからです。
有名なTMBのスーパーモノセントリックもこの発想から来ていて、レンズの枚数が少ない方がエラいという世界です。手元にある文献によれば単レンズ(!)の中心像がPENTAXオルソやツァイスのアッベオルソに匹敵するほど素晴らしい、との記述もあります。ツァイス社はAbbeの勤め先でもあり、そこのオルソZAO(Zeiss Abbe Ortho)は文献の著者が「崇拝する」とまで言うほどの性能でありながら、その著者はそれよりもヌケの良さが大事だと説いているのは興味深いところです。
そしてレンズの枚数の少なさは間違いなく良いヌケを期待させるということで、このSRを買ってみることにしたのでした。

■ インプレ
さて、ウンチクが長くなってしまいましたが、インプレです。このSR4はアメリカンサイズですが、プラスチックの筐体がメチャクチャに軽い激安仕様です。レンズもプラスチックではないかと思われます。バレルはアルミ製です。
筒の内側は一応艶消しにはなっていますが、上等とは言い難い仕上げです。
覗いてみると、近代的なアイピースに慣れた目にはまずアイレリーフが厳しく、35°もないような視界すら容易に見渡せないほどですが、どうせ視野周辺は収差が酷くて使えないので惑星用途にはアイレリーフの短さも関係ないとも言えます。
見かけ視界35度以下というのも現代にはない感じですが、中心像だけと割り切れば関係ありません。

■ 驚異の中心像
で、肝心の見え味ですが、これには正直言って驚きました。中心の解像度に限って言えばPENTAXのオルソと甲乙つけがたいレベルで、同じ4mmのプレスルやKSONスーパーアッベ4.8mmより確実によく見えました。
ヌケが良いとはこのことか、と、思い知らされる見え味で、恐るべしです。言い伝えはマコトでありました。中心像は色収差もさほどではなく、ニュートンの無収差中心像との相性も良いようです。これまでの価値観を完膚なきまでに打ち砕いてくれる見え味に、正直なところ感動しました。
但し、中心から少しでも外れると途端に色滲みも各種収差も激しくなります。快適さは全く(笑)ないというか、月などに向けると広くもない視界の周辺部は不快そのものです(視界の半分くらいはいける)。中心像以外は、あくまでも対象の導入用と理解すべきです。
そういう訳で、このSR4mmはショボい経緯台の初心者向け望遠鏡には全く不向きで、高倍率で惑星を中心に捉え続けておけて収差も少ない望遠鏡向けで、使いこなしにも熟練を要する違いの分かる上級者向けかと思います。

■ 最後に
なんと言っても300円を切る超安値ですから、接眼アダプタリングなどを買うついでに騙されたと思って注文しても損ではないと思います。アイピースケースまで付属してきましたので、その値段だと思っても納得できます。

間違いなくエコノミー級アイピースの東の正横綱として、その中心像は一度は拝んでおく価値があると思います。

※このアイピースについては続報があります。
ラムスデン接眼鏡大全
分解記事:(スペシャルラムスデンが性能スペシャルだった件)
木星写真での比較記事(見分けつく? ペンタオルソ vs ラムスデン)
他アイピースとの比較記事星像比較! 高倍率アイピース達; SR-4/PENTAX Or6/KSON オルソ4.8/EIKOW H-6/FUJIYAMA HD 6/Vixen PL4)


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コメント

匿名 さんのコメント…
はじめまして。

昔のB級、いやC級メーカーのスリービーチの
反射型ハイエンドモデルには、付属のアイピースで
高倍率用にSRの4mmと5mmが付属していました。

私も20cmF5反射(自作)にメーカー不明のSR4㎜を
使用してみて驚きの好結果を得ました。
このことで、ペンタのsmcXOを無理してでも買おうという
気持ちがだいぶなくなりましたよ。
Lambda さんの投稿…
はじめまして。コメントありがとうございます!

スリービーチ、あの、御三家のですね。附属してくるウエイトではバランスが合わない赤道儀とか、伝説が色々ありました。
むかし、反射とラムスデンの組み合わせはハイゲンスと同様にタブー感がありました。これらはFの大きい光学系向けなんだ、と。

でも実際問題、よく見えるんですよね、コレ。ペンタXOとでもいい勝負になりそうな勢いがあります。

そう思うと、3Bのバンドルにも実は無視できない経験則があったのかもしれません。