(English article relating "special Ramsden" SR is here)
昨夜、夜半過ぎに眠くなって撤収しようとしたところに木星が出てきて割とよく見えたので、手持ち機材で初めての惑星拡大撮影にトライしてみました。そして、気になっていた激安三百円スペシャルラムスデン SR4mmアイピースの写真での実力トライアルを、ペンタオルソとの比較でやってみました。(注:実際の購入価格は262円でした)
「なんでこの人そんなにラムスデンなんかにこだわってんの?」と思う前に、まずは比較写真を見てほしいと思います。
このSR4については、これまでに眼視トライアルや分解を通じてその実力が無視できない性能スペシャルアイピースだということをお伝えしてきました。
ですが正直なところ、そんなの眉唾だと思われた方も多いのではないでしょうか?
入門書によるとラムスデンはアイピースとしては最下級で、視野も狭く収差が多い低級品扱いです。
しかし、私はこの目で確かめたのです。この Celestron SR4mm で覗く惑星面が望外にクリアでハイコントラストなことを!
■ どっちがラムスデンでしょう?
さて、論より証拠です。下の写真は低空の木星写真の比較で、片方がSR-4mm、もう片方がペンタックスOr-6mmを投影レンズに使ってます。焦点距離が違う分、投影距離を調整して似たサイズにして撮影しています。EOS60Dの自動露出ムービーで1分ほど撮影し、上位4%の画像をRegistaxでスタックし、waveletで調子を整えてあります。デジタル的なサイズ調整や色調補正はしていません。両者の撮影時刻の差は5分ほどです。両者に見えている色にじみは、色収差ではなく大気による分散です。なお、私の腕が悪くて見栄えのする写真になっていないのは、初めての惑星撮影ということでご容赦ください。
それぞれ写り方は違いますが、この二つの写真に三百円の粗悪品で撮影したものがあるように見えるでしょうか?明確に酷い収差が出てる写真なんてあるでしょうか??
そして、どちらがオルソでどちらがラムスデンなのか、言い当てられるでしょうか!?
この比較用のペンタックスオルソは昔入手したものでSMCではありませんが、他に所有している谷オルソやKSONアッベよりもよく見え、ビクセンPL-4mmと比較すると雲泥の差があるものです。このペンタオルソは、文献から垣間見える序列に照らしても、それなりに上位に位置できる逸品です。
ちなみに私の眼視評価は、SR-4はペンタオルソに細かい模様のコントラストで優って分解能も肉薄し、谷オルソよりもいずれも上というものですが、果たして写真でその見分けがつくかどうか…大変微妙なところです。
■ 入門書はマユツバ、、、
この撮影結果を見て思ってしまったのは、入門書というのが随分とエエカゲンだよなあ、ということです。ラムスデンなんて、「色収差が多くて高倍率には不向き。十字線を張りやすいのでファインダーに用いられることがある」くらいの記述です。以前にも書いた「星雲星団は低倍率で、という定説がウソだった件」と併せて、だいぶテキトーなお説を信じ込まされていたんだなあ、と思わざるを得ないわけです。アイピースの実視野能のような実用的な指標が長年導入されてこなかったのも疑問です。
おそらくはベテランや専門の方からすれば、安い低級品などに目をくれることもなく、過去の書物からの受け売りで無確認のまま書かれている部分があって、それは仕方ない部分があるとは思います。しかしその分、過去からの定説にも、眉に唾つけて見てみると面白い発見があるということかもしれません。
そしてアイピースについていえば、なんとなく"レンズの枚数が多くて収差補正が行き届いたレンズが偉い"という風潮も感じるのですが、私はこのSR4の一件で、ここにもだいぶ疑いの眼差しを注いでいます。
■ 高倍率アイピースの決め手は研磨精度か?
実は中心像について言うと、収差補正云々なんぞよりもレンズの研磨精度の方が効いているんじゃあないのか、と思ってしまっています。だって、上の写真を見て、ラムスデンの色収差なんて、ほとんど分からないですよね??(色滲みは低空での大気分散ですよ。念のため。)
アイピースのレンズの研磨精度なんて謳い文句にも見かけることはありませんが、有限の精度のガラスを何枚も通して眺めたらそりゃボケるよね、という単純な理屈です。枚数が少なければ少ないほどそこは有利なわけで、これがいにしえからの言い伝えにある「ヌケ」というやつの正体なのではないかと思ったのでした。
アイピースの方式が同じでもメーカーによって見え味に相当な差が出るのは、コーティングや迷光対策もそうですが、最も基本的なはずの研磨精度の差が原因じゃないかなあ、とも思うわけです。ちなみにSR-4はコーティングが拙くてゴーストがクリアに(苦笑)出ているのですが、それでも上の写真の実力です。
そんなわけで、SR4がやたらよく見えるのにも一理ありそうです。単純な構成のレンズは研磨しやすく、そして激安販売に向けて歩留まりが上がるよう研磨装置を極限まで調整していった大量生産の副産物として、それなりの精度に仕上がっているのは頷ける話です。そしてなにより、レンズ枚数の少なさは面精度の影響を確実に減らしてヌケの良さを提供しているというわけです。
このSR-4、内面の艶消しやコバ塗りなどを徹底して、もう一段階レベルアップさせて大事に使ってやろうかとも思うところです(塗料と筆の方が高いですw)。
※このアイピースについては関連記事があります。
・機材紹介(極貧アイピース スペシャルラムスデン SR4mm)
・分解記事(スペシャルラムスデンが性能スペシャルだった件)
昨夜、夜半過ぎに眠くなって撤収しようとしたところに木星が出てきて割とよく見えたので、手持ち機材で初めての惑星拡大撮影にトライしてみました。そして、気になっていた激安三百円スペシャルラムスデン SR4mmアイピースの写真での実力トライアルを、ペンタオルソとの比較でやってみました。(注:実際の購入価格は262円でした)
「なんでこの人そんなにラムスデンなんかにこだわってんの?」と思う前に、まずは比較写真を見てほしいと思います。
このSR4については、これまでに眼視トライアルや分解を通じてその実力が無視できない性能スペシャルアイピースだということをお伝えしてきました。
ですが正直なところ、そんなの眉唾だと思われた方も多いのではないでしょうか?
入門書によるとラムスデンはアイピースとしては最下級で、視野も狭く収差が多い低級品扱いです。
しかし、私はこの目で確かめたのです。この Celestron SR4mm で覗く惑星面が望外にクリアでハイコントラストなことを!
■ どっちがラムスデンでしょう?
さて、論より証拠です。下の写真は低空の木星写真の比較で、片方がSR-4mm、もう片方がペンタックスOr-6mmを投影レンズに使ってます。焦点距離が違う分、投影距離を調整して似たサイズにして撮影しています。EOS60Dの自動露出ムービーで1分ほど撮影し、上位4%の画像をRegistaxでスタックし、waveletで調子を整えてあります。デジタル的なサイズ調整や色調補正はしていません。両者の撮影時刻の差は5分ほどです。両者に見えている色にじみは、色収差ではなく大気による分散です。なお、私の腕が悪くて見栄えのする写真になっていないのは、初めての惑星撮影ということでご容赦ください。
見分けつきます? スペシャルラムスデン SR-4mm vs ペンタックスOr-6mm (順不同) [SE200N, D=200mm / fl=1000mm] ※色滲みは色収差ではなく大気分散です。 |
それぞれ写り方は違いますが、この二つの写真に三百円の粗悪品で撮影したものがあるように見えるでしょうか?明確に酷い収差が出てる写真なんてあるでしょうか??
そして、どちらがオルソでどちらがラムスデンなのか、言い当てられるでしょうか!?
この比較用のペンタックスオルソは昔入手したものでSMCではありませんが、他に所有している谷オルソやKSONアッベよりもよく見え、ビクセンPL-4mmと比較すると雲泥の差があるものです。このペンタオルソは、文献から垣間見える序列に照らしても、それなりに上位に位置できる逸品です。
ちなみに私の眼視評価は、SR-4はペンタオルソに細かい模様のコントラストで優って分解能も肉薄し、谷オルソよりもいずれも上というものですが、果たして写真でその見分けがつくかどうか…大変微妙なところです。
■ 入門書はマユツバ、、、
この撮影結果を見て思ってしまったのは、入門書というのが随分とエエカゲンだよなあ、ということです。ラムスデンなんて、「色収差が多くて高倍率には不向き。十字線を張りやすいのでファインダーに用いられることがある」くらいの記述です。以前にも書いた「星雲星団は低倍率で、という定説がウソだった件」と併せて、だいぶテキトーなお説を信じ込まされていたんだなあ、と思わざるを得ないわけです。アイピースの実視野能のような実用的な指標が長年導入されてこなかったのも疑問です。
おそらくはベテランや専門の方からすれば、安い低級品などに目をくれることもなく、過去の書物からの受け売りで無確認のまま書かれている部分があって、それは仕方ない部分があるとは思います。しかしその分、過去からの定説にも、眉に唾つけて見てみると面白い発見があるということかもしれません。
そしてアイピースについていえば、なんとなく"レンズの枚数が多くて収差補正が行き届いたレンズが偉い"という風潮も感じるのですが、私はこのSR4の一件で、ここにもだいぶ疑いの眼差しを注いでいます。
■ 高倍率アイピースの決め手は研磨精度か?
実は中心像について言うと、収差補正云々なんぞよりもレンズの研磨精度の方が効いているんじゃあないのか、と思ってしまっています。だって、上の写真を見て、ラムスデンの色収差なんて、ほとんど分からないですよね??(色滲みは低空での大気分散ですよ。念のため。)
アイピースのレンズの研磨精度なんて謳い文句にも見かけることはありませんが、有限の精度のガラスを何枚も通して眺めたらそりゃボケるよね、という単純な理屈です。枚数が少なければ少ないほどそこは有利なわけで、これがいにしえからの言い伝えにある「ヌケ」というやつの正体なのではないかと思ったのでした。
アイピースの方式が同じでもメーカーによって見え味に相当な差が出るのは、コーティングや迷光対策もそうですが、最も基本的なはずの研磨精度の差が原因じゃないかなあ、とも思うわけです。ちなみにSR-4はコーティングが拙くてゴーストがクリアに(苦笑)出ているのですが、それでも上の写真の実力です。
そんなわけで、SR4がやたらよく見えるのにも一理ありそうです。単純な構成のレンズは研磨しやすく、そして激安販売に向けて歩留まりが上がるよう研磨装置を極限まで調整していった大量生産の副産物として、それなりの精度に仕上がっているのは頷ける話です。そしてなにより、レンズ枚数の少なさは面精度の影響を確実に減らしてヌケの良さを提供しているというわけです。
このSR-4、内面の艶消しやコバ塗りなどを徹底して、もう一段階レベルアップさせて大事に使ってやろうかとも思うところです(塗料と筆の方が高いですw)。
※このアイピースについては関連記事があります。
・機材紹介(極貧アイピース スペシャルラムスデン SR4mm)
・分解記事(スペシャルラムスデンが性能スペシャルだった件)
コメント
SR4mmのほうがPentax Or-6mmより中心像が良いというお話なので、
左の木星がSR4mm、、、どうでしょうか?
左がSR4で、ご名答です!!
SR4の方が細かいところまで分解できてるんです。
一方で、大きな模様はOr6の方がよく分解できています。
また、SR4は、微かに色収差が見えています。
色滲みは大気分散ですが、収差のせいでSR4はオレンジのにじみが見えなくなっています。
でも、実用にならないような収差では決してないと思うんです。
先ほど、ジャパンネット銀行のカードレスVISAデビットでcelestron SR 4mmアイピースを購入しました。(^^♪ 。このような商品には当り/外れがあるのが常。当りが来ることを祈ってます。
カードレスVISAデビットって便利ですよ。WEB上でカードを発行して、決済が済んだら削除、または利用停止にできます。ようやくWikiにも寄付できます。
AliExpressは信用できてもバックに控えるあの国家政府がどうも信用できなくて、、。
まあ、あの国家を信用するのは無理なのですが、何か起きても被害が知れてる範囲で遊ぶのが吉ってことですね。
SR4は、結局10本以上調達して、3本ほどは木星に向けてみました。品質は安定しているように思えます。
コストダウンのために歩留りを追求したら副産物として精度が上がったんじゃないかと思います。