高倍率アイピース頂上対決の「眼視編」、第一ラウンド結果報告です。これにてプレゼント企画は応募を締め切り、この眼視対決でのインプレッションで上位アイピースを選別し、第二ラウンドの写真判定で決着としようと思います。
ちなみに、条件としては天候不順でシーイングは最悪、薄雲が途中で通過するような状況の中の強行となりました。20cm/F5ニュートン反射でのトータル3時間ほどの木星眼視比較で,最後は雨がパラついてきて退散です。
ちなみに、全てのアイピースはルーペで拡大(*)しながらゴミ等の付着が無いよう清掃・確認を行って試験しています。(*星のGG氏の手法で、これと女性のまつ毛用の極細綿棒の併用でバッチリ清掃&確認ができております)
さて、結果は…非常にハイレベルな戦いとなっています。皆様に予想いただいたように、中心像だけに限定すると最先端のHRと最古の単レンズがいい勝負になってしまうというあたりがワンダフルです。
正直なところ、この悪シーイング下の眼視だけでは結論が出せないというか、私のボンクラな目では判別が困難な部分が残り、星像対決必須です。ちなみに人工星撮影にもトライ中ですが、後述のように超高倍率アイピースの問題点が見えてきてしまいました。射出瞳が小さいというのは色々不利なように思えます。
と、いろいろエクスキューズが付くのですが、まずは第一ラウンドの採点はしてみました。それぞれに像の差は確かにあります。
■ 眼視インプレッション
「収差」は木星のエッジのシャープさで判定しています。また、「ヌケ」が、今回の眼視対決で最も重視する「細かい模様が見えるかどうか」の評価となります。収差とも一定の相関があると思われます。「コントラスト」は模様の見え方がハッキリするかどうかを評価しています。また、中心像以外は評価対象外です。
(前回とは☆の基準が異なる相対評価ですので、ご注意ください)
[五藤光学 MH-6mm] 収差☆+ / ヌケ☆ / コントラスト ☆ :総合3.5点
名門の2枚玉ということで密かに期待していたダークホースだったのですが、全くの期待外れに終わりました。2枚玉なのにゴーストの発生が全体のコントラストを下げ、視野の背景も白みがかっており、ヌケもよくありません。また、収差の出方がニュートン反射に合っていないのか、そもそものシャープさにも欠ける像質でした。収差を度外視したヌケにも見るべきところはなく、真面目に作ったのかどうか疑いたくなる出来で、中華200円代ラムスデンの足元にも及ばぬ残念な結果でした。
※ちなみに入手したものの状態は悪くなく、レンズに傷などがないことも確認済です。
[EIKOW H-6mm] 収差☆ / ヌケ☆☆- / コントラスト ☆☆ :総合4.8点
星像対決でヌケが良いように見えていたのですが、木星像ではそこまでではありませんでした。五藤のMH-6よりは木星面の細部が見えてはいるのですが、収差そのもので木星の輪郭がやや崩れて見えるようで、特になまじ修正された色収差と強めのゴーストがコントラストを下げていて見えづらく、損をしている感じでした。ちなみに後述の単レンズと比較すると中心像は単レンズの方がずっと上ですが、視野全体で見るとこのハイゲンスの方がマシというバランスのように見えます。
[SMC PENTAX XP-3.8mm] 収差☆☆☆+ / ヌケ☆☆☆ / コントラスト ☆☆☆ :総合9.5点
さすがに定評あるSMCシリーズです。投影用と銘打っているだけあってアイポイントは短くてとても覗きにくいですが、良く見えます。ハイゲンスと比べると収差補正がビシっと行き届いていて気持ちのいい像を結んでくれます(ハイゲンスと比べるなよって話ですね^^;)。
ただし、真の意味での解像度があるかどうか、は、これまで見てきたPentax Or-6と似ていて微妙に霞む感じがあり、悪シーイングの中でも南南温帯縞ははっきりするものの、その中の微細なものが見えているかというと微妙ではあるのですが、十分良く見えるヌケということで星3つとしました。
ちなみに非SMCのOr-6よりはコントラストが高く、良く見えます。ついでにいうと、最近入手出来てしまったSMC O-6もこのXP-3.8に近い解像度とコントラストがありました。
[Vixen HR 2.4mm] 収差☆☆☆+ / ヌケ☆☆+ / コントラスト☆☆☆ :総合9点
高いストレール強度を視野周辺まで確保したという看板に偽りはなく、全体として収差補正がほぼ完璧で、良く見える第一級品でした。高倍率ながら見えている模様のコントラストも十分で、良く見える高倍率アイピースであることが確認できます。しかしながら、高倍率になっていても南南温帯縞の中の様子や南極地方の中の模様の濃淡が見えているわけではなく、フェストーンも北温帯縞の太さの違いといった程度の見え方でヌケはXP3.8にやや譲る見え方で星2つ半としました。これまでリファレンスにしてきたPentax Or-6とXPの中間くらいの解像度で、視野全面の収差補正とコントラストに卓抜したものがあるアイピースです。
※確かに良く見えるのですが、Paolini氏が絶賛したような見え味には及んでないように思われます。私の眼の水晶体がこの瞳径に耐えないのか?、それとも製造ロットによって何かが違うのか?、あるいは主鏡が悪いのか??、その辺は検証が要るかもしれません。ちなみに手元にあるものは製造番号は5319xxxという今年5月に新品で購入したもので、今回がファーストライトです。初期に絶賛されていたものの製造番号は 5316xxx だったように思われます。
※※人工星像比較での比較結果が出たので申し上げます。「私の眼の水晶体がこの瞳径ではよく見えない」と理解すべき結果だったと判断しています。決して製造ロットによる差の存在が疑われるような撮影結果ではなかったことを追記いたします。
[単レンズ The Kepler 6mm] 収差+ / ヌケ☆☆☆+ / コントラスト☆☆☆+ :総合8点
波面誤差P-V λ/4、マルチコート付きの平凸レンズです。「レンズが無いかのように見える」外観が期待させてくれる、元祖ケプラー式です。
覗いてみると、とにかく収差が強烈です。ホイヘンスがこれを嫌った理由がよく分かります。
故吉田博士によれば中央5°くらいの見掛け視界はいけるとのことでしたが、実際には2~3°、木星の視直径ギリギリが許容範囲です(F5反射だからかも)。木星を中心に持ってくると、ガリレオ衛星は木星の視直径くらいにまで長く伸びて見えるというレベルの猛烈な収差です。木星の外縁部も、必ずしもシャープではありません。
ところが。僅かな光軸ズレの補正も含めて"最も色収差が消える位置"に木星を持ってくると、微細な模様が強いコントラストで浮かび上がってくるアンマッチが凄いのです。
木星の南南温帯縞の様子や南極地方の中の模様の濃淡もいいコントラストで見えていて、北赤道縞のフェストーンや濃淡が「ボケてるのにハッキリ濃く見える」ナゾの素晴らしい見え味です。(※ボケてるといってもごくごく僅かです。後述の人工星の写真のように、普通にきれいな像を結んでいます。)
なぜそうなるのかは全く理解できませんが、感覚としてはXPはHRでみる微細模様が「モザイク処理」的なもうそれ以上情報が含まれていない感じを受けるのに対して、単レンズは「情報が含まれているけどボカシが入れられてる」ような像質の違いです。完全ランダムなディストーションとは違った系統立てられたボケ方から、人間の脳が何かを再生するのかもしれません。この微小分解能に対する情報量の豊富さから、ヌケは星3つ半をつけました。XPを凌駕します。
総合的にはとてもHRやXPと戦える性能ではないのですが、中心像に限定すれば、像質は違うけれどもこれらを凌駕できるという結果です。このことは星像対決でも定量的に明らかにできればと思います。
[λ魂 SR-4mm] 収差☆☆+ / ヌケ☆☆☆+ / コントラスト☆☆☆: 総合9.0点
さて、ここまで負けナシだったSR-4に迷光処理を施した「λ魂」SR-4です。素のSR-4とも比べてみましたが、迷光が減った分だけ確実にコントラストがアップして見易くなっています。収差については、単レンズはもちろんハイゲンスやミッテンゼーよりずっと上で、特に中心像はかなりスッキリした像を結びます。
こちらも、やはりXPやHRより僅かだけ細かい模様が良く見えている一方で、単レンズのようなボケはありません。木星面の南南温帯縞の存在だけでない細い太いといった様子や、南極方面の濃淡が見えますが、単レンズよりもややコントラストがやや弱く感じられました。シャープ感では単レンズに勝り、解像度とコントラストでやや負けています。
-------
■ 第一ラウンド概況
そういうわけで、アイピース頂上対決の第一ラウンドは 単レンズKeplerが僅差でSRをリードし、半馬身遅れてXP、そこからやや遅れてHRという順序で残り半周(星像対決)を戦います。
-----------
■ 付録: 「人工星」撮影での気付き
久しぶりに雨が降ってない私が自宅にいる日の夜ということで、準備してあった人工星の撮影もトライしました。自宅敷地内で取れる最長距離を使い切り、100μmのピンホールで0.34秒角と、口径20cmの分解能以下の像を得ることができました。
ですが、これを撮影していて1つ問題に気付いてしまいました。
それは、XPやHRのような高倍率アイピースと、6mm程度のアイピースとでは回折像の気流(?)での揺れ方が違うということです。高倍率アイピースでは撮影している回折リングが大きく揺れるのです。
どうも、接眼筒内というか拡大撮影筒が銀色対策されていないことが原因くさく(撮影等を外して覗くとそのような揺れが観察されなくなるので)、小さい射出瞳のアイピースではわずかな密度の濃淡が通過すると全体が揺らされるようです。これは、高倍率アイピースに関する考察で、過剰倍率が分解能そのものを下げるのと同じメカニズムではないか、、と疑っています。
そう考えると、HRの私による眼視評価がやや低めになっている原因が私の水晶体にある可能性もあり、やはり写真判定が必要だとの認識を強めています。
--------- 余談(光軸について)
※それにしても、この倍率に対応する光軸調整のシビアさがよく分かりました。よく、「光軸調整は星を見ながら」というのも聞きますが、ピントを大きくずらしての大雑把な調整ならともかく、この倍率では不可能です。自分が身動きしても視野が揺れてしまうような拡大率では、とても光軸調整ノブを回せるとは思えませんし、回した途端にミラーが動いて星はどこか視野の外です。。。(なんか簡単にゆるーくやる方法ないかなー)
=========================
追記:
※アイピース対決では、「コメントに書き込めなかった」ということがあったようです。このbloggerとブラウザの相性によって発生する現象のようです。
当blogでは、書き込み直後にコメントが反映される設定としておりましたが、その旨記載しておりませんでした。もし、何度もリトライされた方がおられましたら、不愉快であったかもしれません。大変申し訳ありませんでした。
ちなみに、条件としては天候不順でシーイングは最悪、薄雲が途中で通過するような状況の中の強行となりました。20cm/F5ニュートン反射でのトータル3時間ほどの木星眼視比較で,最後は雨がパラついてきて退散です。
ちなみに、全てのアイピースはルーペで拡大(*)しながらゴミ等の付着が無いよう清掃・確認を行って試験しています。(*星のGG氏の手法で、これと女性のまつ毛用の極細綿棒の併用でバッチリ清掃&確認ができております)
さて、結果は…非常にハイレベルな戦いとなっています。皆様に予想いただいたように、中心像だけに限定すると最先端のHRと最古の単レンズがいい勝負になってしまうというあたりがワンダフルです。
正直なところ、この悪シーイング下の眼視だけでは結論が出せないというか、私のボンクラな目では判別が困難な部分が残り、星像対決必須です。ちなみに人工星撮影にもトライ中ですが、後述のように超高倍率アイピースの問題点が見えてきてしまいました。射出瞳が小さいというのは色々不利なように思えます。
と、いろいろエクスキューズが付くのですが、まずは第一ラウンドの採点はしてみました。それぞれに像の差は確かにあります。
頂上対決のトップ選手たち(このほかに五藤MH-6とEIKOW H-6) (天候不順の間に SMC O-6 が生えてきちゃった ^^;) |
■ 眼視インプレッション
「収差」は木星のエッジのシャープさで判定しています。また、「ヌケ」が、今回の眼視対決で最も重視する「細かい模様が見えるかどうか」の評価となります。収差とも一定の相関があると思われます。「コントラスト」は模様の見え方がハッキリするかどうかを評価しています。また、中心像以外は評価対象外です。
(前回とは☆の基準が異なる相対評価ですので、ご注意ください)
[五藤光学 MH-6mm] 収差☆+ / ヌケ☆ / コントラスト ☆ :総合3.5点
名門の2枚玉ということで密かに期待していたダークホースだったのですが、全くの期待外れに終わりました。2枚玉なのにゴーストの発生が全体のコントラストを下げ、視野の背景も白みがかっており、ヌケもよくありません。また、収差の出方がニュートン反射に合っていないのか、そもそものシャープさにも欠ける像質でした。収差を度外視したヌケにも見るべきところはなく、真面目に作ったのかどうか疑いたくなる出来で、中華200円代ラムスデンの足元にも及ばぬ残念な結果でした。
※ちなみに入手したものの状態は悪くなく、レンズに傷などがないことも確認済です。
[EIKOW H-6mm] 収差☆ / ヌケ☆☆- / コントラスト ☆☆ :総合4.8点
星像対決でヌケが良いように見えていたのですが、木星像ではそこまでではありませんでした。五藤のMH-6よりは木星面の細部が見えてはいるのですが、収差そのもので木星の輪郭がやや崩れて見えるようで、特になまじ修正された色収差と強めのゴーストがコントラストを下げていて見えづらく、損をしている感じでした。ちなみに後述の単レンズと比較すると中心像は単レンズの方がずっと上ですが、視野全体で見るとこのハイゲンスの方がマシというバランスのように見えます。
[SMC PENTAX XP-3.8mm] 収差☆☆☆+ / ヌケ☆☆☆ / コントラスト ☆☆☆ :総合9.5点
さすがに定評あるSMCシリーズです。投影用と銘打っているだけあってアイポイントは短くてとても覗きにくいですが、良く見えます。ハイゲンスと比べると収差補正がビシっと行き届いていて気持ちのいい像を結んでくれます(ハイゲンスと比べるなよって話ですね^^;)。
ただし、真の意味での解像度があるかどうか、は、これまで見てきたPentax Or-6と似ていて微妙に霞む感じがあり、悪シーイングの中でも南南温帯縞ははっきりするものの、その中の微細なものが見えているかというと微妙ではあるのですが、十分良く見えるヌケということで星3つとしました。
ちなみに非SMCのOr-6よりはコントラストが高く、良く見えます。ついでにいうと、最近入手出来てしまったSMC O-6もこのXP-3.8に近い解像度とコントラストがありました。
[Vixen HR 2.4mm] 収差☆☆☆+ / ヌケ☆☆+ / コントラスト☆☆☆ :総合9点
高いストレール強度を視野周辺まで確保したという看板に偽りはなく、全体として収差補正がほぼ完璧で、良く見える第一級品でした。高倍率ながら見えている模様のコントラストも十分で、良く見える高倍率アイピースであることが確認できます。しかしながら、高倍率になっていても南南温帯縞の中の様子や南極地方の中の模様の濃淡が見えているわけではなく、フェストーンも北温帯縞の太さの違いといった程度の見え方でヌケはXP3.8にやや譲る見え方で星2つ半としました。これまでリファレンスにしてきたPentax Or-6とXPの中間くらいの解像度で、視野全面の収差補正とコントラストに卓抜したものがあるアイピースです。
※確かに良く見えるのですが、Paolini氏が絶賛したような見え味には及んでないように思われます。私の眼の水晶体がこの瞳径に耐えないのか?、それとも製造ロットによって何かが違うのか?、あるいは主鏡が悪いのか??、その辺は検証が要るかもしれません。ちなみに手元にあるものは製造番号は5319xxxという今年5月に新品で購入したもので、今回がファーストライトです。初期に絶賛されていたものの製造番号は 5316xxx だったように思われます。
※※人工星像比較での比較結果が出たので申し上げます。「私の眼の水晶体がこの瞳径ではよく見えない」と理解すべき結果だったと判断しています。決して製造ロットによる差の存在が疑われるような撮影結果ではなかったことを追記いたします。
[単レンズ The Kepler 6mm] 収差+ / ヌケ☆☆☆+ / コントラスト☆☆☆+ :総合8点
波面誤差P-V λ/4、マルチコート付きの平凸レンズです。「レンズが無いかのように見える」外観が期待させてくれる、元祖ケプラー式です。
覗いてみると、とにかく収差が強烈です。ホイヘンスがこれを嫌った理由がよく分かります。
故吉田博士によれば中央5°くらいの見掛け視界はいけるとのことでしたが、実際には2~3°、木星の視直径ギリギリが許容範囲です(F5反射だからかも)。木星を中心に持ってくると、ガリレオ衛星は木星の視直径くらいにまで長く伸びて見えるというレベルの猛烈な収差です。木星の外縁部も、必ずしもシャープではありません。
ところが。僅かな光軸ズレの補正も含めて"最も色収差が消える位置"に木星を持ってくると、微細な模様が強いコントラストで浮かび上がってくるアンマッチが凄いのです。
木星の南南温帯縞の様子や南極地方の中の模様の濃淡もいいコントラストで見えていて、北赤道縞のフェストーンや濃淡が「ボケてるのにハッキリ濃く見える」ナゾの素晴らしい見え味です。(※ボケてるといってもごくごく僅かです。後述の人工星の写真のように、普通にきれいな像を結んでいます。)
なぜそうなるのかは全く理解できませんが、感覚としてはXPはHRでみる微細模様が「モザイク処理」的なもうそれ以上情報が含まれていない感じを受けるのに対して、単レンズは「情報が含まれているけどボカシが入れられてる」ような像質の違いです。完全ランダムなディストーションとは違った系統立てられたボケ方から、人間の脳が何かを再生するのかもしれません。この微小分解能に対する情報量の豊富さから、ヌケは星3つ半をつけました。XPを凌駕します。
総合的にはとてもHRやXPと戦える性能ではないのですが、中心像に限定すれば、像質は違うけれどもこれらを凌駕できるという結果です。このことは星像対決でも定量的に明らかにできればと思います。
[λ魂 SR-4mm] 収差☆☆+ / ヌケ☆☆☆+ / コントラスト☆☆☆: 総合9.0点
さて、ここまで負けナシだったSR-4に迷光処理を施した「λ魂」SR-4です。素のSR-4とも比べてみましたが、迷光が減った分だけ確実にコントラストがアップして見易くなっています。収差については、単レンズはもちろんハイゲンスやミッテンゼーよりずっと上で、特に中心像はかなりスッキリした像を結びます。
こちらも、やはりXPやHRより僅かだけ細かい模様が良く見えている一方で、単レンズのようなボケはありません。木星面の南南温帯縞の存在だけでない細い太いといった様子や、南極方面の濃淡が見えますが、単レンズよりもややコントラストがやや弱く感じられました。シャープ感では単レンズに勝り、解像度とコントラストでやや負けています。
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■ 第一ラウンド概況
そういうわけで、アイピース頂上対決の第一ラウンドは 単レンズKeplerが僅差でSRをリードし、半馬身遅れてXP、そこからやや遅れてHRという順序で残り半周(星像対決)を戦います。
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■ 付録: 「人工星」撮影での気付き
久しぶりに雨が降ってない私が自宅にいる日の夜ということで、準備してあった人工星の撮影もトライしました。自宅敷地内で取れる最長距離を使い切り、100μmのピンホールで0.34秒角と、口径20cmの分解能以下の像を得ることができました。
人工星像の比較(0.34秒角: φ0.1mm / L=60m, 1000フレーム程度のコンポジット) この像を見ていると、ナントカ収差ってそんなに大事なんでしたっけ?と思わざるを得ません。 (惑星観察に大切な分解能に限って、ですが) |
ですが、これを撮影していて1つ問題に気付いてしまいました。
それは、XPやHRのような高倍率アイピースと、6mm程度のアイピースとでは回折像の気流(?)での揺れ方が違うということです。高倍率アイピースでは撮影している回折リングが大きく揺れるのです。
どうも、接眼筒内というか拡大撮影筒が銀色対策されていないことが原因くさく(撮影等を外して覗くとそのような揺れが観察されなくなるので)、小さい射出瞳のアイピースではわずかな密度の濃淡が通過すると全体が揺らされるようです。これは、高倍率アイピースに関する考察で、過剰倍率が分解能そのものを下げるのと同じメカニズムではないか、、と疑っています。
そう考えると、HRの私による眼視評価がやや低めになっている原因が私の水晶体にある可能性もあり、やはり写真判定が必要だとの認識を強めています。
--------- 余談(光軸について)
※それにしても、この倍率に対応する光軸調整のシビアさがよく分かりました。よく、「光軸調整は星を見ながら」というのも聞きますが、ピントを大きくずらしての大雑把な調整ならともかく、この倍率では不可能です。自分が身動きしても視野が揺れてしまうような拡大率では、とても光軸調整ノブを回せるとは思えませんし、回した途端にミラーが動いて星はどこか視野の外です。。。(なんか簡単にゆるーくやる方法ないかなー)
=========================
追記:
※アイピース対決では、「コメントに書き込めなかった」ということがあったようです。このbloggerとブラウザの相性によって発生する現象のようです。
当blogでは、書き込み直後にコメントが反映される設定としておりましたが、その旨記載しておりませんでした。もし、何度もリトライされた方がおられましたら、不愉快であったかもしれません。大変申し訳ありませんでした。
コメント
なぜか生えてきた(笑)、SMC Or6㎜も、番外で良いので詳細なレポートが見たかったです(個人的に、SMC Or5㎜を持っているので)
私の投票したHR2.4㎜ですが、ヌケでは少し低い得点ですが、総合点では2位で、まあまあ健闘ですね。
ただ少し気になるのが、HRは1本だけ特に焦点距離が短いので倍率が高くなり、コントラストや明るさの点でかなり不利になるのでは?という疑問です(もしかしたら、ヌケに関しても?)
本来なら同じ焦点距離に揃えたいところだと思いますが、現実的には厳しいですよね・・
あとシーイングも悪かったようなので、400倍オーバーは厳しく感じます。
でも、色々考察しておられることが、とても興味深く楽しいです。みんなで一緒に現場で見れたら、とても楽しそうですね。
私自身、毎週末の雨にゲンナリしつつ、チャンスを心待ちにしておりました!
HRは、おっしゃるように倍率が一つだけ高いのが気になっておりました。このため、解像度については木星表面の模様のうちどこまで細かいところが見えているか、というところに絞って比較したのでした。コントラストは倍率を差し引いて考えていますが、明るい=良いという評価しないように気をつけました。木星の細い縞と帯が明瞭に分かれて見えるか、という点では、HRは大変優れていました。
ヌケ(解像度)ということに関しては、やはり射出瞳が小さすぎるのも難があるかもしれないです。私の瞳が細い射出瞳に耐えられるほど平滑でないのかも。。。
HRについては第二ラウンドの写真(恒星像)で定量的に見ていきたいと思います。トータルでは相当にいいアイピースだと思っています。人工星も眼視ではかなりクリアに回折環が見えていたので、実はまだ期待しています。
SMC O-6は、油断してたら生えてきてしまいました(^^;)
XPよりは断然覗きやすいですが、像質は大変似ていました(違うレンズ構成なのに不思議なくらい)。解像度については倍率は違いますがXPと同じで、HRより解像度があるように見えました。つまり、解像度の☆評価で言うとXPと同点です。強いてXPとの差を挙げると、コントラストで、XPの方がよりはっきり見える感がありました(倍率が高いのに)。0.5点の差ほどもない違いかと思います。
単レンズやSRと比べると、見えている模様で一番細かいところがやや霞む、というところもXPと大変似ていました。非SMC Or-6との差で言うと、コントラストと明るさでSMCの方が良いという具合です。
(ちなみにバーローも生えてきちゃったのですが、これが駄目な子だったようで、まともなバーロー付きでの評価ができませんでした。いろいろ奥が深いです。)
いやほんと、この感動(?)、様々な方と共有出来たら楽しいだろうな~と思います。自分一人の眼では正直不安なところもありますし、もっと色々な比較ができたら凄いだろうなー、と。
あとは、HR3.4㎜が生えてくるのを待つばかりですね(笑)。シーイングが良いとき、木星に丁度良い倍率のような気がします。HR2.4㎜は、シーイングが良い時に、迫力のある月を見せてくれそうですね。
SMC O-6のレビューもありがとうございます。やはり高性能なアイピースの一つのようですね。大変参考になりました。
バローも生えてきたのですね。もっといっぱい生えたら、駄目な子と良い子を比べると楽しそうですね。アイピースの比較もバローと組み合わせて、できるだけ同じ倍率にそろえる方法もあるかと思いますが、組み合わせが増えてますます大変になりそうですね(苦笑)
HR3.4・・・いやー、ちょっと興味湧いちゃうんですよね。一度は要らぬと思ったTOEもつい比較したくなっちゃいます(大汗)
HR2.4での月も楽しそうですね! というか、好シーイング時にいろいろ観察してみたいです。
バーローも、良い子を探す旅にでてしまうと、大変なことになりそうです (^^;;;)
(テレビュー、いいのですけど、レンズ枚数が多いんだよなあ・・・。)
ならば、焦点距離20mm単レンズ+5倍パワーメイトとか
どうでしょう? 主鏡Fを擬似的に長くして・・・高倍率良像範囲を拡大。
バローでレンズ増えてるわけですが、H-20とかMH-12.5
との組み合わせで好結果を得ています。(パワーメイト買えないので
代用でExplore Scientificの4枚玉エクステンダー5倍です)
こんど自分でも実験してみます。
※この記事を見る直前まで忘れていたことを思い出しました!
以前ヤフオクで、ある出品者から「ペンタSMCオルソを超える
コントラスト」という触れ込みの 怪しい5枚玉PLー6.5mm
(一部非球面)というアイピースを入手していたのです。(格安
3~4千円ぐらいだった記憶)
そして、ペンタSMCオルソ6mmは持っていたので、比較
してみたところ、たしかに木星像にてわずかに優位を確認!
もう遅いですが、貸し出しますですので機会があればレビュー
してみて下さい。
単レンズ、ゼンゼン負けてないですよ。総合得点はアレですが、今回の対決の趣旨である「分解能」に関して言うと、下記のとおりです。(分かりにくくてスミマセン!)
>単レンズKeplerが僅差でSRをリードし、半馬身遅れてXP、そこからやや遅れてHRという順序
そういうわけで、第2ラウンド(恒星像対決)で私の眼で見えたものを定量的に確認して決着としようと思ってます。
そして「バーロー+中焦点」は、私の考える理屈から言っても良像を結ぶのは理に適った話だと思います。どこかやる気のあるメーカーが、「凹レンズ1枚+凸レンズ1枚で最善を尽くす」とかいう方向性でキワモノを作ったりしないかなー、などと、妄想しちゃうところです。
単レンズケプラーは、驚異のヌケですが、驚異の収差です(苦笑)。確かに細かいところがクッキリ見えるのですが、いかんせん中央を外れるとアウトです。光軸にもシビアです。
本当は2枚玉SRがバランス的に良いのでしょうけど、コーティングが無いのと、そこまでの高精度レンズではないというあたりで損をしてます。
そういうわけで、ケプラーに使った平凸レンズをもう一枚注文しました。これを使ってピュアなラムスデンを組んだら最強ではないか、という思惑です。レンズのゴミなんかは掃除すればいいので、ラムスデン氏オリジナルのレンズ間距離にしたら凄そう、、とか、これまた妄想です。
※謎のPL6.5、すっごい興味あります。個別に連絡させてください。
私自身が単身赴任のため自宅にいる機会が少なく、テストできる日が遠くなってしまうかもしれませんが、ものすごく興味あります。(高精度単レンズがもう一枚納入された後くらい…? 納品約一か月待ちです)
凹レンズ1枚+凸レンズ1枚、純ラムスデン、単レンズケプラー
夢がひろがりんぐですな。
そういえば・・・
ありふれた3センチファインダーの接眼部、あれ取り外せば、とりあえず
平凸向かい合わせの純粋ラムスデン、ゲットできるかも・・・?
単レンズケプラーといえば、中村要氏のオール単レンズ・ペッツバール
屈折、当時の物資事情のなかでよく見えるものを工夫していたんだなと。
http://astrophotoclub.com/nakamurakaname/nakamurakaname.htm
そして・・・
スリービーチには高性能SRのほかに、隠し玉がもうひとつ、
(スリービーチのSRはヤフオクでたまに出ます。)
実物を見た人も不明で、今のところレビューも見当たらない
「世界最高峰OR、スリコールスーパーオルソ」という5枚玉の
アッベオルソがあります。(S.OR4mm)
http://img-cdn.jg.jugem.jp/445/3813014/20190716_2183121.jpg
怪しい5枚玉PLとも見比べてみたいですが、入手は困難でしょう。
長々失礼しました。
作ったのは中村氏の師の山本一清博士でした。
読み間違いでした。
ですです。
>ありふれた3センチファインダー
嗚呼! もう処分済みでした…
一つ残った安っぽいのを分解してみたら、残念、単レンズでした(笑
>当時の物資事情のなかで
これ、大昔のガリレオやホイヘンスの頃もそうですが、いい材料や機械なんて無い時代に凄い労力をかけて作った先人がおられるのですよね。理論を実視で確認しながら、修正を重ねていく姿には本当に頭が下がります。
>スリコールスーパーオルソ
これまた凄いのが出てきましたね。名前と外観写真しか知らない幻の1本ですね。
拝見した画像からすると、J.コージャンの5枚玉(1面が放物面)というのにレンズ構成が似ているようにも見えますが、さすがに非球面はないでしょうね。。
このクラスの焦点距離になると、レンズの組み立ても大変だったと思います。
私なんか、たった2枚のラムスデンですら組み立てに苦労してました(不器用なだけですね。苦笑)。