いにしえの入門機、EIKOWスカイホーク360での星雲撮影にトライしてみました。この望遠鏡は、口径60mm、焦点距離300mm(F5)のアクロマートという入門スペックで、コンパクトさがウリの初心者用望遠鏡です。付属する接眼鏡もハイゲンス6mm、20mmがついてバーローや地上プリズムが付属するという、高級な写真機の対極にある内容です。オークションでは2000~8000円くらいで取引されています(ちなみに私も、だいぶ前にオークションで5千円ほどで入手しました)。
■ アクロマート+デュアルバンド系フィルター
なぜこの古い入門望遠鏡を引っ張り出してみたかと言えば、それは、あぷらなーと氏がアクロマートレンズと狭帯域フィルターの組み合わせや、アクロマートとデュアルバンドフィルターの組み合わせで、アポクロマート(いや、それを凌駕するか)のごとき良好な結果が得られる場合があることを実証しておられたからです。
アクロマートのレンズで星を撮影すると、青い滲みが盛大に発生してボテっとした星像になってしまうことは良く知られているところです。ところが、デュアルバンド系の干渉フィルターを使うと、問題となる青や黄色の波長をカットしてしまうので、シャープな像が得られる、というカラクリです。"色消し"はフィルターでやればよい、ということです。
このように青滲みをフィルターでカットする手法は古くからあるのですが、氏はさらに考察を重ねて、近年流行の「デュアルバンド」フィルターであれば、レンズの設計によっては著しくシャープな星像を得られるというところに着眼したわけです。
良好な結果を得るには、透過するバンドの光が色消しになっているタイプのアクロマートである必要があるのですが、この古えのEIKOWスカイホークはカットされる黄色と青のにじみが盛大な像質でしたので期待できると踏んだわけです。
デュアルバンド系の干渉フィルターとしては、サイトロンQBP(Quad Band pass)やIDASのNB(Nebula Booster)などが良く知られています。私も、光害の多い庭からの撮影のために Astronomik UHC-XTフィルターを常用しています。
■ EIKOWスカイホーク360
この鏡筒は、冒頭にも書きましたように、完全に眼視用の小型入門機です。携帯性のために鏡筒の長さは著しく短く設定されていて、鏡筒のかなりの部分がドローチューブという恐るべき設計でもあります。
ただ、美点の一つは、鏡筒も兼ねている接眼筒が43mmP0.75のタカハシ仕様になっているということです。これのおかげで、撮影用パーツの取付けが出来るようになっています。もともとのセットでは、43mm→24.5mmという強烈なアダプターが付いている直焦点撮影を許さぬ古典的眼視仕様なのですが、私はここに 43→52mm、52→42mmというステップアップリングを取り付けて、各種Tマウントアクセサリがつくようにしました。
また、この接眼部は入門機として極太であるだけでなく、ガタの少ない上等な接眼部になっているという点は特筆すべきところです。減速装置はついていないので、写真用にはピント合わせがやや難しくはありますが、それなりのスムースさで合焦操作ができます。
もちろん、対物レンズは古典的なアクロマートレンズで、F5という極端な短焦点が与えられています。
あぷらなーと氏が使用しているKenko SE102 / 120 や Skywatcher のBK150750鏡筒もそれぞれF5ではありますが、大口径だけあって焦点距離が 500~750mmとそれなりに取れるようになっています。
一方のエイコースカイホークは、口径が60mmしかありませんから、同じF5でも焦点距離が300mmにしかなりません。この焦点距離ですと、普通に考えると像面湾曲が強烈になりそうな懸念があります。
そこで、今回はフラットナーレンズとしてKenko ACクローズアップレンズ No.4 を使用しました。52mmのものをステップアップリングの間に挟むことで、取り付けも簡単です。
この AC C.L. No.4をカメラの直前に挟むことで、実測では焦点距離は220mm(×0.73)となり、スカイホークもF3.7の写真鏡気取りであります。
難点は赤道儀への固定で、付属のプラスチック製鏡筒バンドでは重心位置が撮影向きではなく、どうしたものかなあという感じです(鏡筒よりカメラの方が重い感じ)。
今回は、写真のごとくカメラレンズのように取り付けて、カメラを赤道儀にカメラネジで固定する、というかなり強引な方法を採りました。
たわみやすくてガイドなどに支障はあると思いますので、普通はちゃんとした鏡筒バンドやガイド鏡用の支持具などを用いた方がいいと思います。
■ 撮影結果
調子に乗って、いくつか撮影してみました。
デュアルバンドフィルターのおかげで、青滲みは無事取り除かれ、それなりに見られる画質にはなってくれています。ただし、球面収差はいかんともしがたいものがあり、ものすごくシャープかと言われるとそうではありません。
また、クローズアップレンズのおかげで心配したほどではありませんが、ちゃんと設計・調整したわけでもないことも手伝って、周辺はコマ収差で荒れています。また、像面湾曲も完全に取りされているわけではなさそうで、良像を得ようとするとチューニングは要りそうです。
…とはいえ、いつも使用している1000mmとは違う被写体を狙えるお気楽機材としてはアリだなという結果となりました。抜群に良い写真が撮れるわけではありませんが、高価な鏡筒を用いずとも、この画角の写真をそれなりに楽しむことはできそうです。
EIKOWスカイホーク360 で撮影したバラ星雲 D=60mm、FL=300mm (F5), ACクローズアップレンズNo.4 (×0.73, 220mm/F3.7相当), Astronomik UHC-XTフィルタ, EOS kiss X5, ISO800, 4分×14枚, トリミング |
■ アクロマート+デュアルバンド系フィルター
なぜこの古い入門望遠鏡を引っ張り出してみたかと言えば、それは、あぷらなーと氏がアクロマートレンズと狭帯域フィルターの組み合わせや、アクロマートとデュアルバンドフィルターの組み合わせで、アポクロマート(いや、それを凌駕するか)のごとき良好な結果が得られる場合があることを実証しておられたからです。
アクロマートのレンズで星を撮影すると、青い滲みが盛大に発生してボテっとした星像になってしまうことは良く知られているところです。ところが、デュアルバンド系の干渉フィルターを使うと、問題となる青や黄色の波長をカットしてしまうので、シャープな像が得られる、というカラクリです。"色消し"はフィルターでやればよい、ということです。
このように青滲みをフィルターでカットする手法は古くからあるのですが、氏はさらに考察を重ねて、近年流行の「デュアルバンド」フィルターであれば、レンズの設計によっては著しくシャープな星像を得られるというところに着眼したわけです。
良好な結果を得るには、透過するバンドの光が色消しになっているタイプのアクロマートである必要があるのですが、この古えのEIKOWスカイホークはカットされる黄色と青のにじみが盛大な像質でしたので期待できると踏んだわけです。
デュアルバンド系の干渉フィルターとしては、サイトロンQBP(Quad Band pass)やIDASのNB(Nebula Booster)などが良く知られています。私も、光害の多い庭からの撮影のために Astronomik UHC-XTフィルターを常用しています。
■ EIKOWスカイホーク360
EIKOW スカイホーク360 |
ただ、美点の一つは、鏡筒も兼ねている接眼筒が43mmP0.75のタカハシ仕様になっているということです。これのおかげで、撮影用パーツの取付けが出来るようになっています。もともとのセットでは、43mm→24.5mmという強烈なアダプターが付いている直焦点撮影を許さぬ古典的眼視仕様なのですが、私はここに 43→52mm、52→42mmというステップアップリングを取り付けて、各種Tマウントアクセサリがつくようにしました。
また、この接眼部は入門機として極太であるだけでなく、ガタの少ない上等な接眼部になっているという点は特筆すべきところです。減速装置はついていないので、写真用にはピント合わせがやや難しくはありますが、それなりのスムースさで合焦操作ができます。
もちろん、対物レンズは古典的なアクロマートレンズで、F5という極端な短焦点が与えられています。
あぷらなーと氏が使用しているKenko SE102 / 120 や Skywatcher のBK150750鏡筒もそれぞれF5ではありますが、大口径だけあって焦点距離が 500~750mmとそれなりに取れるようになっています。
一方のエイコースカイホークは、口径が60mmしかありませんから、同じF5でも焦点距離が300mmにしかなりません。この焦点距離ですと、普通に考えると像面湾曲が強烈になりそうな懸念があります。
カメラの先に装着されたスカイホーク360 (銀紙は夜露対策です) |
この AC C.L. No.4をカメラの直前に挟むことで、実測では焦点距離は220mm(×0.73)となり、スカイホークもF3.7の写真鏡気取りであります。
難点は赤道儀への固定で、付属のプラスチック製鏡筒バンドでは重心位置が撮影向きではなく、どうしたものかなあという感じです(鏡筒よりカメラの方が重い感じ)。
今回は、写真のごとくカメラレンズのように取り付けて、カメラを赤道儀にカメラネジで固定する、というかなり強引な方法を採りました。
たわみやすくてガイドなどに支障はあると思いますので、普通はちゃんとした鏡筒バンドやガイド鏡用の支持具などを用いた方がいいと思います。
■ 撮影結果
バラ星雲(写野全景)
EIKOW スカイホーク360
D60mm,FL300mm/F5,
ACクローズアップレンズNo.4
(220mm/F3.7相当),
Astronomik UHC-XTフィルタ,
EOS kiss X5, ISO800, 5分×18枚,
トリミングなし
|
また、クローズアップレンズのおかげで心配したほどではありませんが、ちゃんと設計・調整したわけでもないことも手伝って、周辺はコマ収差で荒れています。また、像面湾曲も完全に取りされているわけではなさそうで、良像を得ようとするとチューニングは要りそうです。
…とはいえ、いつも使用している1000mmとは違う被写体を狙えるお気楽機材としてはアリだなという結果となりました。抜群に良い写真が撮れるわけではありませんが、高価な鏡筒を用いずとも、この画角の写真をそれなりに楽しむことはできそうです。
カリフォルニア星雲にも丁度良い画角です (カブっちゃった。) |
コメント
各種のACクローズアップレンズには自分も随分お世話になりましたが、放物面鏡やシュミット・ニュートンにはフラットナ―・コマコレクターとしての相性がそこそこ良かったものの、屈折には今一つな感じがしていました。屈折については光学シミュレーションをしてないので、断言はできないですけど。
屈折用のレデューサーを導入すればいいのですが、おそらく「EIKOWスカイホーク360鏡筒」の数倍の価格になってしまうと思いますので、貴ブログの運営ポリシーには全く合わないかと。
自分の手元にはボーグの65アクロマート鏡筒専用レデューサーがありますので、これを使った場合とクローズアップレンズをレデューサーにした場合が比較できたら面白いですね。検証してみます!
こちらも、いにしえより「アクロマート足軽」召喚! という具合です(笑
ACクローズアップレンズは使い道色々なようですね。屈折望遠鏡との相性は、クローズアップレンズの色消しや収差補正との相性もありそうで、なかなか一筋縄ではいかないのかもしれません。
ただ、屈折でも反射でも、短焦点になってくると顕著な像面湾曲が補正されて、比較的ピントが合ってくるというご利益はあるように思っています。
高価なフラットナー(専用設計かとは思いますが)との比較は興味ありますね。
(足軽スカイホーク君にはちょっと不釣り合いになってしまいそうです ^^;)
仰るとおり短焦点アクロは像面湾曲がキツい上に、妙な色消しがなされてることもありますので難敵だと思うのですが、色収差傾向の見立て・クローズアップレンズの活用、ともにお見事!
今後、どのアクロマートが撮影用に耐えるか色んなユーザーさんのレポートが出てくると楽しいですね。
じつは、最初にあぷらなーとさんの記事とM8を見たときに、手元のスカイホークが浮かんだのでした。
色々なアクロマートが試されたら面白いですね!
実は私、ガイド鏡も狙ってます。
そういえば昔、アクロマートとμフィルターで木星がやたらよく見えたのを思い出しました。
クローズアップレンズのレデューサー効果も良く出ています。
私も11月の半ばにスカイホーク君とQHY5L-ⅡM君の組合せでM42を撮りましたが、
QHY5L-ⅡMは全域の光を白色として受光するのでアクロマートでは星がボテボテになりました。
未だLPS-P2を使ってますがLED照明の時代には流石に力不足なので、丁度デュアル
バンドフィルターを探していました。価格的に買いやすいZWO デュオバンドフィルター
(31.7mm)の光学特性がイマイチ分かりません。LEDの青色のピークをカットしてるのなら
買いですが、、。
このスカイホーク君も、さすがに素のままでは元のアクロマートのにじみが目立ってしまいますね。
仰るように、モノクロではなおのことと思います。
さて、ZWOのデュオバンドですが、かなりの範囲はカットされているようで、赤い星雲には威力がありそうです。
上でコメント頂いてるシベットさんが記事を書かれています。参考になるかと思います。
http://uwakinabokura.livedoor.blog/archives/4374283.html
http://uwakinabokura.livedoor.blog/archives/4422795.html
5日に東京に行くので協栄さんで早速購入しましょう。
シベットさんって「浮気なぼくら」の管理人さんなんですね。
以前から望遠鏡の凄い改造を記事などを興味深く拝見していました。
いやはやLambdaさんといいシベットさんといい凄い人が居るもんですね~。
シベットさんのブログは凄いです。かのSR4mmも、ずいぶん前にその凄さを見出して試しておられました。他のトライアルも凄いものばかりで、いつも刺激を受けています。