エコノミー機材⑧ - SvBONY UHC光害カットフィルター

 先にM51の撮影例に使った光害カットの干渉フィルターです。AliExpressのSvBONYショップで、クリップオンタイプのUHCフィルターが5,500円でした。ほかに1.25インチ用2,700円と2インチ用4,300円(いずれも2019.3時点)があるようで、この手の光害カットフィルタとしてはかなりエコノミーです。
 SvBONYは、アイピースがなかなか当たりだったので、二匹目のドジョウを狙ってみた、というところです。ちなみにこのフィルター、特性を見る限りOPTOLONG UHCフィルターと全く同じものであるように見えます。クリップの形状も同じですね。
 余談ながら、OPTOLONG社も中国の会社で、雲南省のようです。一方のSvBONYは中国鄭州の会社であるようです。鄭州というと三国志でいえば曹操の初期の頃の勢力圏、雲南省というと巴蜀の南側で諸葛孔明が孟獲の七禽七放とかやって活躍したあたりですね。

SvBONY UHC filter on an EOS
SvBONY UHC フィルター
クリップオン・フィルターをカメラに装着したところ

■ インプレ:SvBONY UHC フィルター
 UHCフィルターは、Ultra High Contrast と名付けられた、星雲由来の輝線を透過させるタイプの光害カットフィルターです。購入したものは「クリップオン」タイプなので、カメラのミラーの前に装着します。
 装着にはややコツが要りますが、このフィルターの場合写真の「UHC」と書かれている辺りを指で押さえながら、SvBONYと書いてあるあたりをグイと押すとバッチリはまります。もちろん、フィルター面に触れてはいけません。フィルターの蒸着面をよく見ると、カメラの画角に相当する透過すべき四角い領域だけがきちんとした特性となっていて、その周辺はテキトーに処理されているようですので、取り付けが斜めにならないように注意します。
 この手のクリップオンタイプのフィルターは、レンズ類が変わっても使えるのでいい感じです。

■ 各社フィルターの特性を比較する
 「UHC」を名乗るフィルターはほかにも数種類あるようですが、同じ名称でもメーカーによって特性が全然違うので注意が要るようです。
 フィルターの特性は、各社から公表されてはいるのですが、グラフの縦横比などがイマイチ合っていなくてなかなか比較ができませんでしたので、一念発起していくつかのフィルターの特性をトレースしてプロットしてみました。

different characteristics of UHC / NEBULA filters
各社天体用光害カット系干渉フィルターの特性
(各種元データは各社の公表値をプロット)

 ここでは、同じUHCを冠している Astronomik UHC、および同社 CLS、サイトロンから販売されている QuadBP(QBP)、そして有名なIDAS LPS-D2 を比較対象としています。
 いわゆる赤いHαの波長帯近辺については、各社それほど大きい差があるわけではありません。それぞれナトリウム灯も白色LEDもよく避けています。その中ではQuadBPが狭めのバンドになっているようで、特に赤外域を明確にカットしています。
 問題は青いHβ側で、各社各様です。「白色LEDの光をカット」することを謳ったIDAS LPS-D2フィルターは、青い短波長側のLED光をかなりカットしている一方で、500nm以上のところは結構ブロードに透過する特性になっています。白色LEDのピークを避けつつ、短い露光時間での撮影を狙う、という方向性のように見えます。さすがに光害対策を謳っているだけあってよいバランスではあります。
 青い光を最もカットしているのは、Astronomik のUHCです。QuadBPもこれに近いものがありますが、それよりさらに狭くなっていて青カブリ防止という観点では最も強力だと考えられます。
 QuadBPも、青側のピークをしっかり避けていて、こちらもカブリを防止できそうです。
 さて、問題のSvBONYですが、QuadBPによく似た特性ながらやや中途半端な特性で、カットは460nmより短い波長側になっていて、QuadBPの470nm近辺とはやや差があります。前回のM51で青カブリが生じたのは、青側のカットがちょっと短波長にズレているせいであるようです。とはいえ、白色LEDの青側の光を半分以上はカットしてくれそうで、ご利益はあると言えそうです。

 こうして比較してみると、赤外を気にしないのであれば Astronomik UHCが最も狭いバンドで光害をカットしてくれるように思えます。これに対してSvBONY UHCは青側を半分くらいは通してしまう設計ですが、CLSや従来のブロードな光害カットフィルターよりは効き目がありそう、という結論となりました。
 …こうなってくると、Astronomik UHCが欲しくなるわけですが…、安物ポチる前にちゃんと調べろよ、ってお話ですね。
 つぎは赤い星雲で試してみたいのですが…チャンスあるかな??
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