プレートソルビング(PlateSolving) でお気楽天体自動導入

面倒くさい赤道儀のアライメント作業や撮影の構図調整もカンタンに出来るようにしてくれる有り難い「プレートソルビング(Plate Solving)」のためのセッティングを記事にしてみました。

プレートソルビングで導入して撮ってみました
(写真はふたご座M35星団)
 
この機能はAstroArtsのステラショットにもスマートに実装されていますし、ZWO のASIAIR やASIAIR PRO に至ってはPCレスで撮影からガイドからプレートソルビングを実行してくれるお気楽仕様になっています。
 しかしながら、「貧乏人がラクしたければ努力せよ」との啓示が聞こえた気がする私としては、この手のお気楽撮影環境をAPT(Astro Photography Tool, 約2500円)を中心として構築中です。

 APTはPCからカメラや赤道儀を操作して撮影を自動化してくれるアプリで、PHD2などのアプリとの連携でオートガイドやディザリング撮影にも対応してくれる優等生です。デジタル一眼(DSLR)でも、ライブ画像をPC画面に表示したり、メモリカードが無くても撮影した画像をPCに保存してくれたりしますし、その他にもピント合わせ支援などの天体撮影に役立つ機能が搭載されています。APT自体は英語ですが、マウスをかざすと現れる「ツールチップ」には日本語版があり、操作の不安は少なくなっています。

 今回は、このAPTの Plate Solving(*Point Craftと呼んでいます) 機能を使えるようにするソフト群のインストール編です。 (ご参考→ APTの関連記事、 各種天体撮影関連ソフトウェア

■ PlateSolvingの概要
 今回取り上げる「プレートソルビング(Plate Solving)」というのは、撮影した画像の中心が天球上のどの位置(赤経赤緯)のどういう向きのものなのかを割り出す機能です。この割り出すまでの計算を、プレートソルバ(Plate Solver)と呼ばれる類のソフトがやってくれます。

 このプレートソルビングができるようになると、鏡筒が向いている向きが分かるようになり、意図した方向とのズレを認識しながら、目標の構図に天体が来るように導入できるようになるというわけです。

 平たく言うと、赤道儀のアライメントがいい加減でも正確な天体の導入が可能になり、PCの画面で撮影した画像を見ながら「構図の中央に持ってきたい場所をマウスクリック」するだけで、そういう構図になるように赤道儀を自動で動かしてくれる機能です。

 アライメントや、構図決めのための微調整は意外と時間がかかったりしますから、大助かりです。
APTでのプレートソルビング "Point Craft" の様子
Solve → Sync で望遠鏡アライメントが完了し、
GOTO++で正確な天体導入、Aimで構図の微調整ができます

■ 必要なソフトのインストール
 APTと連携して動作する Plate Solver は2つあり、2つともインストールしておく必要があります。必要なソフトは、「Plate Solve 2」と「All Sky Plate Solver (ASPS)」の2つです。

Plate Solve 2のインストール
 Plate Solve 2は、「大体の方向が分かっている時」に使用するソフトです。
 PlateSolve2のサイトから、ソフトウェアと星表データをダウンロードしてインストールします。星表データはAPM Catalog と USAC3 Catalog をインストールします。APMはインストーラに従えばOKですが、USAC3は解凍して適切なフォルダにデータファイル群を置く必要があります。

 設定では、これらの星表データをインストールしたフォルダを指定する項目がありますので、適切に設定します。私は、両社ともPlateSolve2がインストールされたフォルダにサブフォルダを作って、そこに星表データを入れました。

All Sky Plate Solver (ASPS)のインストール
 ASPSは、「向いてる方向が分からなくても」プレートソルビングができる Blind Solvingが特長のソフトです。インストールや設定にややクセがあります。
 ASPSのサイトから、ソフトをダウンロードしてインストールします。起動すると、自分の機材の画角に合致する星表データをダウンロードするようになっています(ダウンロードにはけっこう時間がかかります)。

 このASPSを使う上で重要な設定が、画角やピクセル当たりの分解能です。設定で入力する「素子サイズ」と「焦点距離」が間違っていると計算失敗になります。特にレデューサーやコマコレクターなどを使用している時には自分が思っている焦点距離と実際が違っていることがあって要注意です(現に私のSE200N+コマコレでは、1000mmではなく910mmとなっていました)。
Webで計算した結果は
ここをクリックして閲覧
こうしたエラーの多くは、「Setting Assistant」が解決を支援してくれます。これは、実際に撮影した画像ファイルを指定して、Webサーバー上でプレートソルビングを行ってくれるサイトに接続し、その情報を使って1ピクセルの解像度を設定するものです。
 Webブラウザで接続先にファイルをアップロードし、結果が出てきたところで「full」データをクリック(図参照)すると、詳細なデータが現れます。数字の羅列のようにも見えますが、検索で「Pixel Scale」を調べると、1ピクセルの解像度が分かるようになっています(単位は arcsec/pix)。
 この解像度の値を、ASPSの「Setting Assistant」のstep4に入力してやると、その数値を使ってプレートソルビングをやってくれます。結果として、自分の使っている光学系の合成焦点距離を知ることが出来ます。
 このように設定しておくと、ASPSがAPTから呼び出されたときに、BlindSolveで作動してくれます。

■ APTでの設定
 プレートソルビングの設定を、APT側でも行っておく必要があります。APTでは「Point Craft」と呼ぶ機能がプレートソルビングに該当します。ここの設定画面を開いて、APTと上記の外部アプリとを連携させる必要があります。
 前段階として、カメラや赤道儀との接続が確立されている必要があります(こちらの記事に多少の記載があります)。

Toolタブの下
"Object Calculator"
は設定要です
(1) 外部アプリとの連携
 "Gear"タブにあるPoint Craft を開き、一番下にある「Settings...」を開きます。ここで、上記でインストールした外部アプリのインストールフォルダを設定すれば、ひとまずは設定完了です。
 そのほかに、計算失敗を判断する待ち時間の設定(私は180sに設定してみましたが、成功する時は概ね30秒以内であるようです)や、自動で写野を追い込むときの繰り返し回数などを設定できます。

(2) 画角情報の設定
 CMOSカメラでは自動となるようですが、デジタル一眼の場合には手動で入力してやる必要があります。Point Craft とは別項目の設定ですので、見落としがちです。うまく動かない場合にはここを確認して見るのも良いと思います。
 設定は、"Tools"タブの一番下に設定項目がありますので、自分のカメラや焦点距離の情報を入力すれば完了です。
 各アプリに設定した情報と、こちらの情報とのどちらが参照されるかは私にも分かりませんが、エラーで先に進めないのは画角情報の間違いであることが多いように思います。

(3) 動作確認
 "Shoot" で写真を1コマ撮影(数秒の露光でいいと思います)し、Point Craftでは"Scope Pos"ボタンを押して、現在の赤道儀の大体の向きをAPTに教えます。露光時間は、Cameraタブの右下に入力項目が並んでいますので、ここで設定します。
 この状態で "Solve"を実行してみると、裏でアプリが立ち上がり、プレートソルビングを実行します。計算が完了すると、"Plate-solving result"に、赤経赤緯の情報が現れます。

※最初の確認時には、赤道儀をそこそこアライメントしてからやるのが良いと思います。

■ お気楽アライメントの実際
 以上の設定が完了した状態では、次回からの労力は激減です。赤道儀のアライメントをそこそこに、正確な天体導入や画角決めが出来るようになります。

(a) 極軸合わせ
 撮影のことを考えると、極軸はなるべくちゃんと合わせておいた方が良いです。
極軸合わせはこちらの記事をご参照ください)

(b) 赤道儀の起動時の処置
 電源を入れて、普通はアライメントを開始すると思います。ここで、もっとも簡単なアライメント法(AGT赤道儀の場合はワンスター)を選択して、最初の星を導入させます。
 ここで、正確に基準星が入っているかどうかはお構いなしに「アライメント完了」とします。大雑把な位置が赤道儀に分かればよい、という程度です。

(c) プレートソルビングで同期
 APTで赤道儀やカメラとの接続を確立して露光時間などを設定しておき、Point Craftから次の動作を実行します。
 ①"Scope pos"ボタン → ②"Solve"ボタン → (計算完了したら) → ③"Sync"ボタン

 これで、赤道儀のアライメントは完了です。(*正確に言うと、1スターアライメントが正確に完了した状態です。その状態でも、プレートソルビングによって正確な導入ができます)
 なお、アライメントを全くやらずに "Blind"で対処することも可能です。

(d) 天体の導入
 Point Craft から "objects"ボタンを押し、導入したい天体を選択します。
 そして "GOTO++"を押すと、赤道儀が自動的に動いて天体を導入してくれます。自動導入にズレがあっても、カメラが撮影してプレートソルビングによってズレを認識し、自動で写野中央に導入してくれます。

(f) 構図の調整
 構図の調整には、"Aim"ボタンを使います。これを押して、写っている画像の中心にしたい箇所をマウスクリックして "GOTO++"を実行すると、クリックした箇所が中心になるように赤道儀を動かしてくれます。
 もう、「コントローラを微妙に押して再撮影」を繰り返して構図を調整する必要はありません。

____________
以上のように初回の設定はやや面倒ですが、一度設定してしまえばアライメントで時間をつぶすこともなく、構図も一発で決めてくれる環境が完成で、また一つお気楽環境が前進したのでありました。

・・・と、ここまで書いて思ったのは、「AZ-GTiのアプリ(PC版)もプレートソルビング対応のアップグレード版出ないかな(有償でも)」ということでした。それができたら、電視観望もアライメントレスで正確な導入が出来て、お気楽度最強感半端ないです。


にほんブログ村 写真ブログ 天体写真へ

P.S.
ASPSには「Polar Align」機能があり、北極星周辺が全く見えない環境でも正確な極軸合わせができる夢の機能なのですが、非常に残念なことに、バグのために「今見えている星座」が日本時間に対応しておらず、使用できません。無念…。

コメント

タカsi さんのコメント…
こんにちは。
APTのプレートソルビング機能、これに頼りだすともうダメです(笑)
PointCraftで反転後の自動導入とか、エラーがでて導入できなくなると、パニックです(^^;
長焦点や鏡筒反転等に非常に便利に使っていますが、万能ではないですよね。
それにしても、APTはコスパ高いです。もう手放せません^^
Lambda さんの投稿…
いつもコメントありがとうございます!

このプレートソルビング、私も依存症になること間違いナシです。

確かに、エラーが出るとパニックになるかも、ですね。

そんな時の拠り所として精度良い極軸合わせとsyncはセットかな、と思ってます。

ASPSのポーラーアラインが日本ではダメだと気がついて、ちょっと作戦練り直しです。

APT、コスパ最高です。しかしピント合わせなど、もう一歩追い込みのコツが要るな、と感じております。
n2068dd さんの投稿…
こんにちは。以前SR-4の記事に投稿したことがあります。
プレートソルブ2、僕はSGPで使っています。

一度組むと、保存したパラメーターはいつでも呼び出せるので、撮影時の手間暇はマニュアル時より大幅に減りますね。
誤差が数ピクセル以内に納まるので、感動します。

僕は、これにAFとモザイクとディザーも同時に動作させているので、更に沢山の設定が必要です。
AFは、今はZWOから数万円の低価格のものが市販されるようになったので、たぶん皆さんすでに使われているかと思います。
ビニング設定や、ピント微調整ストローク量の最適な設定が、センサー解像度や焦点距離ごとに適切に設定させないと、綺麗な放物線カーブにできないので、コツは要りますが。
ディザーも、セトリングタイムの設定や、移動量の設定や、誤差の許容量の設定をうまくやらないと撮影がストップしたりしますね。
昔は、マキシムDLしかできなかった高度な機能が、今はこれらが全て無料のNINAでできるというのは素晴らしいと思います。
唯一の欠点はASCOMで、手などがコードに触れてどれか一つでも、瞬間的に通信が遮断されてしまうと、ソフトをリセットさせ再起動させないと復帰出来ないので、そこが問題です。NINAはアスコムスイッチに対応しているとかで、そのあたりが改善されているといいます。
Lambda さんの投稿…
n2068ddさん、コメントありがとうございます!

EAFも含めて、多くのものがPCから制御できるようになって、ソフトの使い勝手が大切になってきたなと私も思います。
各種設定は、使っている機材の組み合わせによって千差万別でしょうから、自分の機材に合わせて行っていく必要がありますね。

そういえば、N.I.N.A はなかなか素晴らしいソフトですね。近代的な(?) UIと相俟って、とってきやすそうだなと思います(内容もAPTと大差ないようには思います)。

好みと自分の使用シーンでの細かい問題の有無などで選んでいくことになると思いますが、どんどん進化して行く世界だけに、進歩していくものを選ぶというのも手かもしれません。