天気が中々回復しないせいか、AZ-GTi経緯台が生えてきてしまいました。載せる鏡筒は、幾度にもわたる引っ越しに付いてきてくれたミザールの150SL鏡筒です。
当ブログは、もともと眼視観望をゆるーく楽しむという高邁な志で始めたのですが、いつしか邪心にとらわれて20cm主鏡が写真練習用になってしまっているので、ここで喝を入れて高邁な志を取り戻そうというわけです。やっぱり、撮影している間がヒマになっちゃうのはつまらないですもんね。
さて、このAZ-GTiに15cm反射を載せようとすると、やや重量オーバー気味なようです。一応はひっくり返らない程度にバランスウェイトをつけているので架台自体は動作するのですが、気に入らないのは三脚、それも三脚架台です。
三脚架台を震源とする揺れがどうにもならないのです。
まあこのチープな経緯台に昔ながらの15cmニュートンを載せるのが間違いというご指摘はその通りなのですが、架台が割としっかりしているだけに残念なところです。
■ 三脚架台のカルマ
この三脚架台というやつ、AZ-GTiに限らずですが、「誰もなんとかしようとしないのか…」と思ってからもう随分な年月が経ちます。
超廉価の入門機から本格的な高級機まで、ぢつは望遠鏡を見ていて一番イラっときておりましたのが、この「三脚架台」なのです。
近年はアメリカや中国の合理的な思想が浸透してきて多少マシになっていますが、それでもやっぱり半世紀ちかく前のセレストロンやミードのフォークマウント用三脚の時代から一歩も脱却できてはいないようで、これは高価なカメラ三脚も同罪です。
もっと部品点数を減らしながら剛にできるというのに、メーカーのやる気が全く感じられません。
この記事では、まず、問題提起をしてみたいと思います。
■ 三脚がトラス構造だとかいう催眠
誰が言ったのか知りませんが、「三脚はトラス構造だから丈夫で安定」という類のご意見もあるようです。しかしながら、ここには異論を差し挟んでおく必要があります。
トラス構造というのは、「回転自由な節点で結合した」「三角形の要素」からなる構造です。三角形というのは安定な形なのです。
そういう目でAZ-GTiの三脚を横から眺めてみた写真を見てみます。
最新の学問領域ではこの図形を三角形と呼ぶ理論があるのかどうか、不勉強な私にはわかりません。
しかし、私の小学生レベルの知識によると普通これは台形と呼ぶ四角形の一種だと思うわけです。三角形とは呼びません。節点も4つです。
そして工学の分野ではこのような4つの要素と節点からなる構造はトラスとは呼ばず、「4リンクビーム」と呼ぶ揺動体ですから、揺れ動くのは当たり前の話です。
一体、誰がなぜ、こんな揺動体の上に精密光学機械を設置しようなどと思ったのかは不明ですが、その後も使われ続けて21世紀まで来てしまったのは残念です。
まさかコレが三角形だという催眠術にかかっている…のではないと信じたいです。
現代の古典的な三脚は、この揺動体の自由な運動を、ネジの締め付けとか開き止めとか地面との摩擦で無理矢理抑え込むという思想です。この、理に適わない強引な方策は、気持ち悪いだけではなく部品点数も増えて、しかも揺れの元凶です。
このたびのAZ-GTiの三脚がイマイチなのもこれが原因です。また同様に、比較的しっかりしてると言われる廉価な入門機も同様の思想に囚われており、それのために多くの部品点数と重量を無駄にしつつ、揺れは収まっていません。
ちなみに、こうした"トラス風味"の呪縛から解き放たれると、開き止め一式と脚のジョイント部品を省略でき、折りたたんだ時にもコンパクトにでき、三脚架台起因の揺動を完全に止め、十分な強度と剛性を保つことができるだろうと思います。
■ 余談: 昨今の開き止めのない三脚
私のAGT赤道儀もそうですが、昨今は開き止めのない三脚がトレンドです。このタイプの三脚は昔のセレストロンやミードが採用していたタイプで、アクセサリー置きなどが"開き止め"ではなく"閉じ止め"になっているものです。
このタイプの三脚は前出の揺動体やトラス構造とは関係がない構造になっていて、トラス風味の呪縛からは解き放たれています。
しかしながら、トラス風味を捨てたまでは良いとして、全ての力がテコの原理で拡大されてジョイント部品に集中する構造は、いま一つです。大抵、ジョイント部は剛性が鉄の1/3しかないアルミだったりするので、これではいくらパイプを太くしたりゴツいストッパーをつけても見かけ倒し感が拭えません。変形しながら揺れるのはジョイントだからです。
メーカーとしては、もう工夫するところなんてないと思い込んでいるジャンルなのかもしれませんが、強化ナントカとかいうがあるところを見ると、課題は解決してないように見えます。
------
※先般のアイピース対決では、「コメントの書き込みが反映されなかった」ということがあったようです。このbloggerとブラウザの相性によって発生する現象のようです。
当blogでは、書き込み直後にコメントが反映される設定としておりましたが、その旨記載しておりませんでした。もし、何度もリトライされた方がおられましたら、不愉快であったかもしれません。申し訳ありませんでした。
当ブログは、もともと眼視観望をゆるーく楽しむという高邁な志で始めたのですが、いつしか邪心にとらわれて20cm主鏡が写真練習用になってしまっているので、ここで喝を入れて高邁な志を取り戻そうというわけです。やっぱり、撮影している間がヒマになっちゃうのはつまらないですもんね。
AZ-GTiに載せてまた光を浴びる150SL |
三脚架台を震源とする揺れがどうにもならないのです。
まあこのチープな経緯台に昔ながらの15cmニュートンを載せるのが間違いというご指摘はその通りなのですが、架台が割としっかりしているだけに残念なところです。
■ 三脚架台のカルマ
この三脚架台というやつ、AZ-GTiに限らずですが、「誰もなんとかしようとしないのか…」と思ってからもう随分な年月が経ちます。
超廉価の入門機から本格的な高級機まで、ぢつは望遠鏡を見ていて一番イラっときておりましたのが、この「三脚架台」なのです。
近年はアメリカや中国の合理的な思想が浸透してきて多少マシになっていますが、それでもやっぱり半世紀ちかく前のセレストロンやミードのフォークマウント用三脚の時代から一歩も脱却できてはいないようで、これは高価なカメラ三脚も同罪です。
もっと部品点数を減らしながら剛にできるというのに、メーカーのやる気が全く感じられません。
この記事では、まず、問題提起をしてみたいと思います。
■ 三脚がトラス構造だとかいう催眠
誰が言ったのか知りませんが、「三脚はトラス構造だから丈夫で安定」という類のご意見もあるようです。しかしながら、ここには異論を差し挟んでおく必要があります。
トラス構造というのは、「回転自由な節点で結合した」「三角形の要素」からなる構造です。三角形というのは安定な形なのです。
そういう目でAZ-GTiの三脚を横から眺めてみた写真を見てみます。
三脚を横から見た図 |
しかし、私の小学生レベルの知識によると普通これは台形と呼ぶ四角形の一種だと思うわけです。三角形とは呼びません。節点も4つです。
そして工学の分野ではこのような4つの要素と節点からなる構造はトラスとは呼ばず、「4リンクビーム」と呼ぶ揺動体ですから、揺れ動くのは当たり前の話です。
一体、誰がなぜ、こんな揺動体の上に精密光学機械を設置しようなどと思ったのかは不明ですが、その後も使われ続けて21世紀まで来てしまったのは残念です。
まさかコレが三角形だという催眠術にかかっている…のではないと信じたいです。
現代の古典的な三脚は、この揺動体の自由な運動を、ネジの締め付けとか開き止めとか地面との摩擦で無理矢理抑え込むという思想です。この、理に適わない強引な方策は、気持ち悪いだけではなく部品点数も増えて、しかも揺れの元凶です。
このたびのAZ-GTiの三脚がイマイチなのもこれが原因です。また同様に、比較的しっかりしてると言われる廉価な入門機も同様の思想に囚われており、それのために多くの部品点数と重量を無駄にしつつ、揺れは収まっていません。
ちなみに、こうした"トラス風味"の呪縛から解き放たれると、開き止め一式と脚のジョイント部品を省略でき、折りたたんだ時にもコンパクトにでき、三脚架台起因の揺動を完全に止め、十分な強度と剛性を保つことができるだろうと思います。
■ 余談: 昨今の開き止めのない三脚
私のAGT赤道儀もそうですが、昨今は開き止めのない三脚がトレンドです。このタイプの三脚は昔のセレストロンやミードが採用していたタイプで、アクセサリー置きなどが"開き止め"ではなく"閉じ止め"になっているものです。
このタイプの三脚は前出の揺動体やトラス構造とは関係がない構造になっていて、トラス風味の呪縛からは解き放たれています。
しかしながら、トラス風味を捨てたまでは良いとして、全ての力がテコの原理で拡大されてジョイント部品に集中する構造は、いま一つです。大抵、ジョイント部は剛性が鉄の1/3しかないアルミだったりするので、これではいくらパイプを太くしたりゴツいストッパーをつけても見かけ倒し感が拭えません。変形しながら揺れるのはジョイントだからです。
メーカーとしては、もう工夫するところなんてないと思い込んでいるジャンルなのかもしれませんが、強化ナントカとかいうがあるところを見ると、課題は解決してないように見えます。
------
※先般のアイピース対決では、「コメントの書き込みが反映されなかった」ということがあったようです。このbloggerとブラウザの相性によって発生する現象のようです。
当blogでは、書き込み直後にコメントが反映される設定としておりましたが、その旨記載しておりませんでした。もし、何度もリトライされた方がおられましたら、不愉快であったかもしれません。申し訳ありませんでした。
コメント
AZ-GTI良いですね!
小型なのに剛性が高いと評判ですね。
三脚の構造に起因する剛性のお話、勉強になります。
私も痛感しております。三脚は大事です!
AZ-GTi、まだ空に向けるのには使えてないのですが、シンプルな構造がガチっとしていていい感じです。
三脚、長焦点では特に大事ですよね。
望遠鏡の全体重を支えている重要部品ですから、もっと注目されてもいいのに、などとも思います。
興味深い記事、拝見しておりました。この度は拙ブログへのコメントありがとうございました。
元ミザール信者なので、150SLやRV85の画像を見るだけでテンションが上がっちゃいます。私は密かに「AZ-GTI+アルテア15」という邪悪な組み合わせを画策中です。20年近く寝かしていた筒なので、一度分解清掃しないといけないかもしれません(笑)。
AZ-GTIの三脚、お値段の割には結構いい線行っていると思っていたのですが、なるほど、改善の余地があるのですね!
AZ-GTi + アルテア15 !!
これは往年のミザールファンとしては見逃せませんね。
まさに封印されていた何者かを復活させるような儀式がたまりません!
AZ-GTi自体はかなり堅牢なので15cm鏡をものともしないと思いますが、三脚架台にはちと重荷だったみたいです(その辺のカメラ三脚よりはずっとしっかりしてるのは確かなんですけどね)。
もちろん解決策を用意しての問題提起なのですが、設計・製作はちと難儀しそうで、いつお披露目目となるかは不明です。。
三脚については私も思うところあるのですが、メーカーさんにとっては悪口になってしまうかもしれないのであまりおおっぴらには検討、公開とかしてきませんでした。それでも下から3つの足を押し上げて固定するタイプのものはまだかなりマシだと思っています。
三角トラス構造になっていなくて台形だというのはもっともで、結局のところ三脚天頂部にある程度面積を取らないと、そこが一番細いところになってしまい、ねじれやたわみが出てきてしまうからだと思います。
AZ-GTiのセットは、本体のL字型の剛性といい、ハーフピラーまでがよくできているので、三脚部が余計に弱く感じてしまうのかと思います。私は三脚部分は足の短い剛性の高いものを使うことで回避しています。それでも焦点距離600mmくらいまでが実用かなと。合計金額を抑えるために三脚は既存のものを流用していると聞いたことがあるので、まあ仕方のないことかもしれません。
最近、地面の揺れがどれくらい星像に影響あるかとか考えています。思ったより深刻そうです。またまとまったらブログの記事にしようと思っています。
ご指摘のように、下から押し上げるタイプ(閉じ止めタイプ)は数段マトモです。
また、三脚架台の面積を取る、というか、大きくすることは、ジョイント部分の隙間の影響やてこの原理で作用する力の影響をレバー比的な原理で抑え込む方法、という解釈かなと思ってます。
AZ-GTiでは、ハーフピラーがあるので架台部分からの入力が拡大されて三脚架台に伝わる構造のため、けっこうしっかりした三脚でも苦しさが出るのだと思います。ちなみに、脚そのものは十分な剛性だと思います。
※ほしぞloveログでの振動についての考察、興味深く拝見しております。望遠鏡の振動も、いろいろ考えることがあるジャンルですね。とくに解像度が上がった昨今ではなおさらです。ブログの振動記事、密かに楽しみにしております。
AZ-GTiの赤道儀化に魅力を感じています。
デュアルエンコーダー内臓ってのは素晴らしいなー。
AZ-GTiは次世代の赤道儀のプロトタイプ機のような気がします。
三脚は変わらずともここ数年で赤道儀が大きく進化しそうな気がします。
赤道儀化、流行しているようですね。
中華の会社の面白いところは、そういう遊び(?)に対応してソフトをどんどんアップデートさせていくあたりにあるかな、なんて思ってます。
そしてデュアルエンコーダー! 私もそこにものすごく惹かれたのであります。
しかも高くないし。やっぱり眼視観望はフリーストップがいいと思うんです。
この「L字型のシンプルな形状」は、おっしゃるように次世代のマウントの形を暗示してる感じがしますね。