エコノミー機材番外 - ハズレ品体験記

エコノミー天文機材に果敢に手を出していると、どうしてもハズレ品の大当たりを引く可能性が否応なしにあったりします。ここでは、これまでに引いてきたハズレ品について書いてみたいと思います。

　もっとも、最近の廉価品も基本的には質が上がってきていて、大ハズレというのは決して多くはありません。結構な廉価品でも凄い高品質のものもあり、個人的な経験では当たりを引いているオトク感の方が上回っています。（お得感というよりはエコノミー機材ならではの楽しみといった方がいいかも）
　とはいえ、ハズレ品を引いた時の悲しさと言いますか、やるせなさはなんとも言い難いものがあります。返品を申し入れるには時間が過ぎちゃったヤツとかもあります。かといって、黙ってオークションに出品するのは信条に反するのでできません。お金の問題というよりは、ガッカリ感が悲しいところです。

ハズレ品を引いても、いち早く見破って返品できるようになりたいものです

ここでは、オークションのような個人対個人の取引とは違うショップやメーカーからの購入という公共性のある話に限定した上で、一般消費者にとって大切な不良品情報やいち早い見分け方といった公益情報の発信を目的として、参考として「ハズレが存在した」という実際の体験を、いち消費者としていくつか公開して参りたいと思います。
　なお、当記事は当該製品が全てダメだということを意味してはいません。私が買ったものが偶然ダメだった可能性もあります。あくまでもいちユーザーから見た「ダメなものがありました」という体験レポートだとご認識の上ご覧ください。

■ ニセモノTMB Planetary II 3.2mm

レンズマークのロゴが入った、
ニセモノTMB PlanetaryII

筆頭は、これまでに何度か紹介している惑星用高倍率アイピースのニセモノです。AliExpressにて中国から購入しました（ショップ名失念）。外観は素晴らしいのですが、私が入手した個体の内容はゴミ同然でした。故Thomas M Back氏に対する冒涜とも言える製品です。
　もちろん本物のTMB Planetary II はレポートの通り素晴らしいアイピースですが、もはや新品では入手できません（見分け方はこちら）。
　この不良品が中古市場に出回ることがないよう破壊の上で廃棄する予定です（ネタとして保管してありますが、、「ニセモノ」と彫り込んでおこう…。）。

■ AstroShop カメラレンズ用アイピースアダプタ EFレンズ用

ピントが合わないカメラレンズ用
アイピースアダプタ

入手して、取り付けられることを確認して安心していたら、無限遠にはピントが合いませんでした。天体用には向いていないというか、相当近くにしかピントが合いません。接眼アダプターの取り付けM42雄ネジ部が長すぎるのです。旋盤などで短く加工しないと実用になりません。

　この不良はたまたまではなく、対策がとられない限り全数ダメだと思います。AliExpress の「AstroShop」購入品です。同ショップではいろいろ購入してきましたが、今のところダメ品はこの１点のみで、他のもので問題が起きたことはありません。


■ AstroStreet ED 2×バーロー 2"

AstroStreetのロゴが入った
粗悪2インチ ED 2倍バーロー

アイピース対決で倍率差を埋めるつもりで新品を買ったEDガラス採用の2インチバローなのですが、これをつけると全くよく見えなくなるハズレ品でした。鏡筒との相性かな(?)、とも思っていたのですが、よくよくレンズを眺めてみるとニュートンフリンジがやたら多くて歪んだ製品でした。粗悪品だと考えざるを得ません。

　この干渉縞（ニュートンフリンジ）が現れるということは、近接するレンズ面の曲率がほぼ同一になる設計だということを意味しています。そして、干渉縞の本数が多いほど二つの面の曲率に差があるということです。普通に考えると、本数が多いというのは設計値と現物との乖離が大きいと考えるのが順当です。

このフリンジの数と歪み。
もちろん惑星像はボケボケです。
工夫ではどうにもなりません。

百歩譲って元々の設計が微妙な曲率差があるものだったとして、次にはフリンジの形状や同心性が重要になります。ところが、この製品のフリンジは写真のようにひどく崩れていて同心円には程遠く、面の精度が全く出ていないことがよく分かります（フリンジは面間隙間の等高線で、フリンジ１本の間隔がλ/2の隙間とすると、歪みはその数倍に達していますから、2～3λとかの面精度ですかね。。）。
　このように、ニュートンフリンジは粗悪品を見分けるポイントの一つではあろうかとは思います（ピッタリ合わさる面がある場合に限りますが）。

　これはバーローレンズに限らずですが、ガラスの材質や設計だけで製品を論じてはいけないという事例でもあります。きちんと製造/検査がなされていることが大切です。
　少なくとも私が手にしたこの製品は、アイピーステストは言うに及ばず、惑星用にはボケボケな見え味でした。真面目に製造/検査が行われなかった粗悪品だと思われます。ショップのサイトではGSO製とはなっていますが、世間のGSO社製品に対する評価とも乖離があるようにも思われます。
　本品も、前出のTMB同様、オークションには決して出せないレベルのブツなのが悲しいところです。

（本件は、判明したタイミング的に「返品要求はしません」と前置きした上で、一応の不良情報として購入先に連絡を差し上げたのですが、なんらの返信もいただくことはありませんでした。こうした姿勢については疑念を抱かざるを得ず、したがって世間の評判は知りませんが、私の中ではアストロストリート(AstroStreet)はショップとして要注意先指定としようと思ったのでした。このショップでの購入はこれが最初で、運悪く私が１発必中でハズレ品を引いてしまったということだと思いたいです。メーカー保証がある製品なら安心できるのかもしれませんが…）

■ Datyson 1.25" - 24.5mm アダプター

24.5mmアダプター
なんだかんだと愛用。

ハズレと言いながら愛用している(笑)激安アダプターです。何がハズレかと申しますと、内径が24.5mmを中央値に設計してあるため、渋くてアイピースが入りにくいのです。普通、穴側はわずかにゆるく設計しておくのが定石だと思うのですが、これはそうなっていません。あと20-30μm程度内径をゆるくしておいてもいいのではないかと思うのです。
　とはいえ安い（250円くらい）ので、ハズレだと知りつついくつか買って所有しています（どれも渋い）。基本的に24.5mmアイピースに嵌めっぱなしにしていますので、渋くてもさほど大問題にはなっていなかったりはします。

■ ツマミ付き固定ネジ
　こちらはとても安いツマミ付き固定ネジで、アルマイトの色がかっこいいのと、ツマミを引っ張るとツマミがフリー回転できるようになっている優れもので、個人的に好きなネジです。
　価格も激安で、M4/M5 が￥38、M6が￥68でした。AliExpressです。
　何が問題だったかというと、M6を注文したのに 1/4インチのカメラネジが来たというところです。1/4インチなんて言うネジはラインナップされていないのですが、工場で間違って作られてしまったのだと思います。
　ショップに連絡したところ、「工場で同様のものが発生していないかを確認し、再発防止に努めます」「払い戻しします」という具合に即答でした。
　非常に安いのと、インチネジはそれはそれで使い道がありそうだったので「まあいいよ」ということにしましたが、ショップの対応としては大変好感が持てるものでした。

正しいM6ネジ（左）と、
ミスでやってきた1/4インチネジ（右）

■ 極薄Tマウントアダプター EOS用

極薄Tマウントアダプター
これでネジがP0.75だったら…

こちらはハズレとか不良ではなく、私のリサーチ不足というか勘違いで購入してしまったものでした。ショップに責任はありません。100円くらいという価格につられてポチったのですが、M42ネジのピッチが1.0mmで、いわゆるT2の0.75mmにはつかなかったのであります。残念。。
　天文関係のショップではなく、カメラパーツ屋からの購入でした（AliExpress）。


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以上のようにハズレ品もあるエコノミー機材ですが、もちろん良品も数多くあります。