トイ級接眼部のガタを取る [小口径反射短評付き]

玩具級望遠鏡の接眼部のガタを除去してみました。工作というほどのこともなく必要な道具はハサミだけで、数百円の材料費で可能です。
 ついでに、ニュートン反射式ファインダー(小口径反射)のために蒐集してしまった玩具級望遠鏡の短評も添えてみました。

 「ニュートン反射にはニュートン式ファインダーに限る」などと思ってしばらくはNEWTONY君を使用していたのですが、つい「モア口径! モア微光星!」の欲求に負けて一回り大きい76mm級の小口径反射の探究(?)が始まり、結局3本(Tasco 132T、RXA-124、RXA-100)も買ってしまっていたのでした。
 結論から言うと、放物面鏡が奢られたRXA-100の性能はなかなか素晴らしくてファインダーとしての性能もバッチリだったのですが、どうにも困るのが接眼部のガタでした。合焦のたびに光軸がズレて視野の中の星も動いてしまうので、50-75倍の高倍率ファインダーとしても使うことを考えると、ちょっと困るというわけです。

小口径反射が4本も揃ってしまいました
(ファインダー脚に付いているのは折りたたみ式ドットサイトです)

■トイ級接眼部のカルマ
 RXA-100/124のように、玩具(トイ)級望遠鏡では往々にして接眼部の作りもチープです。合焦ハンドルを回したり、接眼鏡に少し触ったりするとグラグラとドローチューブが揺れ動くわけです。少し重たいアイピースを付けていると、鏡筒の向きによってもドローチューブがグラっと動くわけで、ファインダー用途としては光軸も動いてしまって困るのです。

 こうした問題は、古いミザール150SLなどでも同じ問題がありました。ミザールの接眼部は42mmのTリング仕様になっているのは良いのですが、グラグラすることには小学生の頃から悩まされて対抗策を講じてきた経緯があります。
 グラグラの原因は、ドローチューブ周囲のクリアランス調整スペーサーです。寸法が甘く隙間が大きく作られてしまうのは仕方ないとして、調整スペーサーがラック&ピニオンギヤの対面にしかなく、上下方向のガタは抑えられても左右のグラグラが取れない設計なわけです。
 トイ級接眼部では、このスペーサーがただの布テープだったり省略されたりしています。ミザールは固いスペーサーとテンション調整ネジが2つも入った立派な作りですが、上下ガタしか取れないおマヌケ設計は一緒です。
 ちなみに高級な接眼部ではクリアランスが小さく作られているか、または後述の三点支持によってガタを取り去ってあります。(ホムセン級望遠鏡として驚異の剛性を誇るEIKOWスカイホークの接眼部はガイド面に機械加工が入っておりクリアランスが僅少になっています。)

 特に筒外焦点を長く取りにくい小口径ニュートン反射では、ドローチューブのガイド部長さも短くなってしまい、この問題は深刻です(バーローを組み込んで筒外焦点を長く取り、なおかつドローチューブも細いTANZUTSUでは問題はありません)。

■特効薬はアルミテープ
 さて、問題の特効薬は、アルミテープです。細く短冊状に切ったアルミテープをドローチューブに厚く何層にも貼り付けます。全体をグルグル巻にするのではなく、貼るポイントを絞って配置するのがミソです。
ドローチューブに貼ったアルミテープ
(こんな雑なのでもビシっとします)

  
 貼り付けポイントは適当で良いのですが、キモは円周方向3箇所支持を実現させることです。支持点の1つはラックギヤですので、これの対面を避けた2箇所にバランス良く貼るのが吉ということになります。

 このように、アルミテープを適切にガタが取れる厚さまで貼り付けることで、ドローチューブのガタツキは激減して快適度が増します。アルミテープは、私の手元にあるものでは厚さ0.08mmほどでしたので、これを重ねる枚数でクリアランス調整ができます。概ね片側50μm程度以下のクリアランスにまで詰められ、玩具級としてはまあ十分かなと思われます。
 私が小学生の頃にはアルミテープに思いが至らずセロテープでクリアランスを詰めていたのですが、耐久性に難がありました。途中で接触部が食い込んでしまったりするので、アルミがいいと思います。
アルミテープとラックピニオンで
三箇所支持にします

 

 このガタツキを抑える方法はクレイフォード式接眼部と同じ考え方で、クレイフォード式ではアルミテープではなくガイドローラーが支持する形になっていますが、ガタツキを抑えている根本は三方向支持です。
 アルミテープなどではなく真面目にやろうとすると、接眼部のガイド側(外筒)にネジ穴を4箇所(*)開けて先端にボールを取り付けたネジ(ボールスクリュー)などでガイドする方法が考えられますが、ファインダーではそこまで必要ないかと思います。
(*円周方向に2箇所のそれぞれに軸方向2点が必要なので4箇所を要します。)

■小口径反射3本短評
 ファインダー探求の過程で、小口径76mm反射を3本も買い足してしまいました。もともとの50mm球面鏡のNEWTONY君に加えて、Tasco 132T(TANZUTSU)、レイメイ藤井RXA-124、およびRXA-100の3本です。

Tasco 30132 (132T)
 言わずと知れた「TANZUTSU」の姉妹機で、D=76mmの短焦点球面鏡にバーローを内蔵させてfl=600mmとしたJoens-Bird(またはBird-Joens)光学系です。斜鏡の保持に平板ガラスを用いていたり、簡易卓上片持ちフォーク赤道儀に乗っているのがオシャレポイントで、かつてTOWAやEIKOWブランドで販売されていました。
 もともとはこれをファインダーにしようと考えて入手したのですが、接眼部の改造(24.5mm仕様なので)やバーローを外した場合の筒外焦点、球面収差の対処などを考えて、もともとの姿で使うのがよかろうという結論に至りました。
 fl=600mmのJoens-Bird光学系は、Fが8.8もあるので収差も目立たずよく見えます。ただし、広角を要するファインダーには24.5mm接眼部ということもあって、難しさがありました。

・レイメイ藤井 RXA-124
 現在でも割と入手可能な D=76mm/fl=300mmの小口径卓上経緯台です。さすがに口径の分だけ NEWTONYよりよく見え、市街地からでも星雲星団の視認性が上がり、35/37/38といった散開星団も、存在だけでなく微光星の集団であることが伺えたりと、倍率の低いサブスコープとしてもかなり楽しめます。
RXA-124は球面鏡でした
(Ronchii外像)
  

 スマイスレンズ入りのアイピースとは特に相性がよく、私もしばらくはこれをメインファインダーとして使おうかと思っていました。
 ただし、鏡はかなり強い負修正(つまり球面鏡)でした。賞月観星UWA-16mmとの組み合わせでの星像は、やや球面収差が目立つ印象でした。おそらく製造ばらつきもそれなりにあると思われ、アタリが来るかどうかは運次第かもしれません。
 本来は、付属のバーローによって Joens-Bird光学系とするのが正しい使用方法なのかもしれません。
 現在、RXA-124には後継機RXA-125が出ています。RXA-125にはスマホ撮影アダプターが付いているようです。

・レイメイ藤井 RXA-100
RXA-100は放物面でした
(Ronchii外像)
  
 放物面鏡採用で、D76mm/fl300mm小口径反射の決定版といって良いレイメイ藤井のRXA-100ですが、既に絶版となって久しく入手困難品です。私はたまたまオークションでみかけたものを約6,000円弱でゲットできました。
 ロンキー像を恒星で確認してみると、確かに放物面です。実測ではfl=280mm(F3.7)との情報もあり、この短焦点はファインダーとしても最適です。放物面鏡採用のD76mm機は、ほかにビクセンのコスモキッズがあるだけのようです。
 星像はファインダーとして以上に申し分なく、賞月観星UWA-16mmとの組み合わせによる19倍/4.4°で球状星団M3やM13はしっかりと球状星団らしく見え、市街地(SQM19.3程度)からでもM81/82を視野内にその形とともに捉えることができたのでした。M37/38などの散開星団も微光星の集光度が上がって見え方がよく、低倍率でも鏡面精度が意外と重要なのだと思い知らされます。
 そういうわけで、このRXA-100をメインのファインダーとしていこうと思ったのでした。NEWTONY君は、150SL用となりました。
性能抜群の7.6cm / 19倍 / 4.4° ファインダーです

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コメント

Unknown さんの投稿…
Twitterでも発信しましたが、最近購入したkenkoのSE-GT100Nも接眼部グラグラでしたので、ガタつきを取るのに、ドローチューブを上から押さえられるように、外筒上部に穴を開けナットを接着し4㎜ネジで適度なテンションを与えました。外筒内部に薄い敷居滑りみたいなテープが貼ってあるので、そこをネジで押さえるため、ドローチューブ本体にはキズが付きません。しかしこの鏡筒、底をカットしたり、アリガタを移動したり、接眼部いじったりのようなことばかりして、一向に星を見ないと言うのが難点です(笑)。
Lambda さんの投稿…
コメントありがとうございます!
Twitter、拝見しております。

ご指摘のように、ネジでクリアランス微調整ができるようにしてしまうのが、本質的な改善ではありますね。クリアランスをきつく締めていくと滑りの問題はたしかにあって、表面はプラの方がよいのかもしれません。

この手の望遠鏡はもともとがマニア向けではないのに、なぜかマニア心をくすぐるようですね。改造ネタが尽きないのも、そういうことなのかなと思っております。