2023年の「ゆるーい天文趣味」を振り返る

早くもこの2023年も年の瀬が迫ってきてしまいました。「時間の加速」仮説はいよいよ真実味を増すばかりで、年々せわしなくなっていくように思えます。おそらくハッブルが発見した膨張宇宙と連動するように、人間の時間感覚も誕生時と比べて加速しているのだと勝手に思っています。ビッグバンが悪い。という言い訳を思いつくに至りました。
 さて、そんな加速した時間の中で過ごした2023年の天文ライフを振り返ってみたいと思います。

2023年に導入したC11。
トラペジウムE,F星も導入用の低倍率アイピースでラクに見えます。

■反省と言い訳 '23 edition
 2023年も、例年にも増しての「ゆるーい」天文活動となりました。冒頭で述べましたように、ビッグバンのせいで新年に掲げていた目標の達成度は2勝2敗1引分と奮いませんでしたが、宇宙の法則にもそれなりに抵抗してみた軌跡を追ってみたいと思います。

24.5mm マイナスポイントアダプター △
 数多くのクラシカル・アイピースを扱う中で、24.5mm→31.7mm へのバレル径変換アダプタは必須アイテムでした。しかし、光路長を余計に消費してしまうのが難点で、筒外焦点のあまり取れないニュートン反射では、ピントが合わないとか、ドローチューブをだいぶ繰り込まないと合焦しないことがありました。
 このことは、像質の面でも問題で、筒内に繰り込まれたドローチューブが妙な回折光を生じさせ、コントラスト低下や重星分離の妨げの原因になったりもしていました。
 特にクラシカルアイピースの多くはスマイスレンズを持たない古典的な構成で、焦点位置はいわゆる「内ピン」なものが多いので、問題も根深いのです。
 というわけで、元の31.7mmスリーブよりも5mmほど押し込んだ位置(マイナスポイント)に24.5mmアイピースを挿せるアダプタを開発し、3Dプリンタで造形してみたというわけです。このアダプタは、通常の 24.5mmアイピースであれば、「鍔(ツバ)」の部分も含めて埋め込んで"マイナスポイント"にできることが特長です。

 このアダプタは当初実費のみでの頒布をめざして3Dプリンタの造形サービスで最も安価なレジンで造形しており、レジン造形の精度の悪さ(ロットごとにかなり内外形が変わってしまう)の補正のために、接触位置を規定するための複雑な内径形状を採りつつ、弾性変形でセンタリング精度を保持する形状としましたが、やはり種々の精度保証が難しく、一般頒布は断念したのでした。・・・、というわけで、△印です。
(※どうしても入用の方がおられましたら、個別にご相談ください)

24.5mmスリーブ・31.7mmバレルの変換アダプター
アイピースを 5mm 押し込んで固定できる "マイナスポイント" が特長です

天文ゆるふわ選手権への参戦 ○
 
天文ゆるふわ道 
2023年の天リフ超会議新春スペシャル「天文ゆるふわ選手権」から、もう1年も経とうとしています。改めて振り返ってみますと、「ゆるふわとは、赦しと付和である」とのゆるふわ道を提唱しておりました。
 入門には覚悟が要りますが、「広い心を以て許す」ということが、頭の中にある制約範囲を取り払ってストレッチするんじゃないか、などとも思います。
 同時に、我ながら「ご容赦いただきたい」の一念が滲み出ている主張となっておりますが、当ブログは「ガチ」とは一線を画する「ゆるーい天文趣味」に邁進して参ります。
名物・ゆるスコ」の概念。ゆるーい機材を赦すのが醍醐味です。
(※選手権当日は話の流れ上割愛しましたので、当記事が初公開です。)

イーソス vs XWA 第2ラウンド(21mm編) ○
 こちらはX(旧ツイッター)フォロワーの方々のご協力を得て、比較が実現しました。この比較だけでなく多くの気づきを得られた会合で、ブログ記事にもできました。
 イーソス21mmとXWA20mmの比較では、「両者は同じではない」「F8ニュートンであれば周辺までどちらも星像はピンポイント」という重要な結論が得られました。
 詳細は記事を御覧ください。(イーソス 21mm vs XWA 20mm

前玉レンズ対応夜露対策フード ×
 当初は5cmアクロマート鏡筒やファインダーの曇り止めにと考えていたのですが、C11の導入に伴って計画に変更を生じてしまいました。ガラスの放射率の高さとドでかい補正板の対策を考えると、難しさが際立ちます。
 初志は「電力を極力使わない」コンセプトで、フードに「夜露対策二ノ段」のエッセンスを盛り込むことで、半パッシブな夜露レスを考えていたのですが、28cm向けに対応する容量を考え始めるとカッコ悪く重くなるのが鬼門で、二の足を踏んでいます。
 同時に、別の省電力型強力アクティブ除湿ドライヤーのコンセプトも思いついてしまい、迷い続けているところです。ビッグバンのせいで、迷っているうちに年の瀬が来てしまいましたが、C11補正板の結露にキレることがあったら作ると思います。

今年こそ、ラムスデン ×
 全然でした。申し訳有りません。溜まりに溜まったラムスデン達をちょくちょく覗いてみてはいるのですが、記事にしようと思うと真面目な比較が必要で、シーイングなどの条件が揃った日に大量のラムスデンを並べて比較するというのは「なかなか機会のあることではない」ということに改めて気づいてしまったのでした。
 ここでもビッグバンが悪いことにしておきますが、接眼教・ニ枚真宗でハバを効かせているハイゲンス派と双璧を成すラムスデン派も、引き続き存在感を示していきたいと思います。

■ 2023年の天文現象&活動を振り返る
ダウエル入手!
 2023年のダントツ人気記事は「ダウエル接眼鏡。」でした。アクセス数は他の記事の2~3倍のペースで伸び、いかに多くの方々に愛された(?)ブランドだったかということがわかります。「望遠鏡御三家」の製品としては、スリービーチに続いてダウエルも手に入れて試す機会に恵まれたのでした。
 「HM40mmが14mm」「視野レンズのゴミに焦点が合うハイゲンス」「ものすごいフレア」という強烈なダウエルのハイゲンスは、いろいろと気づきを与えてくれる逸品でした。
 一方、ダウエルの「オルソス4mm」は極めてよく見える部類のアイピースで、こちらはまずもって一級品です。おそらく、ダウエル製品を絶賛する記事としては世界初・世界唯一のものだろうと思っています。
 なお、ダウエルブランドは2022年に復活し、この2023年には「ダウエル・オンランストア」が立ち上がりました。

・ C11 降臨と高解像度の木星像
 個人的なトピックスとしては、白いC11鏡筒をポチってしまった、というのがありました。カセグレン系は「口径の割にコンパクトなので初心者にもオススメ…」などと思っていましたが、大間違いでした。焦点距離が長く、視野導入に難儀しました。(C11は所有の最大視野アイピースでも 100倍 0.8°、というわけでファインダー合わせもけっこう難儀しました)。初心者に勧める際にはちゃんと考えてから、という思いを新たにしました。
 早速木星に向けてみますと、今年の8月、9月は好シーイングに恵まれ、表面模様の精細な様子を捉えられました。
 同時に、CMOSカメラのスペックの読み方惑星向けのゲイン設定の在り方についても、一定の考察を得られた年でも有りました。
 
撮影される木星像も、それっぽくなってきました。


CMOSカメラの増殖
5cmアクロマートによる木星
ASI178MC にて
 カメラに関する考察を色々と確かめてみたくなり、カメラもこれまでの SV305から、 PlayerOneの MARS-CIIと ZWOの ASI178MC へのアップグレードと相成りました。
 MARS IIは読み出しノイズの少なさ、ASI178MC はADCのビット幅という観点で、いずれも実質的なダイナミックレンジを大きく取れる可能性のあるカメラ、という位置づけです。
 未だ満足できる仕上がりには達していませんが、5cmアクロマート屈折でも木星の表面模様を捉えることができました。


手元に増えた接眼鏡
 今年はあまり増やしませんでしたが、いくつか新調したものがあります。

PF25mm、超軽量です

 TAKAHASHI TPL-6mm : 惑星・重星用に好適です。記事を御覧ください。
 SkyRover UWA 28mm : C11の導入用です。実視野能 2296 という広さと程よい瞳径です。
 SkyRover PF 25mm: 80gという超軽量アイピースです。バーロー後段での導入用途に使ってますが、使い勝手が素晴らしいです。ファインダーにも視野周辺まで像の荒れが少なく、好適と思います。


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2023年初頭を賑わせた ZTF彗星 C/2022 E3
(2023.1.28撮影)

 無理矢理「ビッグバンのせい」と言ってみたところで容赦なく暮れてゆく23年を傍観しつつ、それなりに楽しんだゆるーい天文ライフを振り返ってみたのでした。
 宇宙スケールで見る1年というのは一瞬の話ではありますが、微々たる存在の我々人間にとっては忙しくもあり楽しくもあるのが一年、というわけで、皆様、良いお年をお迎えください。 (Lambda)

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