2024年の「ゆるーい天文趣味」を振り返る

 この令和6年、2024年も早くも暮れていこうとしています。この一年で気付かされたのは、全部ビッグバンのせいにしてみたところで状況は好転しないが、時間は勝手に過ぎてゆくということです。きっと真理でしょう。今年も光速を超えて過ぎ去ってしまった一年を振り返ってみたいと思います。

2024.12.8 土星食(潜入) 18:20JST頃
SE-200N + Paracorr2 + Powermate2.5x + SV405CC(IMX294)

■2024年の天文現象&活動
C/2023 A3 紫金山アトラス彗星 (2024.10.13頃,関連記事)
 今年の No.1 トピックは、やはりこの彗星を置いて他には無いでしょう。一時期は「崩壊必至」との論文が出たことで消沈していましたが、夕空にマイナス等級の勇姿を拝むことが出来ました。
 大彗星と言うと、私の中では百武彗星の北天大周遊(深夜にも見えた)が凄かったわけですが、今回の紫金山アトラス彗星も十分に凄いと言える姿でした。
 撮影そっちのけで双眼鏡を覗いておりました。スマホで簡単に撮れた彗星、ということで、驚きとともに令和時代の天体観察の面白さを考える機会にもなりました。


土星食 (12/8)
 2024.12.8 の土星食は、大変条件の良い時間・高度・月齢で起きました。日頃の行いが悪く、出現はブ厚い雲に阻まれてしまいましたが、潜入を捉えることが出来ました!
 惑星食はジワジワと時間をかけて月に吸い込まれていく様子が萌えポイントですが、今回ハッキリと分かったのは、「眼視の方がはるかに情報量が多い」ということでした。
 ちょうど上弦の頃の月でしたが、望遠鏡では地球照が見え、明るく影がついてクレーターが見える欠け際と対象的な地球照内の穏やかなコントラストがあるそばに、土星がいるのです。
 土星は 180倍27分角の視野の中で、環や本体に落ちたその影や衛星が見える中、地球照の縁の隠れていきました。眼視では、土星を背景にした月面の山岳シルエットがハッキリと分かり、これが地球照の中の月面模様につながっている、という実に宇宙的な遠近感を感じる見え方となって印象的でした。
 記憶に残る凄い天文現象です。これは、一人一台の望遠鏡でじっくり観察する必要のある対象でした。


太陽望遠鏡

2024.8.3. 14:54JST

 2024年は太陽活動が活発、ということで、日本でも低緯度オーロラが観察地域も多く、「いま買わずして、いつ買うのだ!」という幻聴が聞こえた気がして、コロナド P.S.T. を購入してしまいました。CORONADO社の製品はMeade社扱いになっていましたが、今年2024年は株式を保有している会社の破綻などにより操業が停止されてしまいました。私が手に入れたのはその直前、ということで、ほぼ最後の方のP.S.T.を入手したんじゃないかと思います。
 太陽は、「恒星のダイナミズム」を身近に観察できる天体で、Hα近傍で観察してみると、刻々と変化する様子が分かって大変面白い対象です。
 Acuter社から発売された太陽望遠鏡 Phoenix も大変良好な像を見せるとのことで、大注目となった 2024年でした。 

大プロミネンスも観察することができました。
2024.8.4. 13:57JST

カセグレン親子亀ファインダー
 今年手に入れた MAKSY 60 を、C11のファインダーに仕立ててみました。むかしからカセグレン親子亀には密かに憧れていた、というのもありますが、C11の高い拡大率での撮影時に、導入の補助があると大変助かるのです。

MAKSY60ファインダー
 X-Y調整機構付の9mm十字線アイピースを使って83倍ほどの高倍率ファインダーとなります。土星の環も木星の模様も見えるファインダーですが、これが有るのと無いのでは高倍率撮影の効率が全然違います(フリップミラーでもよいのですが…、そこは親子亀ロマンということで)。
 ただ、MAKSY君は鏡筒がヤワなプラスチックなので、3点固定式のファインダー足では歪んでしまってズレが大きく、要求に応えられません。結局、ガイドマウントの上に載せることになってしまいました。(繰り返しになりますが、実用的にはフリップミラーで良いと思います)

■反省と言い訳 '24
 毎年恒例の反省タイムですが、この令和6年の抱負で語っていた「アクティブ夜露対策」「怠惰双眼鏡架台」「ラムスデン」について、それぞれ採点してみたいと思います。

①アクティブ夜露対策 ・・・ ×
 曇ってしまったシュミカセ補正板やアイピースを即座に乾かすドライヤー、を検討しているのですが、部品の製作を簡便にやる方法が3Dプリンタ以外に思いつかず、そうこうしているうちに時間が過ぎてしまいました。平成6年はあんまり激しい夜露に見舞われなかったというか、曇ってばかりであまり空を見る機会が多くなかったというか、製作に至らず敗退です。
 来年は、簡単に作れる方法を考案するか、3Dプリンタで作るか、要検討です。

②怠惰双眼鏡架台 ・・・△

TAIDA-I型の架台部
 「高い自由度で、天頂付近も楽々の観望を可能にする」というコンセプトの具現化を進行中です。液晶モニターアームに双眼鏡を設置する架台の製作と高自由度動作までを確認し、また、リクライニングチェアが水平回転軸の上に乗って回転するというところまでは出来ました。
 ただ、切粉の出る加工を屋外で行っていた関係で、夏の猛暑以降に手が止まってしまいました。もう一息なので、この架台に「TAIDA-I型」の名を与え、完成させて怠惰と夜空を貪りたいところです。

③ラムスデン ・・・ ○
 重い腰を上げて、長らく寝かせていた色消しラムスデンをようやくテストしてみる機会に恵まれ、ラムスデン大全も久しぶりにアップデートできました。記事の内容そのものが役に立つことはまず無いと思われますが、この手のマイナー光学系は、書籍などの記述が往々にして調査の足りない孫引きだったりもするので、実物を調べたり歴史や文献を調査してまとめて残しておくことも、実利を追求しないでもよい趣味としては悪くはないかなと思うのでした。

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 今年は、総じて大きな天文現象があって盛り上がりのあった一年だったと思います。オーロラを拝めなかったりということはあったにせよ、一般の方々からも天文界が若干の注目を浴びることもありました。
 相変わらず、宇宙スケールで考えたときの自分らの小ささを噛み締めつつ、一瞬一瞬に敬礼しながらまた新しい年を迎えたいと思います。
 というわけで、皆様におかれましても、良いお年をお迎えください。 /Lambda

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