この2022年もあっという間に暮れつつあり、「時間というのは年々加速しているのではないか」という疑いを挟む状況証拠がまた一つ積み重なった感のある年でした。このゆるーい天文趣味も「アキレスと亀」のごとくさっぱりゴールにたどり着かずにいる有り様ではあります。
今年の年末も例年のごとく、活動と天文現象をそれぞれ振り返ってみたいと思います。blog記事にならなかった検討や体験談なども、こちらにまとめてみました。
2022.11.8 皆既月食の月と天王星 (20cm F5 Newtonian, XWA 20mm + Pixel4a コリメート撮影) |
■ 反省と言い訳 '22
本業の忙しさと天候の悪さは昨年同様で、2022年は相変わらずのゆるーい天文活動となりました。特に、5月や8月の連休の天候の悪さに閉口しつつ、新年に掲げていた目標の達成度合いは全く奮いませんでしたが、星フェスへの参加は活動としては大変刺激になりました。
とはいえ、今年は何と言っても小海の星フェスに参加できたことは大きな前進です。実に半年がかりで自分のスケジュールを防衛し切ることに成功したのでした。
実はこの2022年は、5月のDSP(Deep Star Party) にも参加を画策して半年前からスケジュールを押さえていたのですが、予定が蹂躙されてしまったのでした。それを、11月の小海ではなんとか守り切ることができたという具合でした。
リアルな会合というのは、いいものです。
・目標の達成度合い
新年の抱負で掲げた目標は、1勝2敗1引分け、ということで負け越しでした。実行できたのは「小口径アクロマート鏡筒を組む」で、こちらは後述の通りだいぶ楽しめました。一方で、「冷却カメラを使ってみる」「電子観望に手を広げる」は完全敗北でした。冷却カメラの出番は2回/年しかなく、晴れた日はほとんど眼視に時間を費やしてしまいました。
「アイピース見聞」の方は、「イーソス vs XWA (13mm)」の比較記事や「蒐集の顛末」を記事にまとめることができましたが、ラムスデンの比較を行っての記事の拡充に至らず、引き分け判定です。手元には未評価のラムスデンがあるにも関わらず、新たに Datyson の新作ラムスデンや Vixenの SR を入手したりしましたが、残念ながら評価の機会に恵まれませんでした。来年に持ち越しです。
■ 2022年の天文現象&活動を振り返る
超級透明度の時のSCW (2022.7.8) |
この日は雲が多い日で、SCWでは完全に雲の下だったのですが、どういうわけか雲の合間が恐ろしく透明度が高いことに気づき(ビックカメラ近くの市街地なのに天の川が見えそうな勢い)、望遠鏡を向けてビックリでした。
なんと、低空の三裂星雲が、3つに裂けている姿までハッキリと見えるわけです。普段は星団にしか見えないM16も、星雲がくっきりでした。そして「もしや」と思って網状星雲に向けてみると、これまたハッキリと見えたわけです!倍率を上げるとその濃淡までわかり、実に感動的な体験となりました。
毎度月食のたびに思うことですが、皆既月食は抜群に色彩が美しい天文現象だと想います。眼福です。
2022.11.18 の火星 |
極冠が溶けて白い雲が極付近にかぶる中、砂嵐の発生などもなく模様がよく見えた火星接近となりました。 もうちょっとシーイングに恵まれてほしかったという感はありましたが、かなり高度が高くまで上がって、「模様が全く見えない」というほどな日が少なかったのは幸いだったかもしれません。
火星観測の候補地としての日本は、偉大な日本研究家「パーシヴァル・ローウェル」が天文台建設を断念したのもよくわかります。彼が東京麻布で火星を眺めたのも、12月でした。
・ミザール 12cm ワインレッド λ/20鏡筒
こちらは私のハンドルネームの由来でもあるミザールの12cm鏡筒を、ほぼ新品で入手できたというものでした。木星や土星を覗いてみると確かによく見えましたし、11月の星フェスでも、全くの素人の方に星を見せて「模様や白いところが見えます」と言っていただけました。詳しくは記事を御覧ください。
C50/540を収めた鏡筒 |
5cm F10.8アクロマートのキットレンズ ツァイス C50/540に、鏡筒を与えてみました。私が入手したのは 1988年末~1989年初頭のベルリンの壁崩壊直前にライプツィヒのショップで購入されたという個体です。BORGの鏡筒に収めてみました。
このレンズの性能は素晴らしく、5cm ながら木星の大赤斑や縞のうねり、火星の模様などを視認でき、低倍率ではハイゲンスとの組み合わせで、恐ろしくコントラストの高い月面を楽しめます。また、135倍でのM57ドーナツ星雲や42倍でのM27亜鈴状星雲なども、星雲の形まで楽しめるということで、「口径とは」ということを改めて考えさせられる対物レンズでした。
5cm F10.8 アクロマート屈折で撮影した月面 2022.7.10. C50/540 直焦点 (ASI533 MCP) |
・ルーペアイピース BelOMO & ZEISS
2022年は、ルーペアイピースが巷で大流行しました。特にエコノミークラスな BelOMO の 10倍ルーペは分解も容易で、バーローとの組み合わせで惑星向けによく見えるということで、大変優秀なアイピースでした。
ルーペ・アイピース 中心像は極めて良好です |
小海での比較の繰り返しにはなりますが、ZEISS D40、Nikon 10x、BelOMO 10x はそれぞれ惑星アイピースとして頂点を極めるレベルの性能で、その差は「9秒99と9秒98くらいの僅差」です(「ただし中心像に限る」ですので、自動追尾が必須です)。
いわゆる3枚玉のシュタインハイル型ルーペはモノセントリックアイピースと同じことで、収差がしっかり補正されている上に空気との接触面が少なく、なおかつ長焦点では特にレンズ面での光束が太いことが有利に作用します。このあたり、究極のプラネタリーアイピースとしてのハイゲンスに行き当たったのと同じ理屈が働いているとの思いを強くしたのでした。
__________________________
さて、本当にもう年の瀬が迫ってきてしまいました。国際情勢は必ずしも平和ばかりでないこの2022は気忙しく過ぎつつありますが、皆様が良いお年をお迎えできることを心よりお祈りしております。 /2022.12.18. Lambda
コメント
今年も素晴らしい考察と実践の情報、ありがとうございました!
私は去年に続き、たいして活動できませんでしたが、
気が付くと、6センチF7のアクロ鏡筒を作っていました。
とにかく、観望の腰を軽くするためには軽くコンパクトなヤツ。
という理由です。
いわゆる逆ニュートン式で、高高度の見やすさ優先で裏像専用で
割り切り、天頂ミラー(反射式の斜鏡を使用)を筒内に内蔵し、ピントは
対物レンズ移動式。(ボルト回転式。3倍スローモーション付)
接眼部はアメリカンサイズの4頭ターレット。
という尖った、というか「怪しい」ブツになりました。
見え味は、悪シーイングの中でしたが100倍チョイ超え(バナナ型シールSR使用)
でも土星はちゃんと結像しました。内部の迷光対策がまだ不完全なのでそれを
やればかなり使えるものになりそうです。
Lambdaさんの、このツァイス5センチを対物に使ったら格段に素晴らしいものに
なるのでしょうね。(自分のは、スコープテックで買ったやつです。)
代案としてミニボーグの対物も異常な高性能らしいのでそれで・・・・
にしても高いですね。僕には。
それでは来年もよろしくお願いします。
「軽い望遠鏡」、軽さは大事ですね。
しかも「逆ニュートン(?)」とのことで、対物前のミラーで光路を曲げる感じでしょうか。
多くの工夫をほどこしたオリジナルの機材で楽しむのも、また格別なものだと思います。
来年も、私は相変わらず亀の歩みですが、ぼちぼちやっていきたいと思いますので、
引き続きよろしくお願いします。
対物レンズを取り付けたような形状のものです。
(斜鏡を天頂ミラーがわりにする)
海外のショップでたまに初心者向けの製品が売られて
いるようです。
なるほど、ありがちな「間違えて地面見てるみたいなニュートン」に見せかけて、じつは主鏡のところに対物レンズが嵌ってる、というやつですね。
それにしても、海外で見かけるとは、知りませんでした。