アイピース蒐集の顛末 2022

これまでに随分とアイピースを蒐集して試してきましたが、お気に入りと呼べる定番は限られてきました。そこで、百本以上テストしてきたアイピースの中から、個人的なお気に入りや印象に残ったものをまとめてみました。

個人的には、アイピースはその値段やブランド名や形式名によらず見え方と使い勝手を重視してお気に入りを決めています。安くても一軍入りしているものもありますし、高くても単なるコレクションとなっているものもあります。
また、素晴らしいコスパで気軽に高性能を楽しめるアイピースもあり、必ずしも高価なものを揃えるだけが楽しみ方ではないというあたりにアイピース沼の面白さがあるとも言えます。

だいぶ色々なアイピースを蒐集してしまいました


■ 集めたアイピースの内訳
 ここ3年ほどの間に、アイピースがいろいろ集まってきてしまいました。内訳を「型式別」「メーカー別」に分析してみました。

 まず形式ですが、私の所有するアイピースの中で最も多いのは「ラムスデン」でした。おそらくこんなのは世界でも私くらいのものだと思われ、参考にはならないと思います。「ハイゲンス」も第三位と健闘していて、クラシックアイピースばかりよく集めたものだと我ながら思います。
 ほかにアッベオルソやプローセルも比較的多くなっていますが、目立つのは「その他(Others)」です。Nagler や Ethos、XWA、UFなど、各社からのオリジナルが台頭していて性能も高いものが多く、私のお気に入りも多くなっています。

 続いてメーカー別ですが、手元にはVixen製アイピースが最も多いという結果になりました。意識していなかったのですが、どうやらクラシックなアイピースにVixen製が多かったようです。次いで谷光学(TANY)となっており、こちらもクラシックなアイピースを多く蒐集・使用してきたことが響いたようです。
 その他は3BやMIZARのようなかつての入門系メーカーから、Pentax、TeleVue、TMBなどのブランド品まで幅広く各社の製品を試してきたという状況です。

型式別・メーカー別の所有アイピース内訳
幅広く試してみました

※注意:以下はあくまでも20cm F5ニュートンと組み合わせた時の個人的な好み(お気に入り)について記載したものです。

■ 星雲・星団・銀河用は100°/110°シリーズ
 結局のところ、DSOは100°/110°のアイピースシリーズの出番が多くなりました。大きめで重たい筐体が難点ですが、Ethos、賞月観星XWAの双方とも星像に大きな不満はなく、比較的高倍率でも広めの視野を確保できるところが便利です。

XWA と Ethos (とNagler)
DSO相手には定番になりました

 私は星雲相手でも好んで倍率を上げ加減にするのですが、それは高倍率でのDSO観察は特に市街地では背景が締まる上に細部が見えやすくなり、迫力のある眺めになるためです(※低倍率は針でつついたような点像が密集する様子や星の輝きを感じたいときに使っています)。星雲が見えにくくなるということもありません。しかし、視野が狭いと合焦や対象の確認を含めてなかなか難しくなってくるのですが、視野が広くて周辺まで像が良いとこれが容易になるわけです。

 そういうわけで、私は XWAの 3.5mmと20mm、Ethosの6mmと13mmをDSO観望で多様しています。(XWAは Ethos の丸C○PYではないかと思わせる像質です。)
 ただ、重量が嵩んで交換が面倒なので、Nagler type5 16mm や type6 13mmも 使用頻度の高いアイピースになっています。 (※UWAはNaglerとけっこう違いがあります)

関連記事:
 ・イーソス vs XWA。
 ・賞月観星 XWA 20mm 100° を試す
 ・[高倍率上等] 春の銀河を光害地から眼視で愉しむ
 ・エコノミー機材⑥ プアマンズナグラー - 「星雲星団は低倍率で」は本当か?
 ・【観望】冬の散開星団の多様な愉しみ
 ・広角68~84°級アイピースを試す 13mm級&4mm級(Nagler、Mopheous、Hyperionほか)


■ 惑星が良く見えるアイピース
 惑星の見比べはずいぶんやってしまいましたが、個人的なベストはパワー・ハイゲン(Zeiss & Televue)TMB SuperMono、そしてミードかRaymayのSR (ラムスデン大全参照)です。これに準ずるものとしては Zeiss 4-O、タカハシ TOE、Pentax XO、XP、スリービーチ S.ORが挙げられ、いずれも惑星面については特級の見え味だと思います。

TOE 3.3mm
大変優秀です

 個人的には、価格をあまり考えずに新品で買うならTOE一択かと思います。視野も広くて収差補正も素晴らしく、レンズ枚数が多いにも関わらずヌケも十分です。惑星以外にも威力を発揮する秀逸なアイピースだと思います。
 一方で、エコノミーコースな惑星用としては、程度の良いラムスデンを中古で探すか、良いバーローとハイゲンスを組み合わせるかというコースがありえます。もちろん、セレストロンのSR4(但し6mm)も選択肢かと思います。主鏡のFが大きければ、ハイゲンス系を探すのも良いチョイスかもしれません。

関連記事:
 ・ラムスデン接眼鏡大全(SRほか、ラムスデン系各種)
 ・逆襲のハイゲンス(パワー・ハイゲン)
 ・究極の惑星アイピース -「ヌケ」の謎(単レンズ)
 ・火星接近で確かめた新入り高倍率アイピース達(TMB SuperMonoほか)
 ・惑星向けアイピース見比べ2020 - 表面模様&キレ味編
  (Zeiss 4-O、タカハシTOE、Pentax XO/XP、Vixen HR、TeleVue Radian ほか)
 ・高倍率アイピース総評
 ・「スリコール スーパーオルソー」と「トリプレーン」(3B S.OR)

■ 重星はUWA 4mm か TOE
 重星観察にもタカハシTOE(3.3mm)は大変素晴らしいアイピースです。同様に、TeleVue Radian(4mm) Mopheous(4mm) も重星で威力を発揮するアイピースでした。シリウスのような明るい恒星でも中央のエアリーディスクがきちんと観察でき、トラペジウムのような微光星でも周囲の回折環を観察できます。また、重星に強いアイピースは、土星の輪の見え方も素晴らしいという印象です。

UWA 4mm
(優秀な恒星像です)

 最良の恒星像を得るアイピースとしては Zeiss 4-O かパワー・ハイゲン(Zeiss 25-H)がよいと感じますが、残念ながらはこれらは入手困難です。
 個人的に特筆しておきたいのは、賞月観星 UWA 4mm です。これは前出のものと比較すると安価ですが、星像は TOE や Radian に匹敵します。見掛視界も広く、球状星団や惑星状星雲の観察にも使えるということで、個人的に出動させる回数がひそかに多いアイピースとなっています。

関連記事:
 ・広角68~84°級アイピースを試す 13mm級&4mm級(UWA、Radianほか,対恒星)
 ・[シリウスB 見比べ] HR2.4、TOE3.3、Radian4、XO5 / 2.5、CZJ 4-O


■ なかなか使える高コスパな良品たち
 いろいろ見比べをやってきた中で、「なかなか使える良品」にも巡り合ってきました。当ブログの本編でも触れていますが、ここではそれらをまとめて紹介したいと思います。

・低~中倍率広角の UF18mm / Aspheric 23mm
 私がファインダー用として常用しているのは、SVBONY UF18mm です。短焦点鏡との組み合わせでも、周辺像の荒れをほどほどに押さえてくれるのが美点です。フラットな視界は気持ちのいいものだと再確認させてくれます。
 価格が更にしたのレンジのものとしては、同じくSVBONYの Aspheric 23mmがあります。これは価格の割には星像のよいアイピースで、気軽に使えます。クラシックなエルフレなどを求めるよりは、こちらのほうが良いのではないかと個人的には思います。

66° Ultra Wide
廉価ですが侮れません

星像が侮れない UltraWide 66°シリーズ (6mm、9mm)
 BORGやSVBONYなどから出ている見掛視界66°の "UltraWide" "Long Eye Relief"と銘打たれたシリーズは 9mm と 6mmを試してみましたが、いずれも収差補正が優秀でした。平坦性に優れた中倍率用アイピースということで、星雲星団をアップ気味にして楽しむのに適していると思います。このアイピースは当ブログでもエコノミー番付の大関に据えていますが、星像に関しては TMB の PlanetaryII (本物)に匹敵する性能ではないかとすら思います(惑星では未確認)。

関連記事:
 ・エコノミー機材⑩ B級(?)広角アイピース短評(UW 9mm)
 ・中華ニセモノTMB PlanetaryII接眼鏡をバラす(本物 TMB PlanetaryIIの見分け方、など)

・素直な視界の SWA
 UF/UWA/XWAと同じく、中国のSkyRoverによる見掛視界70°のアイピースです。私が入手したのは笠井SWA 26mmでしたが、見掛視界を欲張らない分だけ全面にわたってよい像を結ぶ大変素直で気持ちの良い広角アイピースでした。
 同等品と思われるものが、SVBONY SV154として販売されているようです。


■ 印象深いクラシックアイピース
 クラシックアイピースもいくらか試しましたが、個人的に印象深いものとしては Zeiss 4-O、五藤R16mm、ユニトロンR25mm、谷光学Or.25mm の4本を挙げたいです。
 Carl Zeiss Jena (CZJ) 4-O が見せる恒星の回折像やバックグラウンドの締まり具合は他のアイピースと一線を画するものがあり、大変印象深いです。
 五藤R16mmとユニトロンR25mmは、中長焦点ラムスデンなのに恐るべき収差補正で良像が得られました。見掛視界は現代の水準からすると狭いのですが、そんじょそこいらのケルナーやらオルソよりも収差補正が優れているのが驚きです。ユニトロンR25mmは、何種類もの K や OR と比較しましたが、これに優るのは谷光学Or.25mmだけでした。驚愕です。
 谷光学のOr.25mmは、「整像性(オルソスコピック)」という言葉を思い出させてくれるクラシックアイピースでした。低倍率とはいえ鋭いピントが微光星を見せてくれて、狭い視野とはいえその中で点像を保ち続けるのはさすがです。

関連記事:
 ・低倍率クラシカル・アイピースを愉しむ
 ・長焦点Rを試す - ラムスデンは本当にファインダー用なのか?


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Vixen SR.5mm
(まだ試せておりません)
と、いうわけで、興味本位で様々なアイピースを見比べておりますが、「けっこう違いが見える」のが面白いところです。
 肉眼というのは写真と違って情報を固定して比較することができないという大欠点があるものの、像の分解や階調などには敏感なもので、意外とアイピースの違いを感じ取れるものだなと実感します。
 また、製品の良否だけでなく、一般的な光学理論で言われているものがどのように観察されるのか、写真では見落とされているところを人間の対数的な感覚が広いラチチュードで教えてくれるのも大変面白いことだと思っております。

設計者の工夫、製造者の作業、光学のふるまいなどに思いを致しつつ、好奇心を満たす活動はぼちぼちと続けて参りたいと思います。


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