なんとしたことか、2021年もあっという間に暮れつつあります。「ゆるーい天文趣味」を楽しむ当ブログの'21はいつにも増しての亀の歩みではありましたが、この1年を振り返ってみたいと思います。記事末尾には、今年調べたアイピースのダイジェストも添えました(ラムスデン大全もひそかに増補してきました)。
振り返りの殆どは何もできなかったことへの懺悔ではありますが、
・コスパを求めて散財し、怠惰のために汗をかく
・見えたものから原理を占い、先人に感謝を捧げつ裏をかく
という当ブログの高邁な志にもかかわらず、今年はむしろ「怠惰のために散財」とか「裏よりも恥をかく」ケースが増えてしまったことについて特に猛省が促された1年でした。
12月上旬、明け方のレナード彗星(C/2021 A1) (2021.12.5, 4:46-5:11, 20cm F5 + ASI533MC Pro, 30s×30) |
■ 反省と言い訳
先に言い訳をすると「本業の多忙」と「天候の不順」のせいで、例年通りのゆるーい活動となりました。まずは’21の年頭の抱負を振り返ってみたいと思います。リザルトは2勝2敗1引分でした。
○ ファインダーシステム : ニュートン反射式ファインダーのリファインを続け、7.6cmミニ反射とSVBONY UF18mmアイピースの組み合わせに落ち着き、一応完成形を見ました。
○ アイピース探求 : こちらはアイピース詩人としてだいぶ吟遊したつもりです。今回のこの記事の後段に詳細を書いてみました。
△ 真面目なフードとフラット撮影器 : 単なる買い物ではありますが、FRP製フードを買って、SE-200Nに取り付けてみました。取付部はダンボールを切り抜いて制作しましたが、ニュートン系反射製品にフードやその取付ベースが装備されてないのは重大欠陥だと強く思う今日このごろです。
「フラット撮影器」は結局撮影自体低調に終わったために作らずじまいでした。
× 振動対策器:構想を練るも、構想自体完結しませんでした。
× 前玉「レンズ」の結露防止: レンズはそれ自体が赤外で放射率が高く、鏡筒に銀シートを巻いただけでは結露してしまうケースがあります。こちらの対策は構想が完成しているのですが、手が回りませんでした。やはり撮影機会がないと対策する気が起きてこないという理由です。
この他にも、 買ってみた冷却カメラを使うヒマがなくて塩漬け状態にしたりと、罰当たりな行動を繰り返す反省の多い一年でした。
※ご参考:例年の抱負と反省の辞はこちら:
2019: 反省、 2020:抱負 / 反省、 2021:抱負
振り返ると、人類が抱える未解決問題がいかに多いかということを実感いたします。
人類は前を見て生きるのが良さげです。
■ 2021年の天文現象の振り返り
2021年の前半戦は個人的な事情により殆ど何も活動できず、また5月26日の皆既月食や夏休み期間は曇天にも阻まれ、ゲリラ的な活動をするに留まりました。ここでは、個人的に印象に残っている出来事や活動を振り返ってみたいと思います。
7月下旬 梅雨明けの好シーイング
好シーイングで見る惑星は ボイジャー状態で感動的でした |
土星も、衝の時に現れるハイリゲンシャイン現象で明るくなった環のカシニの空隙が全周見え、さらにC環を透かしてみる本体が滲む様子や、カシニの空隙の奥にある本体で空隙の明るさが変わる様子まで見えたのは感激でした。
ガニメデ (2021.7.25撮影) 20cmでも濃淡が見えました |
何れにせよ、この2021年の木星・土星は大変印象深いものとなりました。
10月1日 台風一過の高透明度
上陸こそしませんでしたが強い風をもたらした台風16号が去ったあと、大変透明度の高い夜空が現出しました。透明度が高い日は大気中の微粒子が減って市街の光の散乱が少なくなり、つまり光害の影響が少なくなるチャンスということで、普段自宅からは諦めているような対象にトライしてみました。
この日は、M33やNGC253などの対象もしっかりと見ることができました。また、比較的大型の対象も高倍率で見ると迫力が出るということで、イーソス6mm で167倍としてみたところ、M33中心部やNGC253の暗黒帯なども確認できました。M1に向けてみるとやはり濃淡が見え、ひょっとしてこれはフィラメントが見えているのではないか?と思える瞬間もありました。
高倍率では星雲の類が見えなくなるというのは全くの誤りで、理論的に言って背景とのコントラストは倍率では変わりません。濃淡を含めた形がハッキリ見える分だけ、高倍率の方がむしろ視認しやすくなるというのが個人的な感想です。
このことは小型の対象のみならず、例えばM31のような対象でも同様です。アンドロメダ銀河は観望会での「ガッカリ大将」とされることもあるようですが、これは市街地ではどうせ見えもしないM31の淡い外周部まで視野に収めようとして無理に低倍率にするからだろうと思います。M31は中心部を100倍以上の倍率で拡大するのが大迫力の面白い見せ方であるように思ったのでした。暗黒帯が見えたときには、ちょっと感動しました。繰り返しになりますが、倍率を上げても星雲のコントラストは落ちません。
11月12日 「ほぼ皆既」月食
2021.11.12の月食 7.6cm反射+スマホコリメート |
しかし、今回のこの「ほぼ皆既」な部分月食では、色のグラデーションを観察できる時間が通常の皆既月食よりも長く、美しく感じました。この2021年はLaPalma島の火山噴火などがあったにもかかわらず、月食の明るさには大影響はなかったことは幸いでした。
12月上旬 レナード彗星 (C/2021 A1 (Leonard))
地球に接近して移動の速い レナード彗星 |
2021年暮れのハイライトは、レナード彗星でした。地球にかなり接近するということで、12月上旬には明け方にかなりの高度で5等級となった彗星の姿を拝むことができました。眼視でも、7cmの双眼鏡でその姿や尾をハッキリと確認でき、明け方の薄明に儚くも溶けてゆく姿はなかなかのものでした。
レナード彗星は、その後核がバーストして2等級台にまで増光しましたが、夕方の超低空ということで観察はかないませんでした。
■ アイピース吟遊
この2021年もアイピース詩人として、皆様のご期待とは違う方向性で吟じておりました。やや前衛的かつ非エコノミーに偏ってしまったのは反省点です。
スーパーオルソーとの邂逅
幻と思われた接眼鏡でした |
詳細は記事本編を御覧いただきたいと思いますが、伝説の「望遠鏡御三家」から出た唯一無二感溢れる2群5枚構成の逸品をこの眼で確かめ、満足の行く高レベルなアイピースであることを確認できたのは幸いでした。
ラムスデンの増殖
ラムスデンも増えました |
2020年8月当時13本で始めた「ラムスデン大全」でしたがその後も蒐集は進んで、現在は手元にあるものが28本、記事化できているものが23本にもなりました。ラムスデン接眼レンズ記事としては世界最大規模に違いないと自負しています。(誰も欲してない情報とは思いますが)
長焦点ラムスデンや、幻と思っていた色消ラムスデンの現物や、五藤・谷光学・UNITRON などの一流処ラムスデンを覗けたのは感慨深いものがあります。※色消ラムスデンと谷光学ラムスデンは未だ記事にできていません。
「斬鉄剣」的ハイゲンス |
アイピース蒐集
つい、いろいろ調達してしまいました。今年はけっきょく、ラムスデンの他はテレビュー製品やツァイス・ハイゲンスなど、非エコノミーな蒐集に傾いてしまいました。EthosやNaglerの出来はなかなか素晴らしく、超広角系には値段相応のものを感じざるを得ません。
個別の製品については機会があれば記事にしていきますが、「アイピースは、どこそこのメーカーだから絶対によい」というようなことは無いという感想です。いわゆる定評のある Zeiss、TMB、PENTAX、TeleVueがなぜ支持されるのかは良く分かる一方で、特に惑星向けには必ずしも高価なアイピースが解にならないことがヌケの考察によって見えてきました。
評価軸は多元的でもあるので好みの部分もあると思いますが、教科書に書いてあるような表面的なことでは全く推し量ることができず「究極と思っているとまだまだ奥がある世界」だという面白さを感じた1年でした。
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そのほか活動が停滞しっぱなしの2021年でしたので、機材メンテ系の記事を書いてみたりもしました。機材を使う上での注意事項をまとめてみたり、あるいは湿気を防止するために寒い時期の通風が重要だと書いてみたりしました。出来ればオークションなどで内側からカビた機材などは見たくないと願ってのことでした。
一方で、活動が停滞した年でありながら、シベットさんからのご紹介で星ナビの「ネットよ今夜もありがとう」のコーナーに掲載されたりもしました。Twitterを中心として様々の方たとネット上で交流・意見交換できることは大変楽しいことです。刺激・励みにもなり、また勉強にもなります。
そんな中、2021年は、オンラインのDeep Star Partyにも参加できました。私のつたなく役に立たないプレゼンを聞いて下さる方々と直接(?)会話できる機会を持てたことも、大変ありがたいことでした。
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いずれにせよ、この令和3年もはやくも暮れを迎えてしまいました。まったく時間の経過の速さに驚くばかりです。2020年から続くコロナ禍にも多少の光明と不安とが交錯する年末とはなりましたが、宇宙のスケールでみればごくごく瞬間の些事に過ぎないというわけで、過ぎ去ってゆく2021年の暮れも傍観しながら見送ることになりそうです。
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